■ 2014年9月18日の日経新聞朝刊は盛り沢山
管理会計屋としては、9/18の日本経済新聞 朝刊は、飛び付きたくなる記事が多くあり、個々にはショートコメントで、標題の記事は少しだけストーリーを検証してみます。
2014/9/18付 |日本経済新聞|朝刊
ソニー赤字拡大 初の無配 スマホ不振 今期最終2300億円
記事の中で、スマホ事業の減損で処理する金額が1800億円とありました。この影響で、最終赤字が当初見込みの500億円から2300億円に拡大するとのことです。損益へのインパクトもさることながら、資産構成への影響も確認したいところです。記事にはありませんでしたが、ソニーのプレスリリースから、1800億円は全額「営業権(のれん)」ということが分かりました。
FY13末の営業権は全社で6918億円なので、この1800億円は、26%に相当します。2011年10月27日にプレスリリースがあった「ソニー・エリクソン完全子会社化」の際に支払った1123億円に相当の「のれん」が含まれていたと思われます。
しかし、北京にある製造子会社の設備は減損しないのですね。
ちなみに、筆者のスマホはXperia、テレビはBRAVIA、ノートPCはVAIOです。。。
■ 最近はやりのCCCとリキャップCB
先日取り上げたCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)がまたLIXILとNECの記事として掲載されています。
2014/9/18付 |日本経済新聞|朝刊
LIXIL400億円捻出 今期 買収資金など、生産改革で NECも資金効率高める
どうぞ、CCCの計算式では、分母を全て売上高に統一するか、買入債務と棚卸資産の分母は売上原価にするか、計算式の意味をよく吟味して運用して頂ければと思います。
こちらも先日取り上げた、リキャップCBの話題が掲載されています。
2014/9/18付 |日本経済新聞|朝刊
「リキャップCB」相次ぐ アデランス100億円 エディオン150億円調達
アデランスは、調達する100億円の使途を、52億円は長期借入金の返済に、30億円を自社株の取得に充てるとのこと。さらに、記事には、筆頭株主である米投資ファンドのスティール・パートナーズが保有株の売却に応じる可能性ありと憶測もあり。アデランスは過去の株主総会で会社提案の取締役再任決議が否決されたこともあります。本業に集中してくださいと言いたいのは筆者だけでしょうか?
■ フリーキャッシュフローとROEと配当
三井物産のホームページで確認し、9/1プレスリリースのAnnual Report にある中期経営計画の記述を調べました。
2014/9/18付 |日本経済新聞|朝刊
CFO投資家に語る⑤ 三井物産 ROE、10~12%に引き上げ
中計では、「基礎営業キャッシュ・フロー」を1.8~2.0兆円にし、これを原資にして、バランスよく「新規事業への投融資」と「株主還元(配当金・自社株買い)」に充てるとの記述がありました。
- 基礎営業キャッシュ・フロー:営業活動に係るキャッシュ・フローから運転資本の増減に係るキャッシュ・フローを除いたキャッシュ・フロー
さすが岡田CFOは、「DEレシオとROEは矛盾するところもあり、それぞれで最適なところに持っていきたい」という発言もあり、超大企業のCFOはかくあるべしと僭越ながら感心しました。三井物産の財務戦略として、「株主還元は配当が基本だ。配当性向を25%から30%に見直した」との発言があり、中計を見ても、2017年の目標株主資本は4.8兆円、但し自社株買いによる影響は考慮せずとの注記がついていました。
一方で、この記事および中計にてROEの目標を10~12%に設定しているため(FY13実績は9.7%)、ROE達成のために、目標リターン(中計ではEBITDA:1兆円)が未達の場合は、自社株買いの発動の可能性ありと読みました。中計の注意深い作図はさすが超一流企業だと感心しました。
新聞記事に戻って、
フリーキャッシュフローの目標とROEの目標が並べて記事冒頭に掲げられていましたが、フリーキャッシュフローを原資に増配してもROEには全く無関係です。株主に訴求するのは、投資効率のROEか、インカムゲインの配当性向または配当額か、読み次第でキャッシュフロー計算書の財務活動の部分は構成が変わってきます。
という視点で、来期末の業績発表を今から楽しみにしておきます。
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