経営コンサルタントの仕事術(4)合理的に設計し、妥当的に運用する - キーワードは「実行可能性」

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■ 合理的に設計するメリット

プロジェクトでは、ITが絡む絡まないを別にしても、業務プロセスや管理制度の設計、グランドデザインなどを、コンサルタントとして担う場合があります。よってこの話はITよりのコンサルタントから制度・業務側のコンサルタントまで、幅広い層に共通する話であると認識しています。

よく、「実行可能性」を十二分に考慮したITシステムや、制度設計をしてください、との要請をクライアントから受けることが多々あるのですが、その場合の「実行可能性」とは、いわゆる「As-Is」から離れ過ぎないようにと釘を刺されるだけのことがあまりに多いです。現行業務に問題があって、わざわざ外部からコンサルタントを招聘して、会社の中の仕組みを変えようとしているのに、プロジェクト内で「今のままあまり手を加えないで」と手心を加えるように依頼されることは、その時点でプロジェクト目標を達成するためのプロジェクト環境が十分に整っていないことになります。

そこで、いったん、「実行可能性」という見方を捨てて、できるだけ、与えられたプロジェクト目標に忠実に仕組みや機能、プロセスや手順を整備していきます。そこで何を採用して何を不採用にするかの判断基準は「目的合理性」です。

合理的に設計された仕組み(ITが絡むことがあれば、業務変革やルールのみの場合もある)は、十分にモジュール化されており、後から業務水準のレベルが上がれば、その程度に応じて使い方も同程度にレベルアップさせることが容易であり、必要に応じては、大きな追加コストを犠牲にすることなく、機能拡張やユーザ拡張、機能置換が可能なように、いわゆる使用に耐え得る仕様にすることができるものです。

つまり、モジュール化とは、それ自体が増改築が容易な柔構造な設計であり、他の機能との接続性も十分に考えられている、まさに生き物である業務に合わせて千変万化できる存在になる、ということです。

⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(10)逆説的思考育成法 - 合理的であるな、妥当であれ

 

■ 妥当的に運用するメリット

もう一度、「実行可能性」というキーワードが登場します。企業や事業をあるべき方向へ変革していきたいけど、一足飛びには無理とおっしゃる経営管理者に向かっては、あるべき方向性と業務水準を「To-Be」として描きつつも、最初から「To-Be」一辺倒でシステムや業務ルールを構築し、運用側の実力が伴わない場合、きまって「ほら、コンサルタントって高い金をもらって画餅のシステムをつくりやがって。誰も使いこなせやしないじゃないか」と陰に日向に悪口を言われることになります。

つまり、理想を語った新システムや新業務プロセスも、会社の中の人が動かせてなんぼ、使ってみてメリットを感じることができてなんぼの世界なのです。そこでは、まず「使ってもらえる」「良さを分かってもらえる」仕掛けが備わっていることが必要になります。

そこで「実行可能性」が登場します。現状の業務品質水準も入念に観察し、「To-Be」の新業務が100点満点だったら、まず60点を狙いに新業務運用を開始できるような柔構造のITシステムや業務プロセスをあらかじめ設計しておきます。つまり、段階的な運用水準の階段を順番に上がれるように仕組みが持つ機能も十分にモジュール化しておき、運用も常にステップ論を切って、絶妙のタイミングでの業務の背伸びが実現できるように、ナビゲートしていくのです。

新システムや新業務をこなしている内に新しい課題発見や経営環境の変化を迎えることもあります。よって、5年後の新システム・新業務全面切替より、1年後の新システム・新業務部分稼働開始のほうがアダプティブでアジルな組織運営が可能になると信じています。

最初から60点を目指すシステムや業務ルールを作ってしまうと理想からずいぶんと歪んだものができてしまうのです。それは絶対に避けねばならないのです。適用させるのは、調整させるのは、設計の方ではなくて、運用の方でなければならないのです。

なぜなら、設計は代替わりした後もその会社に残る、比較的寿命の長いものだからです。運用は、その時点時点の担当者のスキルレベル・意識レベルに左右されるもので、相対的に短命だからです。ITシステムの話になりますが、素晴らしい設計は、インフラが、オフコン、クラサバ、ウェブ、クラウドに変わっていっても、根幹となる基本設計思想は不変であるシステムが世の中には普通に存在します。

 

■ 「チェンジ・マネジメント」は、それを伝道する人から変えるべきである

これが、あるべき「To-Be」を見越して、合理的にもの(ITや業務ルール)を設計し、妥当的にもの(ITや業務ルール)を運用する、ということなのです。そのために、段階的に運用の水準を上げたり、新システム・新業務のスコープを徐々に拡大させたりという作業計画の立案とその進捗管理を実際に行わなければなりません。

そこでは、「実行可能性」=その会社の実務能力水準と担当者に備わっているタレント、を見極める必要があります。新業務の適用開始タイミングを一部の会社・組織は遅らせたり、新システムの導入を1年早めたりという調整を、新しい試みの目的・意義やプラクティスをトレーニングしたり、伝道師として(傍から見たら同じことをぶつぶつ言い続ける危ないおじさんのように目に映るかもしれませんが)新システム・新業務の内容を広めていき、理解者・協力者を一人でも増やしていくのです。

これを、「チェンジ・マネジメント」と称する場合もあります。

新しい試み(新システム、新業務ルール)を会社の中に広める役割、伝道師(エバンジェリスト)。その伝道師のミッションが「チェンジ・マネジメント」。伝道師が陥るであろう陥穽をあらかじめ予測して、その回避方法やどこに落とし穴があるかの予言もする。そういうのを生業にしているのが私だと思って頂ければ宜しいかと思います。ここまでくると、お前は何様なんだ? と批判の声が出るのも十分承知しております。ですけれどね、私には、特に、連結経営管理の世界では、まさに「見えます、見えます、1年後のあなたの姿が見えます」の状態なのですよ。

私の言葉を信じる・信じないはその人次第です。私も全員を最初から説得しようとは思っていないので。やがて、時が満ちれば、私が指摘したことが身に染みて「分かる」時が必ずやってくるのです。そう信じていないと、目の前の批判の言葉を真摯に全てを受け止めきれないですからね~。(^^;)

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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