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■ ROE重視かGDP重視か

経営管理会計トピック
とうとう著名なコラムに手を出してしまいました。
ROE向上は、JPX400導入の機運もあり、「今や国策ともいえる」という文章からコラムが始まっています。

2014/9/23付 |日本経済新聞|朝刊
一目均衡 ROE最大化と企業価値

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます
日米でROEに対する企業行動の違いに触れた個所がありました。

米国企業は、
「ROEの最大化を目指す米国流の経営は、規模の拡大を犠牲にして成り立つ例が多い」
として、企業は、事業への投資より、自社株買い・増配・事業売却・人員整理を志向するとありました。
一方、日本企業は、
「多様なステークホルダー(利害関係者)を念頭に、規模を拡大しながら雇用や税金、取引先の利益などを維持してきた日本型経営の方が、国内総生産(GDP)への貢献度は大きかった」
として、株主へのリターンを犠牲にして規模の拡大に走った日本企業の行動に警鐘を鳴らしています。
直接この評価に対して苦言を呈すると、偉い先生のコメントも引用していることから、ダイレクトに批評すると、筆者がこの業界から締め出される恐れがあるので(まあそんな心配をする必要もない程の雑魚なのですが念のため)、それとなく自説を紹介することで、間接的にアンチテーゼを示したいと思います。
それは、「誰のポートフォリオか」という命題を真剣に考えようということです。
経営管理会計トピック_投資ポートフォリオと事業ポートフォリオ
それぞれの事業の成熟度、成長性を誰が判断して、自己の裁量・責任において投資を行うか?株主もバカではないので、誰に貴重な資金を託せばリターンが最大になるか常に考えているはずです。
「エージェンシー理論」「コングロマリット・ディスカウント」なる用語をネット検索して頂ければ、この辺の事情がもう少し分かるかもしれません。
株主との対話の中で、経営者は自分(自社)が得意な領域で最大限のリターンを上げることを株主に約束するだけのこと。その領域がどの分野にまたがるのか、あるいはひとつに特化しているのか、それとももうどの分野でも資金需要は無いのか、それは株主が経営者を見極めることでおのずと決まります。
株主は経営者が事業を選ぶより自由に投資先の会社(経営者)を選べるのですよ!
それはそうと、過去または現在において、GEやソニー、ソフトバンク、楽天に金融サービス部門があるのは、どういう事業ポートフォリオを株主が「是」としているのか、各社のIR資料を丁寧に読み込むと、表現されています。キーワードは「シナジー」と「経営資源」。

■ 資本コストとROEは同列に語れるか

記事の中に、
「企業には相応の見返り(資本コスト)を求める。資本コストを上回るROEは、リスクマネーの出し手が企業に課した責務といえる」
「ROEと配当性向の水準をどうするかが、期待リターンを決める重要な要素となる」
との一節があります。しかし、筆者は、ROEで資本コストは語れないという立場です。
100歩譲って、株主の立場のみからの資本コストという前提を置きます。
また、ROEを計算するときの分子を「当期純利益」という前提を置きます。
経営管理会計トピック_株式益回り
《図解》
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本
     = 20 ÷ 60
     = 33.3%
株式益回り = 当期純利益 ÷ 時価総額
           = 20 ÷ 140
           = 14.3%
ちなみに、
イールドスプレッド = 長期金利 - 株式益回り
                = 0.54% - 14.3%
                = (-)13.76
ちなみに、
PER(株価収益率) = 1 ÷ 株式益回り
                 = 1 ÷ 14.3%
                 = 6.99(倍)
となります。
株主は、自己資本額みたいな簿価には興味はそれほどなく、今現在、この会社の株価が割安なのか割高なのか、株式益回りを悪化させない程度の当期純利益を上げることができる投資ならOKできるのではないか、と考えるはずです。
この前提条件が付いたケースでは、14.3%が当該株主の資本コストとなります。
最後に、株式益回りが最強の指標となり得ないポイントにも言及してこの記事を終わらせて頂きます。

  1. 株式益回りの分子が当期純利益なので、全て株主へのリターンを意味していない
  2. インカムゲインやキャピタルゲインが表現されていない
  3. 経営者から見れば、財務諸表の外にある「市場付加価値」は直接コントロールできる経営変数ではない
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小林 友昭とことんROE■ ROE重視かGDP重視か とうとう著名なコラムに手を出してしまいました。 ROE向上は、JPX400導入の機運もあり、「今や国策ともいえる」という文章からコラムが始まっています。 2014/9/23付 |日本経済新聞|朝刊 一目均衡 ROE最大化と企業価値(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 日米でROEに対する企業行動の違いに触れた個所がありました。 米国企業は、 「ROEの最大化を目指す米国流の経営は、規模の拡大を犠牲にして成り立つ例が多い」 として、企業は、事業への投資より、自社株買い・増配・事業売却・人員整理を志向するとありました。 一方、日本企業は、 「多様なステークホルダー(利害関係者)を念頭に、規模を拡大しながら雇用や税金、取引先の利益などを維持してきた日本型経営の方が、国内総生産(GDP)への貢献度は大きかった」 として、株主へのリターンを犠牲にして規模の拡大に走った日本企業の行動に警鐘を鳴らしています。 直接この評価に対して苦言を呈すると、偉い先生のコメントも引用していることから、ダイレクトに批評すると、筆者がこの業界から締め出される恐れがあるので(まあそんな心配をする必要もない程の雑魚なのですが念のため)、それとなく自説を紹介することで、間接的にアンチテーゼを示したいと思います。 それは、「誰のポートフォリオか」という命題を真剣に考えようということです。 それぞれの事業の成熟度、成長性を誰が判断して、自己の裁量・責任において投資を行うか?株主もバカではないので、誰に貴重な資金を託せばリターンが最大になるか常に考えているはずです。 「エージェンシー理論」「コングロマリット・ディスカウント」なる用語をネット検索して頂ければ、この辺の事情がもう少し分かるかもしれません。 株主との対話の中で、経営者は自分(自社)が得意な領域で最大限のリターンを上げることを株主に約束するだけのこと。その領域がどの分野にまたがるのか、あるいはひとつに特化しているのか、それとももうどの分野でも資金需要は無いのか、それは株主が経営者を見極めることでおのずと決まります。 株主は経営者が事業を選ぶより自由に投資先の会社(経営者)を選べるのですよ! それはそうと、過去または現在において、GEやソニー、ソフトバンク、楽天に金融サービス部門があるのは、どういう事業ポートフォリオを株主が「是」としているのか、各社のIR資料を丁寧に読み込むと、表現されています。キーワードは「シナジー」と「経営資源」。 ■ 資本コストとROEは同列に語れるか記事の中に、 「企業には相応の見返り(資本コスト)を求める。資本コストを上回るROEは、リスクマネーの出し手が企業に課した責務といえる」 「ROEと配当性向の水準をどうするかが、期待リターンを決める重要な要素となる」 との一節があります。しかし、筆者は、ROEで資本コストは語れないという立場です。 100歩譲って、株主の立場のみからの資本コストという前提を置きます。 また、ROEを計算するときの分子を「当期純利益」という前提を置きます。 《図解》 ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本      = 20 ÷ 60      = 33.3% 株式益回り = 当期純利益 ÷ 時価総額            = 20 ÷ 140            = 14.3% ちなみに、 イールドスプレッド = 長期金利 - 株式益回り                 = 0.54% - 14.3%                 = (-)13.76 ちなみに、 PER(株価収益率) = 1 ÷ 株式益回り                  = 1 ÷ 14.3%                  = 6.99(倍) となります。 株主は、自己資本額みたいな簿価には興味はそれほどなく、今現在、この会社の株価が割安なのか割高なのか、株式益回りを悪化させない程度の当期純利益を上げることができる投資ならOKできるのではないか、と考えるはずです。 この前提条件が付いたケースでは、14.3%が当該株主の資本コストとなります。 最後に、株式益回りが最強の指標となり得ないポイントにも言及してこの記事を終わらせて頂きます。 株式益回りの分子が当期純利益なので、全て株主へのリターンを意味していないインカムゲインやキャピタルゲインが表現されていない経営者から見れば、財務諸表の外にある「市場付加価値」は直接コントロールできる経営変数ではない現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します