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ファイナンスと金融にまつわる価格と価値について

ファイナンス_アイキャッチ ファイナンス(基礎)
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ファイナンスと金融の語源

始めに言葉ありき。 In principio erat Verbum. 【ヨハネによる福音書 第1章】

ファイナンス(finance)や金融を語るためには、使われている用語の語源から知る必要があるということで、最初に確認しておきましょう。

「金融」の語源
  • : 「お金」「金属」 を意味する。 漢字の成り立ちとしては、「地中」と「埋まっている金属」を表す文字の組み合わせ。
  • : 「とける」「とおる」を意味する。漢字の成り立ちとしては、「料理に使う釜」と「虫」を表す文字の組み合わせ。「虫」は「蒸気」を意味し、煮込んでいる様をいう。煮込めば固いものが柔らかくなり→溶ける→液体になって「どこにでも通じる」となる。
  • 金融:お金を広く世の中に通じ合わせる
「Finance(ファイナンス)」の定義
  • finer  : 中世フランス語で「終わる、(賠償金を)支払う」
  • -ance  : 抽象名詞の語尾 で「 ~していること 」
  • fin+ance: 支払い(finer)と受け取りを通して経済的な活動をしていること

和英どちらも「お金」が広く世の中に行き渡って、人々の日常生活において、様々な形態でお金がやり取りされるさまを表しています。また、似たような言葉に「融通ゆうずう」というものもあります。こちらは「とどこおらずに通ずること」「有無を通じうまく運ぶようにすること」という意味持ちます。

融通とは、余地や余裕がある場合に、そちらに曲げていったり、そこで広げたり膨らませたりすることです。そこから、お金を融通する「金融」とは、カネに余裕のある人が、自分が持っているカネをほかの人に利用させてあげることを意味するようになります。

家族や友人との関わり、ボランティア活動など、金銭の授受を直接の対価として取引されないものもありますが、衣食住を満たすためにモノ・サービスを消費をしたり、子供の将来に備えて、今から何かの給付を受ける(モノやサービスを提供してもらう)権利を持つために、カネを貯金の形で取っておくことは現代の日常生活に、ごく自然に溶け込んでいます。

政府や地方公共団体から受ける公共サービスも直接の対価が支払われないかもしれませんが、実は「税金」を納めているから受けられる公共サービスなのだと考えれば、カネを媒介としたやり取り(経済的取引)というものは、結構身近なものであることが分かります。

モノやサービスの対価としてやり取りされているカネは、実際に、取引の片割れであるモノやサービスが身近に感じられるため、かなりのところまでイメージが湧きやすいものです。しかし、銀行に預金しているカネに利息が付いたり、株式投資したカネに配当金や、値上がり分の売却益が出たりした場合、どうも具体的なイメージが湧きにくいものです。

金融の分かりにくいところというのは、目に見えない「カネ」に、目に見えないルールによって、追加分の「カネ」(利息や配当など)がくっつくところです。まさしく、「カネ」が「カネ」を生む状態を自分に有利なようにコントロールするのが、ファイナンス(金融)における技であり、金融のプロ達にとっては、そこが腕の見せ所となるのです。

「カネ」が持っている価格と価値について

日常生活における、モノ・サービスの交換取引の多くの場合と、カネ同士の交換や移動だけの取引を考えた場合とでは、感覚が少々異なるものになっているかもしれません。例えば、リンゴ農家の方が、1個100円の原価でリンゴを精魂込めて育てたとします。それを都会の消費者が直売方式で140円で購入するとしたら、リンゴの価値は、100円140円のどちらが適正な価値といえるでしょうか?

経済学・マーケティング・会計学それぞれの中にもいろいろな考え方があるので、一概にはいえませんが、とりあえず、市場で140円で交換された「価格」=「価値」とみなすのが最も簡単な考え方でしょう。モノ・サービスを媒介としない金融取引の場合は、「カネ」自身の交換される「価格」や、その「カネ」を手にしたいと思う人が、別の種類の「カネ」を代償にしてでも手に入れたいとする主観的な価値(いくらまでなら支払ってもいいと考えているかの基準値)で、カネの価値が決まり、実際その価格で取引(交換)されることになります。

今ここに、1万円持っているけれど、衣食住には困っていないので、その1万円をギャンブルでぱーっと使おうかなと思っているAさんがいるとします。Aさんの親友であるBさんは、うかつにもお財布を落としてしまい、次の給料日まで生活費がちょうど1万円分不足しているとします。BさんがAさんに生活費1万円を借りようとした場合、ここに「金融」の基本的な考え方が生じます。

Aさんの立場から、ギャンブルで1万円使い切り、ストレス発散することの効用(気持ちよさ)が、日本円で換算すると10,100円であることが分かっているとします。Bさんは月給が額面で30万円で、Aさんから生活費を借りる際には、借りたお金にお礼の気持ちを添えてAさんにお返ししてもいいと考えたとします。その添えられる気持ちも日本円で換算できるとして、借りたお金の1%にあたるなら、Bさんは、Aさんから今1万円を借りて、来月の給与日に10,100円を感謝の気持ちを添えて返すと、AさんもBさんも経済合理的に、今の1万円と1か月後の10,100円を気持ちよく交換できたことになります。

もちろん、Aさんが親友のBさんから、利息(金利)を取ることを潔しとせず、友人価格で利息ゼロでBさんに1万円を快く貸す、という選択肢もとることができます。Aさんの取りうる行動の選択のための価値基準を日本円という金銭的価値という統一基準で分かりやすくそろえて考えてみましょう。

Aさんの日本円で比較可能な選択肢は次のように考えます。

  1. 目の前の1万円をそのままお財布にしまっておく(1か月後もそれは1万円のまま)
  2. 目の前の1万円をすぐにギャンブルで使い切って、10,100円の満足を得る
  3. 目の前の1万円をBさんに友人価格(=無利息)で貸し、1か月後に1万円を返してもらう
  4. 目の前の1万円をBさんに貸し、相場通り1%の利息をつけて、10,100円を返してもらう

さて、あなたがAさんなら、今目の前の1万円の価値がどれだけと見込んで、その1万円をいくらの価格で誰と取引しますか?

カネの価値は「金利」で測る

AさんとBさんの間で、1万円を貸す・借りるという金融取引がおこなれるのは、上記選択肢の3と4です。まず、3と4だけを比べて考えてみましょう。

3.のケースは、AさんとBさんの間で、今月の1万円を貸して1か月後に同額分だけを返すという金融取引がつけた1か月後の1万円の価格は、やはり1万円です。一方、4.のケースは、今月の1万円は、100円の利息をつけて返金されると考えるため、今目の前にある1万円は、1か月後に10,100円となる価格で取引されたとみなすことができます。

3. Aさん→Bさん、今の1万円は「1か月後の1万円」という価格で金融取引された

4. Aさん→Bさん、今の1万円は「1か月後の10,100円」という価格で金融取引された

3. Aさんの主観:今の1万円は「1か月後の1万円+Bさんとの良好な友人関係」の合計価値

4. Aさんの主観:今の1万円は「1か月後の10,100円」という経済的価値のみ

3. と 4. のいずれにせよ、目の前の1万円(という交換的価格を持っている紙幣)に対して、Aさんは、1か月後の1万円という価値とBさんとの良好な友人関係維持というプライスレス的な価値の合計10,100円の価値を見込んでいることに他なりません。

なぜなら、Aさんは、上記選択肢の2. も採り得たため、 現在の1万円という貨幣的な交換価格に、 ギャンブルでスッキリする快感分を上乗せした10,100円という時価をつけているからです。

Aさん目線では、現在の1万円にも、ギャンブルでスッキリする余分な価値:100円をつけた10,100円の価値を見出しているし、同時に、Bさんに貸し出して、1か月後に10,100円として返還される価値を等しく、10,100円としてみていることになるのです。

Bさんとの友情はプライスレスなので、比較問題の題材としては不適切なのでしょう。しかし、金融の世界では、カネの価値を厳しく問わねばならないので、金額できちっと評価してあげないといけないのです。それには、「いくら」という経済的価値で等しく比べよう(評価しよう)ということになります。

金融取引は、時間経過を伴うものが大半なので、現在の1万円と1か月後の1万円のそれぞれの価値も相対評価してあげる必要があります。ギャンブル1回スッキリ分とか、Bさんとの友情プライスレスなどといっていては、他の人と簡単にカネを取引内でやり取りできなくなるからです。唯一、他人と取引価格を決める手立てとして、借り手・貸し手、お互いの主観的な価値を同じ貨幣的数値で一致させないと、「カネ」の交換取引が成り立たないからです。

この、時間の経過とともに変化する「カネ」の価値の変動分を「金利(利息)」というものが表しているのです。

主観的な価値は交換レートで表す

上で見てきたように、モノやサービスの対価として「カネ」が支払われるのではなく、ファイナンス(金融)の世界では、「カネ」同士が直接交換され、モノやサービスを媒介としないで、それらの交換価格を決める必要があります。売り手と買い手のそれぞれの主観的な価値判断で「いくら」と値決めするになります。

価値は主観的にしか定まらないものです。主観と主観がずれていては取引は成立しないので、主観同士を何かで合わせる必要があります。借り手と貸し手の間で「カネ」に関する取引について、金額的に合意できるように唯一の交換価格を値決めるためには、借り手と貸し手に平等に与えられている客観的で揺るがない指標を用いる必要があります。

万人に等しく与えられているものの代表例が時間です。主観的な「カネ」に対する価値の交換を簡単にするために、次のようなカネの交換レートを時間を唯一の基準として用いるのです。

  • 今月の1万円と1か月後の1万円の交換レートを決めてあげる
  • 日本円とアメリカドルの交換レートを決めてあげる
  • 上記を組み合わせると、今月の日本円と1か月後のアメリカドルの交換レートも決められる

最後に、主観的な価値に含まれる大事な要素を付け加えておきます。それは「信用」です。Aさんは、Bさんが親友だからというだけで、お財布の中の1万円を1か月後の10,100円(もしくは友情プライスレスを除く1万円)と交換したいと主観的に決めたのでしょうか。

友情を仮に要素分解できるとしたら、それには間違いなく「信用」が含まれているでしょう。Bさんだからこそ、踏み倒さずにきちんと返済してくれるはず。Bさんの大体の月給は分かっているから、そこから10,100円程度なら、支払いに余裕があるはず、というAさんからBさんへ「信用」があるからこそ、月利1%という利息でお金を安心して貸すことができるのです。

また、比較論でたとえますが、Aさんには、Cさんという知り合いがいて、Cさんが嘘つきで、お金を借りても返さないようなズルい人であることが分かっていたなら、Aさんは進んでCさんにお金を貸そうとはしませんし、仮に貸すことになったとしても、Bさんより高いリスクを受け入れる対価として、1%より高い利息をCさんに求めるに違いありません。それは、BさんとCさんに対する「信用」度が異なるからです。

ファイナンスは、カネの交換をすることです。交換取引には借り手と貸し手が合意するべき「価格」が存在し、価格はお互いの主観的な「価値」を反映したものである必要があります。「価値」を決めるためには、取引相手の「信用」を図る必要があります。「信用」度を客観的な数字に落とすために、時間の経過とともに増減する貨幣価値で信用度を表現しようとします。それが「金利(利息)」ということになるのです。

ちなみですが、月利1%(1か月の利息)は、年利(1年間の利息)に置き換えると、単利で12.0%、複利で12.7%になります。実際には、現在のマイナス金利情勢下において、とても友情価格とはいえない水準かもしれませんね。

ファイナンスと金融にまつわる価格と価値

 ファイナンスは広く「カネ」を世間に行き渡らせることである

 ② 「カネ」の交換には、借り手と貸し手の価値を合わせる必要がある

 ③ 価値を決めるために相手の「信用」を値踏みし、それを金利(利息)で表現する

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