4~6月期決算番付(4)効率よくもうけたのは キーエンス、自動化追い風 – 売上高純利益率が単独では無意味な理由

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■ 2017年度第1四半期決算分析から「売上高純利益率ランキング」

常々、「売上高純利益率」はそれ単独では、無意味な財務指標であると説明してきたのですが、日本でも有数の経済紙が未だに之を持ち出して財務分析をしているのは頂けません。(^^;)

2017/8/22付 |日本経済新聞|朝刊 4~6月期決算番付(4)効率よくもうけたのは キーエンス、自動化追い風

「売り上げを効率良く利益に結びつけられたかを示すのが売上高純利益率。2017年4~6月期は上場企業全体では過去最高水準の5.3%となった。ランキング上位には高い競争力のある独自製品やサービスを持つ企業が目立った。」

(下記は、同記事添付の「売上高純利益率ランキング表」を引用)

20170822_2017年度第1四半期_売上高純利益率ランキング_日本経済新聞朝刊

本記事によりますと、「売上高純利益率」という財務指標は、いかに効率よく売上高を利益に転換させることができたか、利益コンバージョン効率を測る指標であると冒頭で紹介されています。

これに対するランキング上位の企業業績の説明はどのように記事内でなされているのでしょうか。

● キーエンス
「工場を持たず、代理店を通さない直販営業のため利益率が高くなりやすい。」

● ファナック
「工作機械の頭脳となる数値制御装置で世界シェア首位。主に中国で工場を自動化する利益率の高い装置の販売が伸びている。」

● 信越化学工業
「半導体シリコンウエハーで世界トップシェア。需要拡大を背景に販売数量が伸びる一方、値上げも浸透した。」

● 塩野義製薬
「医薬品メーカーは魅力のある製品の開発に成功すると、特許で守られる間の利益率が高くなる。」

● JR東海
「新幹線の中でも収益性の高い東海道新幹線を抱える。ビジネス客・観光客ともに利用者が増えた。」

● テーオーシー
「横浜市の商業施設を売却し特別利益を計上した影響が大きかった。」

上記にあるとおり、各企業の売上高純利益率が高い理由の説明として、何か違和感と一体感の無さにお気づきになられたでしょうか?

キーエンス、ファナック、信越化学工業、塩野義製薬の4社に対する解説は、すべて段階利益として「営業利益」までで説明がつきます。つまり、利益率指標で語るなら、「売上高営業利益率」で十分に高収益性を語ることができます。

JR東海の高収益性は、4社と同様の説明に加え、増収効果も挙げられています。これは、限界利益が固定費の回収点を大きく超過したこと、つまり、損益分岐点分析の視点で説明がつく内容です。

最後のテーオーシーだけ、特別利益が効いたと解説されています。しかし、特別利益は確かに純利益をプラスにする効果がありますが、その源泉として、売上高を経由しないので、「売上高純利益率」の高さの要因説明として、特別利益による収入があったことは不適切としか言いようがありません。

 

■ 「売上高純利益率」の分子分母の非対称性に気付いてください

これに対して、筆者は常々、売上高に対応する利益は「営業利益」まで、と説明しています。

会計(基礎編)_損益計算書の中身_日本基準

なぜなら、売上高と利益を分母・分子で割り算して得られる利益率指標は押しなべて、精確に、分母を構成するものから分子の値が導かれていなければならないから。しかし、経常利益には営業外収益、税前利益には特別利益という収益要素(複式簿記的には貸方)を含んでの段階利益計算となるのですが、これらを分母を構成する利益の源泉としての収益要素から外した、効率性指標となる「利益率」は算数的に意味が無いからです。

⇒「損益計算書を斬る

簡単な例を。シンプルにするために、どちらも法人税は度外視するものとしてください。

A社
売上高:1000
営業利益:500
売上高純利益率 = 500 ÷ 1000 = 50.0%

B社
売上高:1000
営業利益:100
特別利益:500
売上高純利益率 = (100+500) ÷ 1000 = 60.0%

「売上高純利益率」という、売上高をどれだけ効率よく利益に結びつけられたかを表す財務指標によると、B社の方に軍配が上がります。しかし、B社のビジネスモデルから定常的に稼いだ営業利益は100なので、営業利益率は10%になり、A社に劣るのは火を見るより明らかです。

百歩譲って、特別利益も収益として分母に算入したら、本当の意味での企業の収益からどれだけの利益を稼いだかという効率性(収益性)は、算数的にはどう計算されるべきか?

効率性 = (100+500) ÷ (1000+500) = 40.0%

あらら、A社を下回りましたよ???

 

■ では「売上高純利益率」は無用の長物なのか?

ということは、筆者は、財務分析の世界から「売上高純利益率」を撲滅せよと主張しているのでしょうか? 違います! 使い方に気を付けてください、ということです。

経営管理会計トピック_デュポンチャート(デュポンツリーともいいます)

ROEツリーを構成するために、またはデュポンチャートでROEを要素分解するためには、「売上高純利益率」という財務指標をいったん算出しないと、後が続きません。

それゆえ、単独では無意味である、と主張させて頂いております。そこは誤解なさらないでください。(^^;)

だって、筆者おすすめの財務分析テンプレートには、売上高純利益率は、ROSとして漏れなく入っていますから。

20160821_9 Matrix Financial Analytics

20160820_9 Matrix Financial Analytics_グラフシート

⇒「FY2015 トヨタ自動車 財務分析(4)ROS 財務分析テンプレート『9 Matrix Financial Analytics』より

このExcelテンプレートは無償配布していますので、こちらもどうぞ、ご参考ください。

⇒「財務分析テンプレート『9 Matrix Financial Analytics』無償版ダウンロード開始

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。
財務分析(入門編)_FY2015 トヨタ自動車 財務分析(4)ROS 財務分析テンプレート『9 Matrix Financial Analytics』より

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