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■ 悲喜交々「タックス・インバージョン」に翻弄!?

経営管理会計トピック
本ブログで最初に取り上げたのは、「グローバルオピニオン 米法人税の改革が必要」でしたが、それ以来、特にここ最近、「タックス・インバージョン(納税地変換)」の新聞記事がやたら目につきます。

2014/10/21付 |日本経済新聞|朝刊
「税逃れ」規制を欧米が強化 多国籍企業、漂う海外戦略

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます
企業活動がグローバルになり、簡単に国境を越えて取引が行われているので、租税の徴収権設定の基本的考え方として、「属地主義」をとるにしろ、「属人主義」をとるにしろ、グローバル企業1社に対して、税務当局がひとつには決まらないため、必ず次の課題が発生します。
  1. 国家間で法人税制に差異がある限り、税務負担が最も小さくなるように商取引の形態を変容させることは経済合理性から避けられない(株主からの受託責任)
  2. 課税当局とすれば、「二重課税」回避、または、「課税逃れ」防止のために、様々な手段をとらなければならないことに起因する「徴税コスト」の上昇が、返って税収の国庫収入に対する効果を減衰させる
  3. 企業側も、タックスプランニング推進の誘因から逃れられず、本業ではないところで経費や人的リソースを使って、税引き後利益の最大化を図ろうとする
  4. そうした企業のタックスプランニングを支援する業界や組織が利益を得る(官製市場の創出)

■ 税制が企業活動を左右することについて

記事の中でも、「グーグルのパトリック・ピシェット最高財務責任者(CFO)は16日の決算会見で、アイルランドの優遇見直しについて「政治家が法律を作り、企業はそれに従うだけ」というインタビューがありました。政策が企業活動に多大な影響を及ぼしている証左だと思います。
直近の事例では、米製薬大手アッヴィが、アイルランドの同業シャイアーとの買収合意を撤回しました。

2014/10/17付 |日本経済新聞|朝刊
米製薬が買収を撤回 アッヴィ、節税規制強化で

さらに、株主対策として、50億ドル(約5350億円)規模の自社株買いと、四半期配当の約17%引き上げも発表しました。

2014/10/21付 |日本経済新聞|夕刊
(短信)米アッヴィ、自社株買い5350億円

米国政府の方針次第で、ひとつの会社が財務戦略を大きく変更せざるを得ない状況に追い込まれてしまったということです。これが、グローバルには一つの市場、ローカルには政策当局が国境で分かれている矛盾です。文化・宗教の違いは、社会そのものの違いで、いたずらに政策的な変更を加えることは、様々な逆作用を引き起こしてしまいかねませんが、税制ぐらいは、企業活動に中立的であってほしいものです。
財務省のホームページには、「税の三原則「公平・中立・簡素」」と謳われているのですが、、、
一節を引用します。
「税制が個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにするのが、中立の原則です」
全く、とほほ。。。です。

■ 背に腹は代えられない「医療費削減」の陰で

日本政府も、少子高齢化が進むに当たり、手を拱(こまね)いてもいられず、医療費削減のための政策として、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進」を採っています。
詳細はこちら
その中で2006年から、「後発医薬品を含む処方を診療報酬上評価」「後発医薬品を調剤した場合に調剤報酬上評価」ということで、ジェネリック医薬品を処方・調剤することにインセンティブを医療機関や薬局に対して設けています。みなさんも、ジェネリック医薬品をどうしてそんなに薬剤師さんが進めるのか、不思議だったのではないでしょうか。
政府(厚労省)の指示というのもありますが、経済的なインセンティブもあったわけです。厚労省は、国家財政の負担減、医療機関の収入増、患者(国民)の医療費負担減、健康保険組合の負担減、と皆にとってWin-Win だと主張しているわけです。
その陰で、後発医薬品メーカーと先発医薬品メーカーのシェア争いが発生し、前者の成長性・収益性が後者を上回り始めた部分もでてきました。厚労省の政策が、医薬品業界の業界地図を大きく塗り替えられることに加担しているわけです。先発医薬品メーカーの関係者(株主でもいいです)からすれば、政府のやり方はそのまま看過できるのでしょうか。
ジェネリックの使用比率を30%越えにもっていくためのインセンティブ設定は、安定供給や薬効や安全性の保証など、門外漢ながら、きちんと専門家の判断があった上で実施されることは当然のことと考えています。しかし、先発医薬品メーカーのこれまで保ってきた特許に守られていた利益も、ただ無駄に国庫支出をいたずらに増やしていたわけではなく、新薬開発の原資になっているわけで、新薬開発の原資確保について、日本政府はどう考えているのか、目の前の医療費削減か、国民の命を守る新薬開発への投資促進か、納税者(有権者)の前できちんと説明をしてもらいたいと思います。
(上記は、一人の国民として、一人の父親としての意見です。決して筆者は医療関係者ではありません)

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小林 友昭経済動向を会計で読む■ 悲喜交々「タックス・インバージョン」に翻弄!? 本ブログで最初に取り上げたのは、「グローバルオピニオン 米法人税の改革が必要」でしたが、それ以来、特にここ最近、「タックス・インバージョン(納税地変換)」の新聞記事がやたら目につきます。 2014/10/21付 |日本経済新聞|朝刊 「税逃れ」規制を欧米が強化 多国籍企業、漂う海外戦略 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 企業活動がグローバルになり、簡単に国境を越えて取引が行われているので、租税の徴収権設定の基本的考え方として、「属地主義」をとるにしろ、「属人主義」をとるにしろ、グローバル企業1社に対して、税務当局がひとつには決まらないため、必ず次の課題が発生します。 国家間で法人税制に差異がある限り、税務負担が最も小さくなるように商取引の形態を変容させることは経済合理性から避けられない(株主からの受託責任) 課税当局とすれば、「二重課税」回避、または、「課税逃れ」防止のために、様々な手段をとらなければならないことに起因する「徴税コスト」の上昇が、返って税収の国庫収入に対する効果を減衰させる 企業側も、タックスプランニング推進の誘因から逃れられず、本業ではないところで経費や人的リソースを使って、税引き後利益の最大化を図ろうとする そうした企業のタックスプランニングを支援する業界や組織が利益を得る(官製市場の創出) ■ 税制が企業活動を左右することについて 記事の中でも、「グーグルのパトリック・ピシェット最高財務責任者(CFO)は16日の決算会見で、アイルランドの優遇見直しについて「政治家が法律を作り、企業はそれに従うだけ」というインタビューがありました。政策が企業活動に多大な影響を及ぼしている証左だと思います。 直近の事例では、米製薬大手アッヴィが、アイルランドの同業シャイアーとの買収合意を撤回しました。 2014/10/17付 |日本経済新聞|朝刊 米製薬が買収を撤回 アッヴィ、節税規制強化で さらに、株主対策として、50億ドル(約5350億円)規模の自社株買いと、四半期配当の約17%引き上げも発表しました。 2014/10/21付 |日本経済新聞|夕刊 (短信)米アッヴィ、自社株買い5350億円 米国政府の方針次第で、ひとつの会社が財務戦略を大きく変更せざるを得ない状況に追い込まれてしまったということです。これが、グローバルには一つの市場、ローカルには政策当局が国境で分かれている矛盾です。文化・宗教の違いは、社会そのものの違いで、いたずらに政策的な変更を加えることは、様々な逆作用を引き起こしてしまいかねませんが、税制ぐらいは、企業活動に中立的であってほしいものです。 財務省のホームページには、「税の三原則「公平・中立・簡素」」と謳われているのですが、、、 一節を引用します。 「税制が個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにするのが、中立の原則です」 全く、とほほ。。。です。 ■ 背に腹は代えられない「医療費削減」の陰で 日本政府も、少子高齢化が進むに当たり、手を拱(こまね)いてもいられず、医療費削減のための政策として、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進」を採っています。 詳細はこちら その中で2006年から、「後発医薬品を含む処方を診療報酬上評価」「後発医薬品を調剤した場合に調剤報酬上評価」ということで、ジェネリック医薬品を処方・調剤することにインセンティブを医療機関や薬局に対して設けています。みなさんも、ジェネリック医薬品をどうしてそんなに薬剤師さんが進めるのか、不思議だったのではないでしょうか。 政府(厚労省)の指示というのもありますが、経済的なインセンティブもあったわけです。厚労省は、国家財政の負担減、医療機関の収入増、患者(国民)の医療費負担減、健康保険組合の負担減、と皆にとってWin-Win だと主張しているわけです。 その陰で、後発医薬品メーカーと先発医薬品メーカーのシェア争いが発生し、前者の成長性・収益性が後者を上回り始めた部分もでてきました。厚労省の政策が、医薬品業界の業界地図を大きく塗り替えられることに加担しているわけです。先発医薬品メーカーの関係者(株主でもいいです)からすれば、政府のやり方はそのまま看過できるのでしょうか。 ジェネリックの使用比率を30%越えにもっていくためのインセンティブ設定は、安定供給や薬効や安全性の保証など、門外漢ながら、きちんと専門家の判断があった上で実施されることは当然のことと考えています。しかし、先発医薬品メーカーのこれまで保ってきた特許に守られていた利益も、ただ無駄に国庫支出をいたずらに増やしていたわけではなく、新薬開発の原資になっているわけで、新薬開発の原資確保について、日本政府はどう考えているのか、目の前の医療費削減か、国民の命を守る新薬開発への投資促進か、納税者(有権者)の前できちんと説明をしてもらいたいと思います。 (上記は、一人の国民として、一人の父親としての意見です。決して筆者は医療関係者ではありません)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します