■ 奇跡の集客を生む 赤字路線バスの復活劇!
社員193人、車両111台、売上高9億7000万円。発声練習から始まる朝礼。イーグルバスは、川越でボンネットバスによる「小江戸巡回バス」で有名だ。社長の矢島さんは川越の観光団体の役員でもある。「街が盛り上がって観光客が来ればバスに乗ってもらえる。最初に街づくりをするのが順番から考えても正しかった」
「客を生み出す超地域密着戦略」とは?
路線バス業界の実態(2012年)は、事業者数:約2000社でその内赤字業者が72%。路線バスの廃線は年間約900Km。「高度成長期の頃、通勤・通学の足としてバスが大きな役割を果たしていた。ところが一番のヘビーユーザである通勤・通学の人がリタイアしたり、少子化により利用客が減ってきたのが現状」「公共交通を経営しているバス会社は“公共”と“民間”の顔がある。民間の会社という意味で赤字路線を見た時は心が揺れ動く。しかし、バス路線が無くなると、生活に困る住民が出てしまう。日本のバス会社の多くは赤字だが、そういう気持ちで撤退を踏みとどまっている」
そこでMC(村上さん)が問う。
「安さではなく、品質重視で生き残るとは、バス会社に置いてどういう意味を持つのか?」
「イーグルバスでは品質を、“安全”と“顧客満足”の2つに分けている。“安全”であれば「年数ゼロ」。難しいがゼロが最高。しかし、“顧客満足”は成長し、拡大できる。ここには際限がない。最低限の“安全”と“顧客満足”、これを合わせたものがバス会社の品質と思います」
(番組ホームページより)
「地域にとってインフラで、無くてはならないものであったら、逆に地域から生かされるのかもしれない」
MCから再び問いが。
「「必要とされる」が究極の経営戦略とは?」
「まず地域が良くならなければ企業は絶対に成長できない。だから、今はシェアを争うのではなく、企業同士が力を合わせていく。それで地域が良くなれば企業も生かされる、という発想の転換が必要」
→「シェア争いではなく、地域に必要とされること!」
■ もっと便利に!正確に!田舎でも客を増やせる秘密
バス会社が挑む地域活性化策の全貌とは!?
ある時、西武バスが撤退した路線に自治体の要請を受けて運行を引き継いだ。ある時、引き継いだ路線を目で確認しにいくと、客が一人も乗っていない。「この路線は毎日空気を運んでいたのか、、、」初年度だけで2000万円もの赤字。その原因を探るために、バス業界初めてとなるシステムを開発。客の乗り降りをカウントする赤外線センサーと位置測定機(GPS)をバスに取り付けた。これにより、バスが何時にどの停留所に着いたか、そこで何人の客が乗り降りしたか、つまりバスの中の見える化を実現した。このデータを元に便利なバスへの改革へ。
データは様々な事実を教えてくれた。その一つが、飯能靖和病院へのアクセスの問題。病院から歩いて5分の停留所の利用客がある時から増え始めた。実は、病院近くに停留所を持っていた競合会社が運行便数を削減していたのだ。1日3便→1日1便に。そこで関係各所に働きかけて、バスの運行ルートを変更し、病院前に停留所を移した。
● 谷島改革① 運行ルートを変更し、バス停を移動
さらにデータからダイヤの遅れの原因も浮き彫りになった。日帰り温泉施設、宮沢湖温泉喜楽里別邸。週末には客が押し寄せる人気スポット。しかし、行楽シーズンには乗り降りに時間がかかり、それがバスの遅れの原因にもなっていた。そこで谷島はこのバスの路線全体を見直した。
● 谷島改革② 停車時間に余裕を持たせて遅延を解消
これで時間通りに来る便利なバスとなった。これにより、月間利用者3000人増加。
2007年、廃止の危機にあったときかわ町の町営の路線バスを引き継ぐ。2時間に1本。便利になれば客数は伸びる。谷島は過疎の町であえて便数を増やした。谷島は町の中心にバスの中継ポイントを作った。従来は集落と駅を結ぶバスは2時間に1便。その間に中継ポイントを置けば、乗り継ぎが必要になるが、集落と駅間は1時間に1本の割合に増やせる。さらに新サービスを考えついた。予約した時だけ臨時のバス停まで迎えに来てくれる「デマンドバス」。まるでタクシーのようだが、料金はバスのまま。乗り継ぎしやすいようにあの中継ポイントまで運んでくれる。こうした取組みで利用客は1.7倍になった。
「イーグルバスがあるから生活ができる。本当にありがとう、という感謝の言葉ですね。こういった反応を見ていると簡単にやめるといえないし、何とかしなきゃいけないという気持ちにもなる」
■ 路線バス経営の苦労とは?
MCからの質問。
「なぜ大手が撤退したリスクの大きい路線を引き継いだのか?」
「その時まで路線バスの運行経験が全くなかった。できるかどうか、しかも赤字路線なので、躊躇はあった。ただ、交通空白地帯になることを何とか止めなければならないと思った」
「引き継いだ後で気づいたことは?」
「路線バス事業は他のバス事業とは違っていた。これまでやってきた送迎バスや観光バスはお客様との相対の契約なので、価格が折り合えば仕事を受ける。だから必ず利益が出る。しかも年間の稼働率は70%程度。バスも運転士も適度に休ませることができた。しかし、路線バスは365日稼働率100%。予備のバスや運転士も必要で、物凄くコストがかかる事業。それでいて、どれだけお客が乗るか分からない。全く違うものだと思った。同じように見えるが、他のバス事業と路線バス事業は違う。これを初めて知った。大変な世界に足を踏み入れてしまったというのが正直な感想」
「週2日しか利用客がいなくても、それが週2回通院するおばあちゃんだったらそこを簡単に廃線にしていいのか、ということなんです。つまり、公共交通の本来の使命は「交通弱者を救うということ」。日本のバス事業は計画、運行、収支のすべてをバス会社が背負ってきた。しかし、ヨーロッパでは「計画」は地域の自治体が、「運行」はバス会社、結果としての赤字はコストとして自治体が見ているんです。バス会社だけで追いきれない部分は国や自治体が支援すべき。これが地域で支える本当の“公共交通”だと思う」
■ 少しの工夫で利用者UP! “路線バスの旅”戦略とは?
地方バスの反撃ののろし。従業員255人の十勝バス。北の大地の日帰りパックで客を生む。路線バスを使った日帰りバスパックツアー。このツアー、バスの往復運賃と目的地の入場料がセット割引になったバスパック。
人気! 路線バスの旅が過疎の村の交通を救う!
谷島さんは、秩父の過疎村に、新プロジェクトを考えている。観光スポット(新名所、和紙の里)にバス中継所を作り、その周辺に住民の生活の利便性のために、レストラン、直売所、コンビニ、郵便局を誘致する予定。この取り組みは自治体と協力して行われる。東秩父村の村長は、「国からの補助金を頼りにしていてはこれからやっていけなくなる」
「地域の方も便利になるし、観光客も便利になる。地元の方がここで働く雇用の場も生まれる」。地方のバス会社が町づくりという大きなビジョンに向けて走り出した。
谷島さんいわく、
「今の定年退職者は元気で、「「山歩き」や「観光」に行く。健康のために「山歩き」をするとバスが必要になる。通勤バスには乗らなくても、「山歩き」のためにはバスに乗る。驚くことに、平日の利用者は少なくても、土日の朝はいっぱいになる路線なんですよ。つまり、ツーリズム(観光)と路線バスを組み合わせればバスの収支が改善できるということです」
ここでMCから質問。
「バスに対する考えが変わったか?」
「最初はお金がすべてという考えだった。全てを「お金」に置き換えていた。そうすると赤字はバツ。しかし、赤字であっても運行を続ければ地域の移動の足が確保されたり、そこで働く人の雇用も確保できる。「本当の改善」に必要なものは、収支の改善ではなく、利用者が増える、満足度を増やす。これが公共交通事業の本当の目的です」
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