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(戦略を聞く)大成建設・山内隆司社長 業績・配当・給与、業界首位に

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ こういうROE重視の風潮に付和雷同しない社長インタビューは好感が持てます

経営管理会計トピック
大成建設の山内社長のインタビュー記事が3/25の朝刊に掲載れていました。大成建設は、「中期経営企画(2015-2017)」を3/27にプレスリリースしていますので、一連のIR的動きのものであると推察いたします。
⇒「大成建設 中期経営計画(2015-2017)」←PDFファイル

2015/3/25|日本経済新聞|朝刊 大成建設・山内隆司社長 業績・配当・給与、業界首位に

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「大成建設の業績が好調だ。大都市で再開発工事など案件の増加を追い風に、採算を重視した選別受注が功を奏している。2016年3月期から新たな中期経営計画を始める。山内隆司社長は「業績・配当・給与のすべてで業界トップに立つ」と強調する。」

■ 山内社長の目標設定の合理性

山内社長は、新中計にあたって(それ以前からご発言されているのですが)、「『業績・配当・給与』のすべてで業界トップに立つ」という目標設定をされています。
では、足元での競合他社との位置取りはどのようになっているのでしょうか。
筆者も毎日購読している週刊ダイヤモンドが運営している情報サイト「Diamond Online」に格好の比較材料となるチャートがありましたので、出典元を明確にしたうえで、下記に転載させていただきます。
⇒「清水建設の1円増配に揺れる“コップの中”で争うゼネコン(2015/2/24)」
http://diamond.jp/articles/-/67357
ゼネコン比較_週刊ダイヤモンドOnline_20150224
FY14第三四半期決算時点の状況では、鹿島、大成建設、清水建設、大林組の4社比較は下記のようになっています。
<業績> - 連結営業利益
1位 大成建設 
2位 清水建設
3位 大林組
4位 鹿島
<配当> - 配当性向
1位 鹿島
2位 大林組
3位 大成建設
4位 清水建設
<給与> - 社員平均年収
1位 大林組
2位 大成建設
3位 鹿島
4位 清水建設
それぞれについて、新聞記事より、方針・施策を抜き出します。
<業績>
「リーマン・ショック時の09年3月期に営業赤字を経験したことが、立て直しへのバネになった。それ以前は受注量の確保に走り、採算への意識が薄かった。受注案件の取捨選択を厳しくし、営業担当から現場監督まで様々な立場の人間が収支計画を立てて採算管理を徹底するようにした。ほかにも建材調達を現場に任せていたが、価格情報を集約する部署を09年に新設した。結果的に他社より安く仕入れられている」
ポイントは2つ。
① 受注時の見積採算の精度向上 → 赤字JOBの削減
② 資材の集中管理購買による調達価格の削減
いずれも、「完成工事総利益率」の向上に直接効果がある施策になります。
<配当>
「持ち合い株が多く、株価水準が上がればROEの分母となる自己資本が含み益で膨らんでしまう。ROEの目標は積極的には掲げにくい。まずは業界内で相対的に高い収益性を上げる企業になりたい」
新中計では、業界トップの年8円配当を上回ることを目標にしています。ただし、一株当たり配当や配当性向は、あくまで、高い収益性の結果、株主に報いることができるという真っ当な考え方により、株主還元のためには、先立つ収益性の向上、という姿勢は筆者的には高評価です。結果指標(KGI)である「ROE」を目標変数にしてしまうと、分子(収益性)がよろしくないと、分母(持ち合い株式の売却や有利子負債による置換)の操作に陥ってしまいます。
ゼネコンは、他業種に比べて自己資本比率が低く、「D/Eレシオ」の改善が当座の財務目標になったりします。今回の大成建設の新中計でも、有利子負債のFY17目標額は、3,000億円未満と、現状以下の目標が示されましたが、D/Eレシオについては、FY14見込値:0.6倍までしか提示がありませんでした。
<給与>
「給与でもトップを目指すのは技術系社員の採用強化のためだ。収益が見込める案件でも人員を手配できなければ、工期の遅れや施工ミスなどにつながりかねない。『職長』と呼ぶ現場リーダーへの日当上積みや協力会社向けの技術研修も始めて人材を取り込む」
東京五輪後も見据え、足元の人手不足だけでなく、海外事業の成長(トルコでの原発建設など)を見据えた従業員満足度の向上と海外事業人材の育成を企図されています。

■ 猫も杓子も「ROE」=8% でいいのか?

実は、大成建設は、「有利子負債(3165億円) < 現預金(3555億円)」なので、ネットで考えると、実質無借金経営となっています。
(数字は、FY13末)
一方で、新聞記事にも言及があった持ち合い株式については、投資有価証券が2659億円保有しているうち、2119億円が該当するので、構成比は、約8割。昨今の「包括利益」による持ち合い株式の時価評価(公正価値評価)次第では、純資産額が膨らんでしまい、ROEを見かけ上、悪くしてしまいます。
個別銘柄への言及はここでは避けますが、本業に対するパートナー企業の名もちらほらあります。こういう緩やかな資本提携が本業の業績にいくらか貢献しているのではないか、とも思う所もあり、よくある財務管理や会計の教科書に書いてある「IFRSなどの公正価値会計の時代には、株式の持ち合いを解消すべき。株主への説明責任が付かない」ということが、必ずしも真理とは思っていません。
「『ROE』重視の経営をしない企業は、経営管理が周回遅れである」との言説を見聞きしますが、実は、欧米の進んでいると思われる経営管理手法が不適切で、周回遅れの分、痛い目に会わなくて済んだ、という話もあります。
まあ、筆者的には、はやくROEブームが過ぎ去って、現在周回遅れとされている企業に対する評価の見直しがなされることを期待してやみません。
(決して、大成建設さんが周回遅れと言っているではないので、念のため)
P.S.
大成建設さんの現場で働くすばらしいプロフェッショナルたちの活躍を描いたNHKの放送がありました。思い出したので、ここで紹介しておきます。
(利益にはまだつながっていないみたいですが、技術やこれからの市場を見据えた戦略としては、大変素晴らしいものがあると思います)
⇒「技術開発者・市原英樹 世界初のビル解体、仲間と共に乗り越えろ
(2015年2月9日 OA NHK プロフェッショナル 仕事の流儀)

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