ビジネスモデルケース(3)職種確約コース - 専門スキルとロイヤリティの双方が高い人材確保 パナソニック

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■ 「ヒト」に着目した「ビジネスモデル」

これから日本はますます少子高齢化社会に向かうことになり、単純労働者だけでなく知識労働者も人手不足に大いに悩まされる時代がもうすでに始まっています。「ビジネスモデル」というと、マネタイズの手法だけに特化したお話だったり、画期的なオペレーション手法にだけ焦点を当てたお話が多いのですが、筆者は、個人の仮説として、分かりやすい以下の4つの論点というチャートで「ビジネスモデル」を説明することにしています。

ビジネスモデル(入門編)とあるビジネスモデル・フレームワーク(仮)

なぜ、「人」がビジネスモデルを考える構成要素のひとつなのかと申しますと、会社=組織は、それを構成する「人」が持っているポテンシャル以上のものはアウトプットできないと考えるからです。

画期的な新製品を次々と世に送り出すようなイノベーティブな企業を目指すなら、テクノロジーそのものに素養がある人や、オープンイノベーション組織運営や外部の技術者集団とのコラボレーションができる人がいないと、プロダクト・イノベーションを訴求する企業にはなり得ません。

一方で、顧客密接型で、カスタマー・インテマシーを訴求して、徹底してクライアントの身に立ったソリューションを提供することで商売を作ることに長けた人が営業やソリューション開発の任を受けないと、そもそも戦略を実行するに担い手が社内に存在せずに、そんな戦略は絵に描いた餅以外の何物でもない、ということになります。

つまり、「人」の器以上に会社という器は大きくなることはできず、企業成長や収益性向上のボトルネックは、経営者を含めた「人」であるというのが持論です。

 

■ 新卒採用に「専門職採用」を持ち込んだパナソニックの人材ビジネスモデル

日経紙に、パナソニックの専門スキル特化型の新卒採用戦略の枠が広がっている記事が掲載されました。

2018/3/3付 |日本経済新聞|朝刊 パナソニック、職種確約 19年度新卒採用で新方式

「パナソニックは2日、2019年度新卒採用の計画を発表した。事務系の採用では、入社後に就く職種を確約する方式を経理や法務など向けで新設。専門性の高い学生を集めやすくする。計画数は18年度の計画より100人多い900人で、内訳は高校、高専生が計200人のほか、大学、大学院生は計700人と17年ぶりの規模だ。文系、理系の内訳は非公表。
新設したのは「職種確約コース」で、経営経理職種と法務知財の2種類に分かれる。専門性が高い学生だけでなく、職種を限って志望する学生の採用も見込む。昨年度までは専門性がある学生でも、配属先は確定していなかったという。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

それでは、専門職とか高度スキルというイメージがより強い理系職は何にもやっていないのか。気になったので、調べてみたところ、同じ報道でも若干理系のことに触れているものがありました。

パナ、大卒採用700人に 平成31年度、「職種確約コース」も新設|産経WEST

「事務系の選考枠では、専門性を身に付けたい学生などを対象に、希望に応じて入社当初の配属を経理や法務、知的財産関連にする「職種確約コース」を新設した。
技術系では昨年に引き続き、商品開発や研究・技術開発、情報システム管理など専門職種のコース別に選考を行う。」

つまり、理系の方が先に職種確約をした新卒採用を一歩先に実施していたことになります。

 

■ 新卒採用と中途採用モデルの従来型の思い込みによる垣根と育成計画の違い

本当は世界各国にも新卒一括採用は存在しているのですが、日本の主要な経済紙(誌)は、日本独特の雇用慣行と言いたいようで。(^^;)

しかしながら、分かりやすく、新卒採用は、長期雇用が前提で、採用後の社内トレーニング前提の人材募集、中途採用は、該当事業での即戦力として、採用後の社内トレーニングを前提としていない人材募集という使い分けがある場合、下図のようなポジショニングと採用後のトレーニングプランが想定されます。

ビジネスモデル(入門編)人財マトリクス

このマトリクスは、縦軸に社内の共有知の保有量を取っています。会社のことをよく知り、すり合わせや社内調整の術を熟知し、組織人として仕事が回せるようになる知識です。おそらくなのですが、この社内共有知の大小が会社への所属意識つまりロイヤリティの大小と比例していると考えています。

横軸は、専門スキルがどれくらい身に付いているかを示したものです。中途採用者は即戦力で専門性を発揮してもらう必要がありますが、新たに採用される会社独自のローカルルールをまだ熟知はしていません。入社後のオリエンテーションや社内行事や日常の仕事を通じて、社内知の共有度を高めることは、組織内で円滑に仕事を進めることに役立つに違いありません。

職種確約コースは、

① ジョブローテーションを前提としたゼネラリストから高度人財に至るまでの時間短縮
② 入社後の職種への認知ギャップの最小化(= 入社後即退社のリスク低減)

を目的とした人材採用・育成ビジネスモデルなのだと考えます。

 

■ パナソニックの新卒採用のWebページを眺めてみる

今回の記事をきっかけに、改めて、パナソニックの新卒採用サイトを眺めてみました。

Panasonic >企業情報>採用情報>新卒採用情報>採用基本情報>選考プロセス

まずは、事務系の選考プロセスから。

20180304_パナソニック_事務系選考プロセス

この中にある、6月度選考に「職種確約コース」があります。

20180304_パナソニック_職種確約コース選考

【Accounting & Finance -経営経理- 職種】
・パナソニックの経理部門にて、経営経理として、経営貢献をしたいという強い想いをお持ちの方
・経理の仕事に興味があり、パナソニックの経理部門の仕事に挑戦したいという強い希望をお持ちの方

【法務・知財職種】
・法務・知財分野の勉強をしている人、または興味を持っている人で パナソニックの法務部門や知財部門の仕事にチャレンジしたい方
・グローバル企業の現場最前線で、法務や知財の知識・情報を活用しながら、 事業を変革・リードしていく「ビジネストランスフォーマー」役として経営貢献したい方

ただ、文系の人には画期的なことでも、理系の方にはもう当たり前のお話かもしれませんね。同様に、技術系の方も覗いてみることにしましょう。

選考コースInformation技術系向け

20180304_パナソニック_選考コース技術系向け

パナソニックの技術系の選考コースは、
① 研究・技術開発系
② 事業・商品系
③ スペシャリスト系
に分かれています。

ある程度、専門学校、大学や大学院での専攻が反映されている形になっています。逆説的に、こうして観察してみると、これまでの文系一般ゼネラリスト一括採用の方が奇異に感じてしまいます。

これは、プロダクトライフサイクルも短期化し、M&A関連の会計・税務・法務分野の整備による事業再編のしやすさ改善、労働市場の流動化が相まって、文系ゼネラリスト受難の時代が進むのでしょう。彼らには、もう目先のことですが、RPAやAIの洗礼も待ち受けています。「働くこと」について、中堅の方々も今一度、来し方行く末をこの際、考えてみるというはどうでしょうか。

ビジネスモデル(入門編)ビジネスモデルケース(3)職種確約コース - 専門スキルとロイヤリティの双方が高い人材確保 パナソニック

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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