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■ いよいよ「デカップリングポイント」でビジネスモデルを分類します

経営管理(基礎編)

「前回」は、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」として、「見込み生産販売モデル」と「受注生産販売モデル」の違いを説明しました。今回は、「デカップリングポイント」の視点から、サプライチェーンモデルとしての分類を試みます。
⇒「サプライチェーン管理(2)- 在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」

基本は、ものづくりの仕方で、「見込み生産販売」か「受注生産販売」か、大別して2つのビジネスモデルがあることをこれまで説明してきました。実態は、在庫を持つ「時点」はいつか、どういう「形態」の在庫を持つか、でさらに、細かく分類することができます。

経営管理(基礎編)_『デカップリングポイント』による7つのビジネスモデル

この分類は、製造業だけでなく、「在庫販売モデル」なら流通業などでも当てはまりますし、「個別受注モデル」なら、建設業にもあてはまります。
(まあ、製造業のサービス業化とか、修理・アフターサービスビジネス等のより特化したお話はまた別の回にでも)

あくまで一般的な分類で作図してみましたが、残念ながら、どこかに基準やルールがあるわけではなく、論者によって分類法や命名にばらつきがあります。この定義が絶対とは申しませんが、要は分類のポイントさえ押さえておけば、どの命名で説明を受けても、話者がどれを指しているのかあたりがつくはずです。

1.在庫販売(STS: Sales to Stock)
店頭陳列か、販売製商品の保管倉庫から注文に応じて引当てられてから出荷して販売するビジネスモデルです。一般的な流通業(スーパー、専門店、カタログ販売)に当てはまります。

2.見込み生産(MTS: Make to Stock)
BtoCで販売される、消費財(シャンプー、衣類、缶コーヒーなど)や自動車、新刊図書などを生産販売するビジネスモデルです。新刊図書の場合、買いたい人が当初想定より多い場合は、買いたい人を待たせて増刷をして対応します。ほら、これが見込み生産ということ。
製鉄や紙パなどに代表される素材産業もBtoBですが、この形態をとります。

3.受注組立生産(ATO: Assemble to Order)
この形態は、どの業種の特定というわけではなく、製品が多品種・複数モデルにわたり、共通部品とか共通モジュールまでは先行して計画生産の上で、在庫として持っておき、最終製品のオーダーが入ったら、必要な部品・モジュールを組み合わせて最終品を仕上げるビジネスモデルになります。

4.受注仕様組立生産(CTO: Configure to Order/ Custom to Order)
上記3.とほぼ同じなので、論者によっては、区別しない場合もあります。あえて区別する場合は、顧客から注文があった際に、個別に製品仕様のバリエーションについて要求を聞き入れる体制を受け入れているケースに当てはめます。この形態で有名なのは、カスタムパソコンが注文できるデル(古い例だとゲートウェイ。懐かしっ)で、「デル・ダイレクトモデル」として一世を風靡しました。

ただし、デルではこの「CTO」を自らは「BTO」(次に登場)と呼んでいます。企業や解説者ごとに命名と定義が混在することは多々あります。

5.受注加工生産(BTO: Build to Order)
組立製造業において、顧客の注文を受けてから最終製品の生産を行う生産方式としてはATO、CTOと同じですが、在庫として保有する対象物は「原材料」になります。注文に応じて、社内で最終製品に仕上げる(組み上げる)前に、製品を構成する部品やサブモジュールを製造する所から始めるビジネスモデルです。製品バリエーションが多すぎて、中間部品を在庫していると、使わないうちに陳腐化して廃棄しなければならないリスクが大きいものを作っている場合に適用するモデルです。

(くどいようですが、この生産形態は、「BTO」の他に、次に登場する「MTO」と呼ばれたりもします。この辺の命名規約は非常に緩いものがあります。)

6.繰り返し受注生産(MTO: Make to Order)
顧客からの注文を受けた後、原材料の手配から始める生産方式で、何を作るかのバリエーションが大変広く、また注文が入るタイミングにばらつきがあり、何か月も何年も、それ用の在庫を原材料としても保有すると、廃棄リスクがあるものを製造するビジネスモデルです。当然、注文を受けてから、原材料の発注を始めるので、生産リードタイム(調達リードタイム+製造リードタイム)は非常に長いものになります。したがって、大型で特殊な専用機械やインフラ構造物が該当します。

7.個別受注生産(ETO: Engineering to Order/ DTO: Design to Order)
上記の「6.繰り返し受注生産」との大きな違いは、事前に製品の設計書が用意されていない点にあります。つまり、注文を受ける時点では、何を作るかわからないのです。注文を受けた後、まず設計や商品企画から始めるというビジネスモデルです。したがって、原材料であっても「在庫」などとんでもありません。ATO・CTO・MTOとETO/DTOとの間には、おなじ受注生産といえども、事前に何を作るかの「設計書」が存在しているかどうか、という「在庫」ではない見分けポイントがあります。

「デカップリングポイント」では識別できない「ETO/DTO」は、「設計図面」が作成される「出図」という業務のタイミングを材料手配のタイミングとどう関係付けるか、基幹情報システムを構築するITベンダーにとって大変重要な視点であるため、この種の分類表には必ず登場します。

 

■ 業種業態別ビジネスモデルの違いについて

最後に、業種/業態別に、主にデカップリングポイントで識別したビジネスモデルがどのように適用されるのか、簡単なまとめ表をご紹介します。

経営管理(基礎編)_7つのビジネスモデルと業種・業態の関係

流通業やSPA(製造小売業、ユニクロなどが代表例)はもとより、物販を主目的とはしませんが、サービス提供にあたって、なんらかのタンジブルなモノを消費する必要がある業態(理髪業におけるシャンプーや、整髪料)なら、サービス業でも「在庫」の概念は欠かせません。こういう一つの視点でいろんな企業を横串しで見てみると、何か新鮮な気がして嬉しくなりませんか?

また、同じ建設業でも、通常は注文後、「設計書」が出来上がってそれから材料を手配、となるところですが、プレハブ施工の場合は、あらかじめ、建材を準備することができます。同様に、飲食業でも、商売の仕方によってはビジネスモデルが異なってきます。通常は、原材料である食材(肉や野菜)を準備して、お客の注文に応じて調理するのですが、一部のチェーン店では、たとえば、具材をセントラルキッチンであらかじめ加工しておき、店舗では温めるだけ、とか、同じハンバーグ用肉でも、デミグラス●●風ハンバーグセット、イタリアン●●ハンバーグセット、という風に、調理場での最終加工で提供商品のバリエーションを出す、ということをやります。

みなさんも、お買い物や外食をされるときに、目の前の商品がどのようにして生産者から届いているのか、ちょっと考えてみると面白いかもしれませんよ。

ここまで、「デカップリングポイントによる7つのビジネスモデル」を説明しました。

経営管理(基礎編)_サプライチェーン管理(3)- デカップリングポイントによる7つのビジネスモデル

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サプライチェーン管理(3)- デカップリングポイントによる7つのビジネスモデルhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-e1428166901472.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-150x150.jpg小林 友昭経営管理(基礎編)SCM,サプライチェーン管理,デカップリングポイント,ビジネスモデル■ いよいよ「デカップリングポイント」でビジネスモデルを分類します 「前回」は、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」として、「見込み生産販売モデル」と「受注生産販売モデル」の違いを説明しました。今回は、「デカップリングポイント」の視点から、サプライチェーンモデルとしての分類を試みます。 ⇒「サプライチェーン管理(2)- 在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」 基本は、ものづくりの仕方で、「見込み生産販売」か「受注生産販売」か、大別して2つのビジネスモデルがあることをこれまで説明してきました。実態は、在庫を持つ「時点」はいつか、どういう「形態」の在庫を持つか、でさらに、細かく分類することができます。 この分類は、製造業だけでなく、「在庫販売モデル」なら流通業などでも当てはまりますし、「個別受注モデル」なら、建設業にもあてはまります。 (まあ、製造業のサービス業化とか、修理・アフターサービスビジネス等のより特化したお話はまた別の回にでも) あくまで一般的な分類で作図してみましたが、残念ながら、どこかに基準やルールがあるわけではなく、論者によって分類法や命名にばらつきがあります。この定義が絶対とは申しませんが、要は分類のポイントさえ押さえておけば、どの命名で説明を受けても、話者がどれを指しているのかあたりがつくはずです。 1.在庫販売(STS: Sales to Stock) 店頭陳列か、販売製商品の保管倉庫から注文に応じて引当てられてから出荷して販売するビジネスモデルです。一般的な流通業(スーパー、専門店、カタログ販売)に当てはまります。 2.見込み生産(MTS: Make to Stock) BtoCで販売される、消費財(シャンプー、衣類、缶コーヒーなど)や自動車、新刊図書などを生産販売するビジネスモデルです。新刊図書の場合、買いたい人が当初想定より多い場合は、買いたい人を待たせて増刷をして対応します。ほら、これが見込み生産ということ。 製鉄や紙パなどに代表される素材産業もBtoBですが、この形態をとります。 3.受注組立生産(ATO: Assemble to Order) この形態は、どの業種の特定というわけではなく、製品が多品種・複数モデルにわたり、共通部品とか共通モジュールまでは先行して計画生産の上で、在庫として持っておき、最終製品のオーダーが入ったら、必要な部品・モジュールを組み合わせて最終品を仕上げるビジネスモデルになります。 4.受注仕様組立生産(CTO: Configure to Order/ Custom to Order) 上記3.とほぼ同じなので、論者によっては、区別しない場合もあります。あえて区別する場合は、顧客から注文があった際に、個別に製品仕様のバリエーションについて要求を聞き入れる体制を受け入れているケースに当てはめます。この形態で有名なのは、カスタムパソコンが注文できるデル(古い例だとゲートウェイ。懐かしっ)で、「デル・ダイレクトモデル」として一世を風靡しました。 ただし、デルではこの「CTO」を自らは「BTO」(次に登場)と呼んでいます。企業や解説者ごとに命名と定義が混在することは多々あります。 5.受注加工生産(BTO: Build to Order) 組立製造業において、顧客の注文を受けてから最終製品の生産を行う生産方式としてはATO、CTOと同じですが、在庫として保有する対象物は「原材料」になります。注文に応じて、社内で最終製品に仕上げる(組み上げる)前に、製品を構成する部品やサブモジュールを製造する所から始めるビジネスモデルです。製品バリエーションが多すぎて、中間部品を在庫していると、使わないうちに陳腐化して廃棄しなければならないリスクが大きいものを作っている場合に適用するモデルです。 (くどいようですが、この生産形態は、「BTO」の他に、次に登場する「MTO」と呼ばれたりもします。この辺の命名規約は非常に緩いものがあります。) 6.繰り返し受注生産(MTO: Make to Order) 顧客からの注文を受けた後、原材料の手配から始める生産方式で、何を作るかのバリエーションが大変広く、また注文が入るタイミングにばらつきがあり、何か月も何年も、それ用の在庫を原材料としても保有すると、廃棄リスクがあるものを製造するビジネスモデルです。当然、注文を受けてから、原材料の発注を始めるので、生産リードタイム(調達リードタイム+製造リードタイム)は非常に長いものになります。したがって、大型で特殊な専用機械やインフラ構造物が該当します。 7.個別受注生産(ETO: Engineering to Order/ DTO: Design to Order) 上記の「6.繰り返し受注生産」との大きな違いは、事前に製品の設計書が用意されていない点にあります。つまり、注文を受ける時点では、何を作るかわからないのです。注文を受けた後、まず設計や商品企画から始めるというビジネスモデルです。したがって、原材料であっても「在庫」などとんでもありません。ATO・CTO・MTOとETO/DTOとの間には、おなじ受注生産といえども、事前に何を作るかの「設計書」が存在しているかどうか、という「在庫」ではない見分けポイントがあります。 「デカップリングポイント」では識別できない「ETO/DTO」は、「設計図面」が作成される「出図」という業務のタイミングを材料手配のタイミングとどう関係付けるか、基幹情報システムを構築するITベンダーにとって大変重要な視点であるため、この種の分類表には必ず登場します。   ■ 業種業態別ビジネスモデルの違いについて 最後に、業種/業態別に、主にデカップリングポイントで識別したビジネスモデルがどのように適用されるのか、簡単なまとめ表をご紹介します。 流通業やSPA(製造小売業、ユニクロなどが代表例)はもとより、物販を主目的とはしませんが、サービス提供にあたって、なんらかのタンジブルなモノを消費する必要がある業態(理髪業におけるシャンプーや、整髪料)なら、サービス業でも「在庫」の概念は欠かせません。こういう一つの視点でいろんな企業を横串しで見てみると、何か新鮮な気がして嬉しくなりませんか? また、同じ建設業でも、通常は注文後、「設計書」が出来上がってそれから材料を手配、となるところですが、プレハブ施工の場合は、あらかじめ、建材を準備することができます。同様に、飲食業でも、商売の仕方によってはビジネスモデルが異なってきます。通常は、原材料である食材(肉や野菜)を準備して、お客の注文に応じて調理するのですが、一部のチェーン店では、たとえば、具材をセントラルキッチンであらかじめ加工しておき、店舗では温めるだけ、とか、同じハンバーグ用肉でも、デミグラス●●風ハンバーグセット、イタリアン●●ハンバーグセット、という風に、調理場での最終加工で提供商品のバリエーションを出す、ということをやります。 みなさんも、お買い物や外食をされるときに、目の前の商品がどのようにして生産者から届いているのか、ちょっと考えてみると面白いかもしれませんよ。 ここまで、「デカップリングポイントによる7つのビジネスモデル」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します