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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(52)本管の金言 無意識に訴える早期警報システムの構築

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早期警戒のために警報装置を備えること

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

外部リンク  G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページ(英語)

トラブルは、人が「それはそうじゃない」と知ったときから始まる。そして事態は、人が攻撃的自信を持ち、うまくゆかないはずはないと信じ込むにつれて進化する。あまりの自信ゆえに、ちょっとした間違いが重大な悲劇に姿を変えるのだ。

G.W.ワインバーグ著「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」(P102-103)

前回、トラブルに巻き込まれないように、警報システムを常日頃から準備しておきましょうということを説明しました。今一度、効果的な警報システムの満たしておくべき条件を確認しておきます。

  1. 危うくなることが分かったら、すぐに知らせてくれる仕掛けをあらかじめ用意しておく
  2. その仕掛けは意識的なものより、無意識的に発動するほうが安全性が高い
  3. 警報はできるだけ早く、そしてできるだけ正確に
  4. 警報システムはコスト(時間と手間暇を含む)ができるだけ安上がりのほうがありがたい

今回は、すぐに知らせてくれる、かつ安上がりな警報システムを準備しておく工夫が本題になります。

不思議なクリスマスプレゼント

ワインバーグ氏の自宅には、とある天然ガス会社から毎年クリスマスプレゼントが届くのだそうです。そのプレゼントというのが、毎年決まってカレンダーが入っているほかは、ボールペン、蛍光キーホルダー、メモを取り付けられるマグネット(冷蔵庫に貼り付けられるあれ)、時には雨量計が届けられたそうです。

不思議に思ったワインバーグ氏は、もちろん同封されているクリスマスカードに目を通して、この会社がどんな動機を持って毎年クリスマスプレゼントを贈ってくるのか確かめてみたそうです。

カードには、ワインバーグ氏の敷地内にガス管を通させてくれていて大変感謝しているという謝辞が大げさに記述されており、さりげなく、ガス管の近くを掘り起こすことがあったら同社まで知らせてほしい、というお願いの一文があることを発見しました。

そうです。天然ガス会社から毎年届けられていたクリスマスプレゼントの品々にはちゃんと意味があったのです。

  • 丸を付けて「本日、倉庫を増築するためにガス管の近くを掘削する」と予定を書き込むカレンダー
  • 倉庫の図面を書くためのボールペン
  • 倉庫の図面を冷蔵庫のドアに貼り付けるマグネット
  • 今日は雨が降っていて、工事には適さない日かどうかを確かめるための雨量計
  • 下手に動かして刃の一振りでガス管に傷をつけるかもしれないトラクターのキーをくくり付けておくキーホルダー

本管の金言

このクリスマスプレゼントの一件から、ワインバーグ氏は、「本管の金言」というものを思いつきました。

知らなくても怪我をするとは限らないが、思い出さないとすれば間違いなくやられる。

G.W.ワインバーグ著「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」(P99)

ワインバーグ氏が、「敷地内にガス管が通っていることなんて既に知っているんだから、なんで天然ガス会社が心配してクリスマスプレゼントを毎年贈ってくるのか分からないなあ。心配のしすぎだよ」と妻に話したところ、妻の一言がまた面白いものでした。

「もちろん知っているわよ。送ってきた包みの中味を理解しようと思ったら、ついてきた手紙を読まなくちゃいけないということを、あなたが知っているようにね。もしみんなが、しなくちゃならないと知っていることをしていれば、車にバンパーはいらないわ。」

「車にバンパーはいらないわ」の部分でなるほど! と思わず頷いてしまいました。私たちは、もともと知っていることを、知っていながら、いざというときには忘れていることも多々あるということを忘れてはいけないのです。

こうした人の無意識に働きかける何かを意識的に利用しようとしたのは、最初に無意識の存在に気が付いたオーストリアの精神科医であるフロイトでした。精神分析の創始者と知られています。自由連想法(とある言葉(刺激語)を与えられた時に、心に浮かぶままの自由な考えを連想していく発想法)により、刺激語と連想語の関連を分析し、潜在意識を顕在化する事によって心理的抑圧を解明することで、患者の精神疾患を治療しようとするものです。

最近では、行動経済学(経済学と認知科学を統合した行動ファイナンス理論及びプロスペクト理論)がこのアプローチでたくさんの業績を残しています。2002年にノーベル経済学賞 を受賞したダニエル・カーネマン教授によるファストな「直感」とスローな「論理」で人間は意思決定をくだし、ファストな「直感」はたくさんのバイアスに影響されていることがとても興味深く記述されています。

残念なお知らせ - 原著をつい読みたくなる理由

この部分には、訳注が付されており、いかにワインバーグ氏の金言や法則が大層語呂がよくて覚えやすい、つまり効果的な「引き金」(早期警報システム)の条件を備えている言葉なのか、英語の説明がありました。訳注で翻訳者(木村泉)が説明している通り、ワインバーグ氏の本著の金言や法則、規則や原理というものを片っ端から丸暗記することが大事なのではなく、読者の脳に刻まれた記憶が、必要な時に自然と思い出される言葉で紡がれていることです。

そういう意味で、この訳注で原文(英語)のネーミングセンスの良さについて改めて解説されていたので、それらをご紹介しておきます。私もまだまだ英語は初学者の一人なので、こういうところで語彙を増やしたいと思っているところです。

(注:筆者の英語学習の途中経過は、当サイトの「ビジネスノート|ナレッジマネジメント」に学習用サブノートの一部が公開されています。)

「ブラウンのすばらしき遺産」 Brown’s Brilliant Bequest
「ルウディーのルタバガ法則」 Rudy’s Rutabaga Rule
「ボールディングの逆行原理」 Boulding’s Backward Basis
「本管の金言」 Main Maxim

「Main」は、上下水道・ガス・電気などの本管・本線、「Maxim」は金言・格言です。
大変語呂がいい命名規則になっています。これだと、確かに読者の記憶に留めやすく、英語圏でベストセラーになるわけです。

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