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「監査等委」設置広がる 上場600社、企業統治強化 - 監査等委員会設置会社への移行メリットとは?

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ 本当に新制度「監査等委員会設置会社」への移行が企業統治強化につながるのか?

経営管理会計トピック

会社法上の統治機関モデルの選択は、メリット・デメリットから考えるのではなく、最もその会社のコーポレートガバナンスに適した形態を採用するのが優等生的回答だと思います。しかし、どうも、監督・規制側の改革成果達成のための制度変更に対して、経営者側が最も賢く対応した結果の選択になっていく様相を呈しています。

2016/4/25付 |日本経済新聞|夕刊 「監査等委」設置広がる 上場600社、企業統治強化

「監査役の代わりに複数の社外取締役が経営を監視する「監査等委員会設置会社」に移行する企業が増えている。6月末までに累計600社前後に達し、上場企業の2割近くに達する見通しだ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付の企業統治のモデル選択の説明図を転載)

20160425_企業の統治モデル_日本経済新聞朝刊

以下は新聞記事のサマリとなります。

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1)監査等委員会設置会社とは?
2015年5月の会社法改正で導入された。委員の過半を社外取締役が占める「監査等委員会」を取締役会の中に設け、経営陣の業務運営を監視する仕組み

2)監査等委員会設置会社の企業統治に与える影響
取締役会で議決権を持たない監査役に代わり、経営者の選任や解任など意思決定に関わる社外取締役が監査も担うことで企業統治(コーポレートガバナンス)の強化につながることが期待される

3)監査等委員会設置会社への移行状況
・株主総会での承認を経て移行する
・東京証券取引所の上場企業では現在322社が導入
・三菱UFJ信託銀行の集計によると、先週末時点では約190社が4~6月の移行を表明しており、「最終的には(6月末時点で)600社前後になる」と予想
・企業統治に詳しい太田洋弁護士は「経営戦略など大所高所の議論をしやすい利点もあり、17年に累計1000社を超える」と指摘
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どうして、監査等委員会設置会社に移行すると、「経営戦略など大所高所の議論」がしやすくなるのか、浅学の筆者にはすぐに理解できません。もう少し、状況を調べてみたいと思います。

 

■ 評価をする前に相手をよく知ろう! 代表的な企業統治モデル3つの比較から

四の五の言わずに、無料でネットで漁れる資料は十二分に活用させて頂きましょう。まずは、企業統治モデルをイメージ図で捉えてみましょう。

(出典)アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 Japan Corporate / M&A Newsletter 2015年5月

● 代表的な株式会社の企業統治モデルのイメージ図

20160505_3つの会社統治モデルの比較_イメージ図

素人にもわかるように、専門家からの誤解を恐れずにシンプルに説明すると、従来の日本とドイツ型の監査役制度の併設型から、英米流の社外取締役中心の取締役会によるモニタリング型の企業統治に一足飛びに移行できない会社に対して、折衷案として提起された企業統治モデルだ、ということができます。

では、もうすこし、3つの企業統治モデルの相違をざっくり今度は比較表で見てみましょう。

(出典)清和監査法人 Seiwa Newsletter oct. 2015 (Vol.4)

● 監査等委員会設置会社とほかの機関との比較表

20160505_3つの会社統治モデルの比較_比較表

ご覧の通り、既存の「監査役会設置会社」と「指名委員会等設置会社」の折衷案としての性格が色濃いことが、より鮮明に理解できることと思います。

 

■ でも、企業側もばかじゃない。メリットが無いと移行しようとは思わない!

当然、2つの機関設置制度の折衷案だから採用しよう、という単純な動機で会社機関を変更しようとは思わないはずです。そこには、新制度「監査等委員会設置会社」への移行にあたって、企業には旨味があるはずなんです。これほどどの会社もこぞって移行しようという裏には。

(1)社外役員をできるだけ少なくしたい
2015年6月に東証から公表された「コーポレートガバナンス・コード」には、少なくとも2名以上の社外取締役の選任を事実上(※)義務付けています。

※ この「事実上」の意味を確認したい方は、以下の投稿をご参照ください
⇒「(真相深層)社外役員、適材奪い合い 企業統治改革は1年にして成らず 株持ち合いも根強く
⇒「社外役員の兼務制限 日立、4社まで 外部の知見、自社に集中

この要請に応えようとすると、「監査役会設置会社」のままでは、社外監査役2名を含めて、最低でも4名の社外役員の選任が必要になります。この社外リソースの調達負担および、その後の社内統治への影響力の最小化を図りたい、という動機が見え隠れします。

(2)制度設計の負担の軽減
これは、次の2点から。
① 監査等委員会を構成する取締役は常勤者でなくてもよい
② 指名委員会設置会社では、監査委員会の他に、指名委員会と報酬員会を設置する必要がある
③ 監査等委員会を構成する取締役の任期は2年⇔監査役会設置会社の監査役の任期は4年 →より短い任期で柔軟に候補者を選ぶことができる

ただし、企業統治を投資家(株主)の目線からみれば、指名委員会等設置会社の監査委員会でも、東芝のように、経営者および内部統制をコントロールできる地位にいる者が、不適切会計を主導しても、それを発見・停止することはできなかった。それでもなお、常勤者を不要にする監査等委員会設置会社の企業統治のほうが有効に機能するかどうか、個別企業の内部統制のレベルにもよるのでしょうが、機関制度論的には、より甘目の監視にならざるを得ないと思います。この点はお忘れなく!

さて、内部統制や財務管理のご担当者ならば、自社やコンペチターがどういう機関設置をしているか、またはこれから株式投資をしようとする投資家の皆さんは、投資検討対象がどういう機関設置をしているか気になるところでしょう。

そういう場合は、次の東証のホームページにある「コーポレート・ガバナンス情報サービス」で、証券コードか会社名を入力して、検索ボタンを押すだけで、どういう機関設置がすぐに分かる検索サービスがありますので、こちらをご活用してみてください。

東証 コーポレート・ガバナンス情報サービス

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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