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■ 米公的年金2位は反対。今度はまた反対意見!

経営管理会計トピック

今度は、米公的年金2位のカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)がトヨタの種類株発行について「NO」を表明しました。では、ちなみに1位カルパースは? と思い、ちょっと検索かけましたが、出てきませんでした。今回は短編ですが、新聞記事のご紹介とともに、私見を少々。

2015/6/10|日本経済新聞|朝刊 トヨタの新型株 米公的年金2位は反対海外での賛否分かれる

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「【ニューヨーク=山下晃】米公的年金2位のカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)は8日、トヨタ自動車が発行を検討している種類株について株主総会で反対する意向を公表した。海外投資家の議決権行使に影響力のある助言会社でも賛否が分かれる。
トヨタは日本国内の個人投資家向けに、5年間は譲渡できない株式を発行する計画だ。配当利回りが段階的に上昇する仕組みで、5年後には普通株式への転換を要求できる。16日の定時株主総会で3分の2の賛成を得ることを目指している。カルスターズはトヨタ株を430万株(発行済み株式数の0.1%)保有する。「日本国内の株主にのみ恩恵があり、海外の株主への配慮が不十分」と指摘している。」

日本国内の株主にのみ恩恵云々という話は、どうもこの種類株が非上場(非公開)で、引受幹事証券会社が「野村證券」となっているので、まず、海外の投資家(ヘッジファンド)が買いにくい、ということからきているみたいです。

この件は、トヨタがこの種類株発行をプレスリリースした際に、同時に発表した「AA型種類株式に関するQ&A」に、海外投資家のことをどう考えているのか、すでに会社側の意見表明があるので、それを見てみます。

(Q-12)対象とする投資家層は誰か、海外でも募集するべきではないか?
(A-12)
① 中長期の株主層を創設することを目的として譲渡制限を付していますが、機関投資家は株式の流動性を重視するため、投資家の中心は国内の個人投資家になる可能性が高いと考えております。
② 国内一般募集ですが、当社としては海外投資家の国内法人等の参加は可能と認識しており、詳細は発行決議後に引受証券会社にお問い合わせください。
③ AA 型種類株式を発行する目的は、自動車のメインユーザーである個人の方々に中長期の株主となって頂き、当社の中長期の取組みに関するご意見を事業戦略に反映させていくことが更なる企業価値向上に繋がると考えたことにあります。

要約すると、「別段、海外投資家を無視・軽視していません。引受幹事証券会社に問い合わせて、自由に応募してください」ということです。「特別に海外投資家に便宜も図っておりませんが、決して海外投資家を排除する意図はありません」という感じです。

しかし、ここですでに、中長期で保有してもらいたいがための、種類株発行なので、はなから海外投資家向けには中長期投資をしてくれる投資家という見方をしていることが手に取るようにわかります。それが正しい判断か否かはおいておきまして。トヨタは、国内の理解してくれるどちらかというと個人投資家を歓迎している向きがあります。それをカルスターズはかぎ取った故の先述のコメントとなっているのだと思います。

 

■ 大磯小磯のコラムニストの見方

ここで、同日の日経新聞の有名コラムでもこのトヨタの種類株発行が取り上げられているので、その記事もご紹介します。いやはや、日本最大の製造業の財務戦略。皆の注目度の高さがよくわかります。

2015/6/10|日本経済新聞|朝刊 (大磯小磯)トヨタ新型株式の困惑

「トヨタ自動車が長期保有の個人投資家を増やす目的で新型種類株式の発行を計画している。これが市場に静かな波紋を広げている。
16日の株主総会で3分の2の賛成を得れば発行できるが、米議決権行使助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は反対を表明している。長期的な企業価値の向上のためというトヨタの意図に対し、ISSは「安定株主が増えると経営規律が失われる恐れがある」と主張する。
企業が長期的な視野に立って経営し、価値が向上すれば、株主の利益にもなるはずだ。なのに、なぜISSは反対なのか。
問題は「契約で縛られた長期保有」と「自発的判断による長期保有」は本質的に異なるという点にある。トヨタの新型株式の株主は5年間、株式を売却できない。契約で長期保有が強制されることになる。その5年間にトヨタの経営が株主の利益に反したとしても、新型株式の株主は売却できず、理論的にはISSが懸念するように経営規律を緩ませる可能性はある。」

興味深い視点を頂きました。
「契約で縛られた長期保有」と「自発的判断による長期保有」。
でも、種類株を購入する際の意思決定は自発的判断だと思うのですが。。。(^^;)

「経営者が長期的な価値向上の見通しを説得力を持って示し、それを株主が信頼すれば企業を応援する普通の株主は自発的な判断で株式を長期保有するはずだ。新型株式を発行して売却制限をかける特段の必要はなさそうである。
「株主はいつでも売却できる権利を保持するが、企業の経営を信頼すれば自発的に株式を長期保有する」という緊張関係と協調関係のバランスの維持は、株主からのガバナンスを有効にする重要な要件である。長期保有を義務付ける新型株式は、ガバナンスを形骸化させる「知恵」として悪用されてしまうと一部の投資家は懸念している。
トヨタの経営にとって新型株式発行の悪影響はあまりないかもしれない。良い効果があったとしても同じスキームが日本企業に広がるのは問題である。リーディングカンパニーのトヨタが採用すれば、マネをする企業が増えるだろう。そうなれば株式持ち合いと同じような、規律を弛緩(しかん)させる効果が日本の企業社会に広がりかねない。」

トヨタの今回の取り組みの影響度の大きさは、かつてのソニーのトラッキングストックと比較にならないくらい、マグニチュードが大きくなるものでしょうか?
そして、あらかじめ「AA型種類株」は、優先株(劣後債並みの取り扱い。でも議決権ありという特典付き!)としての発行条件が明示されているので、これを買う・買わないは市場参加者の自由意思ですし、普通株主の定款変更の決議への賛成如何です。それも市場の自由意思。

「アベノミクスの一環として進む企業統治改革が骨抜きになるリスクを一部の投資家は感じている。だから市場に波紋と困惑が広がっているのだ。」

はあ、最後はアベノミクスですか。。。

企業統治と種類株発行、また別の機会に議論したいと思います。

(過去参考記事)

⇒「トヨタ、個人向け新型株最大5000億円発行 元本保証、議決権あり 長期投資家取り込む

⇒「トヨタ新型株に反対 議決権行使助言のISS 株主総会での賛否が焦点

⇒「トヨタ、新型株の評価二分  株主助言のグラスルイス賛意、ISSの反対受け補足資料

 

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トヨタの新型株 米公的年金2位は反対海外での賛否分かれるhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むISS,トヨタ,種類株,大磯小磯■ 米公的年金2位は反対。今度はまた反対意見! 今度は、米公的年金2位のカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)がトヨタの種類株発行について「NO」を表明しました。では、ちなみに1位カルパースは? と思い、ちょっと検索かけましたが、出てきませんでした。今回は短編ですが、新聞記事のご紹介とともに、私見を少々。 2015/6/10|日本経済新聞|朝刊 トヨタの新型株 米公的年金2位は反対海外での賛否分かれる (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「【ニューヨーク=山下晃】米公的年金2位のカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)は8日、トヨタ自動車が発行を検討している種類株について株主総会で反対する意向を公表した。海外投資家の議決権行使に影響力のある助言会社でも賛否が分かれる。 トヨタは日本国内の個人投資家向けに、5年間は譲渡できない株式を発行する計画だ。配当利回りが段階的に上昇する仕組みで、5年後には普通株式への転換を要求できる。16日の定時株主総会で3分の2の賛成を得ることを目指している。カルスターズはトヨタ株を430万株(発行済み株式数の0.1%)保有する。「日本国内の株主にのみ恩恵があり、海外の株主への配慮が不十分」と指摘している。」 日本国内の株主にのみ恩恵云々という話は、どうもこの種類株が非上場(非公開)で、引受幹事証券会社が「野村證券」となっているので、まず、海外の投資家(ヘッジファンド)が買いにくい、ということからきているみたいです。 この件は、トヨタがこの種類株発行をプレスリリースした際に、同時に発表した「AA型種類株式に関するQ&A」に、海外投資家のことをどう考えているのか、すでに会社側の意見表明があるので、それを見てみます。 (Q-12)対象とする投資家層は誰か、海外でも募集するべきではないか? (A-12) ① 中長期の株主層を創設することを目的として譲渡制限を付していますが、機関投資家は株式の流動性を重視するため、投資家の中心は国内の個人投資家になる可能性が高いと考えております。 ② 国内一般募集ですが、当社としては海外投資家の国内法人等の参加は可能と認識しており、詳細は発行決議後に引受証券会社にお問い合わせください。 ③ AA 型種類株式を発行する目的は、自動車のメインユーザーである個人の方々に中長期の株主となって頂き、当社の中長期の取組みに関するご意見を事業戦略に反映させていくことが更なる企業価値向上に繋がると考えたことにあります。 要約すると、「別段、海外投資家を無視・軽視していません。引受幹事証券会社に問い合わせて、自由に応募してください」ということです。「特別に海外投資家に便宜も図っておりませんが、決して海外投資家を排除する意図はありません」という感じです。 しかし、ここですでに、中長期で保有してもらいたいがための、種類株発行なので、はなから海外投資家向けには中長期投資をしてくれる投資家という見方をしていることが手に取るようにわかります。それが正しい判断か否かはおいておきまして。トヨタは、国内の理解してくれるどちらかというと個人投資家を歓迎している向きがあります。それをカルスターズはかぎ取った故の先述のコメントとなっているのだと思います。   ■ 大磯小磯のコラムニストの見方 ここで、同日の日経新聞の有名コラムでもこのトヨタの種類株発行が取り上げられているので、その記事もご紹介します。いやはや、日本最大の製造業の財務戦略。皆の注目度の高さがよくわかります。 2015/6/10|日本経済新聞|朝刊 (大磯小磯)トヨタ新型株式の困惑 「トヨタ自動車が長期保有の個人投資家を増やす目的で新型種類株式の発行を計画している。これが市場に静かな波紋を広げている。 16日の株主総会で3分の2の賛成を得れば発行できるが、米議決権行使助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は反対を表明している。長期的な企業価値の向上のためというトヨタの意図に対し、ISSは「安定株主が増えると経営規律が失われる恐れがある」と主張する。 企業が長期的な視野に立って経営し、価値が向上すれば、株主の利益にもなるはずだ。なのに、なぜISSは反対なのか。 問題は「契約で縛られた長期保有」と「自発的判断による長期保有」は本質的に異なるという点にある。トヨタの新型株式の株主は5年間、株式を売却できない。契約で長期保有が強制されることになる。その5年間にトヨタの経営が株主の利益に反したとしても、新型株式の株主は売却できず、理論的にはISSが懸念するように経営規律を緩ませる可能性はある。」 興味深い視点を頂きました。 「契約で縛られた長期保有」と「自発的判断による長期保有」。 でも、種類株を購入する際の意思決定は自発的判断だと思うのですが。。。(^^;) 「経営者が長期的な価値向上の見通しを説得力を持って示し、それを株主が信頼すれば企業を応援する普通の株主は自発的な判断で株式を長期保有するはずだ。新型株式を発行して売却制限をかける特段の必要はなさそうである。 「株主はいつでも売却できる権利を保持するが、企業の経営を信頼すれば自発的に株式を長期保有する」という緊張関係と協調関係のバランスの維持は、株主からのガバナンスを有効にする重要な要件である。長期保有を義務付ける新型株式は、ガバナンスを形骸化させる「知恵」として悪用されてしまうと一部の投資家は懸念している。 トヨタの経営にとって新型株式発行の悪影響はあまりないかもしれない。良い効果があったとしても同じスキームが日本企業に広がるのは問題である。リーディングカンパニーのトヨタが採用すれば、マネをする企業が増えるだろう。そうなれば株式持ち合いと同じような、規律を弛緩(しかん)させる効果が日本の企業社会に広がりかねない。」 トヨタの今回の取り組みの影響度の大きさは、かつてのソニーのトラッキングストックと比較にならないくらい、マグニチュードが大きくなるものでしょうか? そして、あらかじめ「AA型種類株」は、優先株(劣後債並みの取り扱い。でも議決権ありという特典付き!)としての発行条件が明示されているので、これを買う・買わないは市場参加者の自由意思ですし、普通株主の定款変更の決議への賛成如何です。それも市場の自由意思。 「アベノミクスの一環として進む企業統治改革が骨抜きになるリスクを一部の投資家は感じている。だから市場に波紋と困惑が広がっているのだ。」 はあ、最後はアベノミクスですか。。。 企業統治と種類株発行、また別の機会に議論したいと思います。 (過去参考記事) ⇒「トヨタ、個人向け新型株最大5000億円発行 元本保証、議決権あり 長期投資家取り込む」 ⇒「トヨタ新型株に反対 議決権行使助言のISS 株主総会での賛否が焦点」 ⇒「トヨタ、新型株の評価二分  株主助言のグラスルイス賛意、ISSの反対受け補足資料」  現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します