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孫子 第5章 勢篇 20 善く戦う者は、其の勢は険にして

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 投入のタイミングを計る!

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水が激しく流れて石をも漂わせるまでに至るのが、勢い(勝利に向かう力)です。
猛禽が急降下し、一撃で獲物の骨を打ち砕くまでに至るのが、節目(勝利を決する瞬間)です。
たから、巧みに戦う者は、その戦闘に突入する勢いが限度いっぱい蓄積されて高いピークまで険しくなるほどよく、その蓄積した力を放出する節目は一瞬の間になります。
勢いを蓄えるのは弩(ど:古代中国の弓)の弦(げん)をいっぱいに引き絞るようなものであり、節は瞬間的に引き金を引くようなものです。

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孫子はここで、「勢」の仕組みを解説しています。「勢」とは、蓄積と発射の前後二段階より構成されると説いています。「勢」とは、敵を打ち破るエネルギーの放出のことで、その大小の違い(敵を打ち破るパワーの発揮のされ方の違い)が生じる仕組みを説明しているのです。

「蓄積」とは、敵を打ち破る打撃力(エネルギー)を限界まで高めるための準備を指します。そして、「発射」とは、節目が到来した時に、それまで蓄積しておいたエネルギーを一気に放出して敵を打ち破る打撃とすることです。

この時、力の放出にかかる時間が短いほど、目標物への衝撃力(打撃力)は強大となります。
そこで、小部隊の逐次投入は愚の骨頂で、わざわざ戦場における破壊力を弱めて敵に充てていることになります。

刻一刻と状況が変わる戦場では、打撃力をピークに維持することは困難がつきものですが、時間をかけるか、時間当たりの蓄積量を増やしておくかして、できるだけ打撃力を高めて、その一撃のタイミングを見計らっておく、そして、その時(節目)が来たら、一気に打撃力を放出する。そのメリハリが、一気呵成に勝利のための打撃を加えることが、その場の勝敗を決することになります。

にしても、「弩」の構造をよく知らないと、孫子のこのたとえは理解しにくいかもしれません。「弩」は半備え付けの強力な飛び道具なので、軽弓に比べて打撃力は格段に高いのですが、その分、弦をいっぱいいっぱいに引き絞るのに時間も力もより必要になります。そして、連射ができませんので、狙いを定めたら一発必中で、敵を仕留める必要があります。

打撃力は大きいが、準備に手間取り、打ち直しも難しい。組織の運営も同じで、効果の高い策というのは、準備段階で政策効果をできるだけ高めておいて、ここぞ!というときに一気呵成に実行に移す。そのタイミングの取り方も重要であるというよい訓示となります。

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