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孫子 第5章 勢篇 19 戦いは、正を以(もっ)て合い、奇を以て勝つ

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 「奇」とは「奇策」にあらず。「正当策」で部隊を配置することである

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戦闘というものは、正法で敵軍と対陣し、奇法で勝利を得るものです。

正法の態勢から適切に奇法を繰り出す者は、その奇法の出し方が無限であり、その組み合わせは尽きることがないのです。

戦闘の勢いを構成する要素は奇法と正法の2つに過ぎませんが、奇法と正法の組み合わせによる変化の型は、無限に広がって、とても全部を窮め尽くすことはできません。正から奇が、奇から正がと、奇法と正法とが循環しながら発生するさまは、丸い輪に終点の無いようなものです。

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孫子を読む人は、この一節を、「定石」ではなく、「奇策」(奇襲とか待ち伏せなどの罠とか、間諜による敵軍の混乱など)で、つまり策を弄することで勝利することを推奨するものと読解しているケースが多々あります。残念ながら、そういう解説をしている読解本は、孫子の研究が浅いと言わざるを得ません。

この節の本意は、下記の通りです。

① 有形の兵力配備で、敵のやはり有形なる兵力配備に対応するのが「正」で、無形の兵力配備で敵の有形なる兵力配備を制圧するのが「奇」である

② 相手と同質の兵力を配備するのが「正」で、異質な性格を持つ兵力を配備するのが「奇」である

①の趣旨は、一見するとそれと分からない理屈で兵力を配備して、勝利の備えることを「奇」としています。まず「型」どおり、防御陣形や攻撃陣形、包囲網形成や一点突破の態勢構築などを行うのは「正」です。しかし、「奇」とは「無形」を意味し、敵にそれと意図を悟られない兵力配備と、敵の状況の変化に応じて、常に勝利への最善の態勢に自軍を組み直し続ける柔軟性と即時対応性を重視します。

②の趣旨は、敵と自軍が、まったく兵力が同数だったり、兵士の練度(質)が同等だったりすると、相互に勝利の決着をつけがたくなるため、どうしても、勝利の確率を上げるには、敵軍とは異質な要素を自軍に備える必要性を訴えるものです。そこで、同質が「正」で、異質が「奇」と理解することができるということになります。

孫子の時代の戦争の仕方による具体例でこれを説明します。

1)既に布陣し終えた部隊を、陣形変更のため移動中の敵部隊に当たらせる
2)休養十分の部隊を疲労した敵部隊に当たらせる
3)飽食して体力十分の部隊を、飢えて体力の衰えた敵部隊に当たらせる
4)統率のとれた部隊を、指令がいまだ行き渡らず、統制の乱れている敵部隊に当たらせる
5)大部隊を敵の小部隊に当たらせる

要するに、「奇」とは、何であれ、敵と異なる有利さを備えた部隊を配置する行為全般を指すのです。

これだから「孫子」は深いんですよね!

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