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■ セブン&ホールディングスに挑んだアクティビストの行動から一連の動きが始まった!

経営管理会計トピック

ここ2週間余り、マスコミを騒がせた日本トップのコンビニチェーンを要するセブン&ホールディングスのトップ人事関連の騒動について、ここまでの日本経済新聞の報道をまとめていきます。はるか、1月に遡っての解説。筆者ならではのキュレーションをお楽しみください。

注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

まず、日本経済新聞で本件の関連記事としての初出は、セブン&ホールディングス中核会社のセブン-イレブン・ジャパンの社長の交代を決議する7日の取締役会開催についての一報からでした。

2016/4/7付 |日本経済新聞|朝刊 セブン&アイ、セブン社長交代提案へ 決算好調も突然の退場要求 社外役員は反対

「セブン&アイ・ホールディングスが中核子会社セブン―イレブン・ジャパンの社長人事で揺れている。7日に開く取締役会に井阪隆一社長兼最高執行責任者(COO、58)の交代を提案する。後任の社長には古屋一樹副社長(66)を昇格させる方針だ。グループの好業績を支えるセブンイレブン社長が退場を求められたのはなぜか。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付のセブン&アイ。ホールディングスの人間関係相関図を転載)

20160407_セブン&アイ・ホールディングスの人間関係相関図_日本経済新聞朝刊

ここで明らかになった事実は、
① セブンイレブンを5期連続で最高益を更新させる結果を残した井阪氏でも、その経営手腕に不満な鈴木氏の意向があること
② 社外取締役2名を含む指名報酬委員会が待ったをかけた形の人事案が取締役会に諮られること
③ アクティビスト「サード・ポイント」から1通の書簡が届いたこと
(内容)
     ・改めてヨーカ堂の事業縮小などを求めた
     ・井阪氏の社長職を解く噂を耳にしたが降格は理解できない
     ・鈴木氏の次男をグループのトップに就ける噂もあるが重大な疑問がある

その日のうちに、上記人事案は否決されたことが報じられます。

2016/4/7付 |日本経済新聞|夕刊 セブン社長交代案否決 社外取締役ら反対 近く再協議

「セブン&アイ・ホールディングスが7日午前に開いた取締役会は中核子会社、セブン―イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼最高執行責任者(COO、58)を交代させる人事案を否決した。社外取締役を中心に複数の取締役が反対した。セブン&アイは近日中に臨時取締役会を開き、再度人事案について話し合うとみられる。」

(下記は同記事添付のセブン&アイの主要取締役の一覧を転載)

20160407_セブン&アイの主な役員_日本経済新聞朝刊

この記事では、セブン&アイの人事案が混迷する大きな理由として、アクティビスト(物言う株主)であるサード・ポイントからのプレッシャーに対して、社外取締役が反応したことに始まったとこの時点ですでに報じられています。

「セブン&アイを巡っては15年10月、「物言う株主」として知られる米投資ファンド、サード・ポイントが株式を保有していることが明らかになった。サード・ポイントはセブン&アイに対し、業績不振が続く傘下のスーパー、イトーヨーカ堂のグループからの切り離しなどを要求していた。」

「セブン&アイの対応に不満を抱くサード・ポイントは3月には「井阪氏の社長職を解く噂を耳にしたが降格は理解できない」との書簡をセブン&アイの役員に提出。書簡の内容を報道機関に公表したことでセブン&アイ内でくすぶっていたグループ人事の問題が一気に表面化。セブン&アイの経営陣は井阪氏の社長交代を主張する鈴木会長と社外取締役を中心とする反対派の議論が紛糾していた。」

 

■ いずれ会社から去るファンドの要求に、会社はどこまで応える必要があるのか?

所詮、アクティビストファンドは期待するキャピタルゲインを手に入れられれば、その会社を去ってしまいます。

2016/1/28付 |日本経済新聞|電子版 (記者の目)セブン&アイ、気になる「あの株主」の動向

「そこで気になってくるのが「あの株主」の動向だ。「物言う株主(アクティビスト)」で知られるダニエル・ローブ氏率いる米サード・ポイント。昨年10月末にセブン&アイ株の取得を明らかにしている。比率は5%未満とみられるが、傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂の分離や配当額の増額を求めている。」

サード・ポイントがセブン&アイ株を初めて購入した時期は不明とのことですが、投資家へのレポートを見るに、セブン&アイ株の取得単価は、5400円らしいとのこと。

「1月7日に発表した2015年3~11月期の連結決算は3期連続の連結営業最高益と、その強さを見せつける内容だった。ところが株価はさえない。2割近く下落した日本株全体に引っ張られた面があるとはいえ、昨年末から一時15%下落し5000円の節目を割る場面があった。」

ということですから、なにか抜本的な株価上昇策が打たれないと、サード・ポイントは離れていってくれない。そこで、セブン&アイは次のような手を打っていきます。

2016/1/9付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)ヨーカ堂背水 前社長再登板  総合スーパー再建混迷 「祖業もグループ外」重圧

「セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は8日、亀井淳顧問(71)が社長兼最高執行責任者(COO)に就任したと発表した。亀井氏は2014年5月まで社長を務め顧問に引いていた人物。前任の戸井和久氏(61)は業績改善を果たせず、わずか1年8カ月で社長の座から降りた。前社長の再登板という異例の人事は総合スーパーを取り巻く環境の厳しさを物語る。亀井氏の下でヨーカ堂は力を取り戻せるのだろうか。」

鈴木氏のサード・ポイントからのプレッシャーに対する焦りは次のような記事に現れています。

「今回、取締役からも外れ、社長付となる戸井氏は営業畑の「エース」と呼ばれ、14年に社長に就任した。現場からの信頼も厚く、7年半続いた亀井政権から、周囲も納得する自然な交代だった。
 売上高は毎年落ち込み、営業の強化は待ったなし。戸井氏は経営者として非情な決断を迫られた。15年9月には全店舗の2割にあたる40店を閉鎖する方針を決めた。これはヨーカ堂として過去最大規模の店舗閉鎖だ。並行して画一的な売り場づくりから脱却するため、店舗ごとに仕入れなどを任せる独立運営方式を導入するといった改革も急いだ。
 だが、エースをもってしても事態はすぐに好転しない。再建のスピードは鈴木会長の期待には届かず、いらだちを募らせる形となった。」

鈴木前会長は、昨年10月のアナリスト向けの決算説明会の席上で、「祖業のヨーカ堂でも利益が出なかったら今後グループから外すという決意で改革を実施する」とまで言い放っています。「ヨーカ堂を立て直すまでは辞められない」と常々語っていた鈴木前会長にとって、エースと呼ばれていた戸井氏の手腕では物足りなく映っていたようです。

2016/2/25付 |日本経済新聞|夕刊 (短信)セブン&アイ、10周年で記念配当8円

「セブン&アイ・ホールディングスは15日、2016年2月期末に記念配当8円を実施すると発表した。15年9月にホールディングス設立10周年を迎えたため。年間配当は前期比12円増の85円となる。従来予想は77円だった。」

そして、「株主還元」強化による株価上昇(維持)策。サプライズの記念配当の上積みです

 

■ ファンドが要求する事業ポートフォリオの改革による企業価値向上の行く末とは

2016/3/9付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)セブン&アイ、不採算事業の止血急ぐ 2百貨店閉鎖発表 ヨーカ堂も今期20店

「セブン&アイ・ホールディングスが不採算事業のテコ入れを急ぐ。傘下の百貨店、そごう・西武が運営するそごう柏店(千葉県柏市)と西武旭川店(北海道旭川市)を9月末に閉鎖すると8日に発表。スーパーのイトーヨーカ堂でも不採算店舗の閉鎖を前倒しする。不振が続く百貨店、スーパーの止血を急ぐ一方、稼ぎ頭のコンビニエンスストアに経営資源を集中。グループとしての成長を維持する。」

(下記は、同記事添付のそごう、西武百貨店、イトーヨーカ堂の業績グラフを転載)

20160309_百貨店、スーパーの苦戦が目立つ_日本経済新聞朝刊

「15年11月に始めたグループ横断インターネット通販サイト「omni7(オムニセブン)」もコンビニの成長エンジンという位置付けだ。ネットと実店舗を連携する「オムニチャネル」戦略はセブンイレブン中心に描かれる。現在、オムニセブン利用者の7割は商品をセブンイレブンで受け取り、来店のついでに様々な商品を買っていく。オムニチャネル戦略によるセブンイレブンの収益貢献がそのままグループの成長につながる。」

より現時点での本業の業績向上をブーストさせる、そのための「オムニセブン」であり、

2016/2/4付 |日本経済新聞|朝刊 ユニクロ商品、セブンで受け取り16日から 提携第1弾、まず首都圏

という店頭サービスの展開につながっていきます。

再び、3/9の記事に戻りますと、

「8日には17年2月期も営業利益が過去最高を更新する見通しも明らかになった。このタイミングで好業績が続くと宣言した背景にはソニーやファナックなどに経営改革を迫った米国の「物言う株主」、サード・ポイントの存在がある。実際、セブン&アイもヨーカ堂の切り離しなどをすでに求められている。
一連のてこ入れ策について、村田社長は「サード・ポイントを意識したことではない」と言い切った。一方でグループのプライベートブランド「セブンプレミアム」の成功を例に取り、複合企業としてのグループ経営が相乗効果を引き出していることを強調。コンビニを柱とする成長戦略にあっても百貨店、スーパーの立て直しが必要であることを訴えた。」

とあり、記者の質問に語るに落ちた感もあるのですが、事業ポートフォリオの立て直しに必死な感は、明らかに、アクティビスト(物言う株主)であるサード・ポイントの圧力の存在をセブン&アイの経営陣が意識していることを推し量るに十分です。

そして、

2016/3/10付 |日本経済新聞|朝刊 セブン&アイ株、一時3%高 店舗閉鎖など評価

「9日の東京株式市場でセブン&アイ・ホールディングス株が一時前日比3%高の4583円まで上昇した。同社は8日、百貨店のそごう柏店と西武旭川店を9月末に閉鎖すると発表。総合スーパーのイトーヨーカ堂の不採算店舗の閉鎖前倒しも含めた構造改革を打ち出しており、収益改善を期待した買いが入った。」

と、株式市場では前日の事業ポートフォリオ見直しによる不採算店の閉鎖を好感しました。

「すでに40店舗の閉店を公表していたイトーヨーカ堂は17年2月期に20店舗を閉じる。百貨店の閉鎖も含め関連の特別損失を16年2月期に約55億円計上する。グループの経営効率を高める狙いだが、前期に赤字になったイトーヨーカ堂について市場では「抜本策とは言い難く、物足りない印象」(大和証券の津田和徳氏)という声も聞かれた」

ここまで来ると、コンビニ以外はいらない、と言っているのも同然ですが。。。ここで手垢についたPPM理論をいたずらに持ち出すつもりはありませんが、「負け犬」を機械的に切るだけで、中長期の企業の持続的成長は達成できるのでしょうか。そして、「負け犬」と「問題児」を、企業は瞬時に切り分ける事業に対する目利き力はどれくらいあるのでしょうか? 赤字事業を全て切って、将来の成長のタネをすべて手放し、手元には一時的にキャッシュが残り、それをファンドが回収してから速やかに去っていく。後に残るは、途方に暮れる経営者と従業員。そうならないことを切に願うばかりです。

2016/3/28付 |日本経済新聞|夕刊 「そごう・西武の店舗閉鎖不十分」 米サード・ポイントCEO

「物言う株主として知られる米投資ファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)は28日、日本経済新聞などの電話取材に応じた。株式を保有しているセブン&アイ・ホールディングスについて「(傘下の百貨店である)そごう・西武の店舗閉鎖の規模は十分ではなくもっと実施すべきだ」などと指摘した。
 そごう・西武は現在23店舗を構える。セブン&アイはそごう柏店(千葉県柏市)と西武旭川店(北海道旭川市)の2店舗を9月末に閉鎖すると発表している。イトーヨーカ堂も17年2月期中に20店舗の閉鎖を公表しているが、この評価は避けた。
 3月末が期限となる株主提案を実施するかどうかについては「まだ決めていない」と述べた。
 また、サード・ポイントは、同日までにセブン&アイの取締役に向けて送った書簡の中で「鈴木敏文会長が血縁関係を理由にした人事を行うことは正当化されない」と指摘。「適切な後継候補の選考こそが、株主に利益をもたらす」とも述べた。これについてセブン&アイ首脳は「恣意的な人事は全くあり得ず、心外だ」と話した。」」

この書簡こそ、今回の騒動の直接の引き金を引いたと言えましょう。

さてさて、以上がセブン&アイ・ホールディングスのトップ人事、混乱の火種の段の説明になります。なんでも、表層的に起きた事件だけを見ていくと、その根本原因とか、下種な勘繰りに走りがちになります。因縁とか世襲へのこだわりとか。会社は所詮人間の集まりですから、そういった感情の機微もあるかもしれませんが、それだけで説明をつけていては、経営管理・経営戦略の語り部としては、非常につまらないのですよ。

次回は、一連の騒動の推移と、それに対する有識者のご意見を引き続き拾っていきましょうか。

⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(2)指名報酬委員会から臨時取締役会までの流れ - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(3)コーポレートガバナンスに関する論点整理① - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(4)コーポレートガバナンスに関する論点整理② - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(5)コーポレートガバナンスに関する論点整理③ - 日本経済新聞まとめ

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セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(1)発端はサード・ポイントの株式取得から始まった - 日本経済新聞まとめhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むPPM理論,事業ポートフォリオ,株主還元,セブン&アイ・ホールディングス,鈴木敏文,アクティビスト,物言う株主,サード・ポイント,セブンイレブン,井阪隆一,亀井淳■ セブン&ホールディングスに挑んだアクティビストの行動から一連の動きが始まった! ここ2週間余り、マスコミを騒がせた日本トップのコンビニチェーンを要するセブン&ホールディングスのトップ人事関連の騒動について、ここまでの日本経済新聞の報道をまとめていきます。はるか、1月に遡っての解説。筆者ならではのキュレーションをお楽しみください。 注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。 まず、日本経済新聞で本件の関連記事としての初出は、セブン&ホールディングス中核会社のセブン-イレブン・ジャパンの社長の交代を決議する7日の取締役会開催についての一報からでした。 2016/4/7付 |日本経済新聞|朝刊 セブン&アイ、セブン社長交代提案へ 決算好調も突然の退場要求 社外役員は反対 「セブン&アイ・ホールディングスが中核子会社セブン―イレブン・ジャパンの社長人事で揺れている。7日に開く取締役会に井阪隆一社長兼最高執行責任者(COO、58)の交代を提案する。後任の社長には古屋一樹副社長(66)を昇格させる方針だ。グループの好業績を支えるセブンイレブン社長が退場を求められたのはなぜか。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます (下記は、同記事添付のセブン&アイ。ホールディングスの人間関係相関図を転載) ここで明らかになった事実は、 ① セブンイレブンを5期連続で最高益を更新させる結果を残した井阪氏でも、その経営手腕に不満な鈴木氏の意向があること ② 社外取締役2名を含む指名報酬委員会が待ったをかけた形の人事案が取締役会に諮られること ③ アクティビスト「サード・ポイント」から1通の書簡が届いたこと (内容)      ・改めてヨーカ堂の事業縮小などを求めた      ・井阪氏の社長職を解く噂を耳にしたが降格は理解できない      ・鈴木氏の次男をグループのトップに就ける噂もあるが重大な疑問がある その日のうちに、上記人事案は否決されたことが報じられます。 2016/4/7付 |日本経済新聞|夕刊 セブン社長交代案否決 社外取締役ら反対 近く再協議 「セブン&アイ・ホールディングスが7日午前に開いた取締役会は中核子会社、セブン―イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼最高執行責任者(COO、58)を交代させる人事案を否決した。社外取締役を中心に複数の取締役が反対した。セブン&アイは近日中に臨時取締役会を開き、再度人事案について話し合うとみられる。」 (下記は同記事添付のセブン&アイの主要取締役の一覧を転載) この記事では、セブン&アイの人事案が混迷する大きな理由として、アクティビスト(物言う株主)であるサード・ポイントからのプレッシャーに対して、社外取締役が反応したことに始まったとこの時点ですでに報じられています。 「セブン&アイを巡っては15年10月、「物言う株主」として知られる米投資ファンド、サード・ポイントが株式を保有していることが明らかになった。サード・ポイントはセブン&アイに対し、業績不振が続く傘下のスーパー、イトーヨーカ堂のグループからの切り離しなどを要求していた。」 「セブン&アイの対応に不満を抱くサード・ポイントは3月には「井阪氏の社長職を解く噂を耳にしたが降格は理解できない」との書簡をセブン&アイの役員に提出。書簡の内容を報道機関に公表したことでセブン&アイ内でくすぶっていたグループ人事の問題が一気に表面化。セブン&アイの経営陣は井阪氏の社長交代を主張する鈴木会長と社外取締役を中心とする反対派の議論が紛糾していた。」   ■ いずれ会社から去るファンドの要求に、会社はどこまで応える必要があるのか? 所詮、アクティビストファンドは期待するキャピタルゲインを手に入れられれば、その会社を去ってしまいます。 2016/1/28付 |日本経済新聞|電子版 (記者の目)セブン&アイ、気になる「あの株主」の動向 「そこで気になってくるのが「あの株主」の動向だ。「物言う株主(アクティビスト)」で知られるダニエル・ローブ氏率いる米サード・ポイント。昨年10月末にセブン&アイ株の取得を明らかにしている。比率は5%未満とみられるが、傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂の分離や配当額の増額を求めている。」 サード・ポイントがセブン&アイ株を初めて購入した時期は不明とのことですが、投資家へのレポートを見るに、セブン&アイ株の取得単価は、5400円らしいとのこと。 「1月7日に発表した2015年3~11月期の連結決算は3期連続の連結営業最高益と、その強さを見せつける内容だった。ところが株価はさえない。2割近く下落した日本株全体に引っ張られた面があるとはいえ、昨年末から一時15%下落し5000円の節目を割る場面があった。」 ということですから、なにか抜本的な株価上昇策が打たれないと、サード・ポイントは離れていってくれない。そこで、セブン&アイは次のような手を打っていきます。 2016/1/9付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)ヨーカ堂背水 前社長再登板  総合スーパー再建混迷 「祖業もグループ外」重圧 「セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は8日、亀井淳顧問(71)が社長兼最高執行責任者(COO)に就任したと発表した。亀井氏は2014年5月まで社長を務め顧問に引いていた人物。前任の戸井和久氏(61)は業績改善を果たせず、わずか1年8カ月で社長の座から降りた。前社長の再登板という異例の人事は総合スーパーを取り巻く環境の厳しさを物語る。亀井氏の下でヨーカ堂は力を取り戻せるのだろうか。」 鈴木氏のサード・ポイントからのプレッシャーに対する焦りは次のような記事に現れています。 「今回、取締役からも外れ、社長付となる戸井氏は営業畑の「エース」と呼ばれ、14年に社長に就任した。現場からの信頼も厚く、7年半続いた亀井政権から、周囲も納得する自然な交代だった。  売上高は毎年落ち込み、営業の強化は待ったなし。戸井氏は経営者として非情な決断を迫られた。15年9月には全店舗の2割にあたる40店を閉鎖する方針を決めた。これはヨーカ堂として過去最大規模の店舗閉鎖だ。並行して画一的な売り場づくりから脱却するため、店舗ごとに仕入れなどを任せる独立運営方式を導入するといった改革も急いだ。  だが、エースをもってしても事態はすぐに好転しない。再建のスピードは鈴木会長の期待には届かず、いらだちを募らせる形となった。」 鈴木前会長は、昨年10月のアナリスト向けの決算説明会の席上で、「祖業のヨーカ堂でも利益が出なかったら今後グループから外すという決意で改革を実施する」とまで言い放っています。「ヨーカ堂を立て直すまでは辞められない」と常々語っていた鈴木前会長にとって、エースと呼ばれていた戸井氏の手腕では物足りなく映っていたようです。 2016/2/25付 |日本経済新聞|夕刊 (短信)セブン&アイ、10周年で記念配当8円 「セブン&アイ・ホールディングスは15日、2016年2月期末に記念配当8円を実施すると発表した。15年9月にホールディングス設立10周年を迎えたため。年間配当は前期比12円増の85円となる。従来予想は77円だった。」 そして、「株主還元」強化による株価上昇(維持)策。サプライズの記念配当の上積みです。   ■ ファンドが要求する事業ポートフォリオの改革による企業価値向上の行く末とは 2016/3/9付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)セブン&アイ、不採算事業の止血急ぐ 2百貨店閉鎖発表 ヨーカ堂も今期20店 「セブン&アイ・ホールディングスが不採算事業のテコ入れを急ぐ。傘下の百貨店、そごう・西武が運営するそごう柏店(千葉県柏市)と西武旭川店(北海道旭川市)を9月末に閉鎖すると8日に発表。スーパーのイトーヨーカ堂でも不採算店舗の閉鎖を前倒しする。不振が続く百貨店、スーパーの止血を急ぐ一方、稼ぎ頭のコンビニエンスストアに経営資源を集中。グループとしての成長を維持する。」 (下記は、同記事添付のそごう、西武百貨店、イトーヨーカ堂の業績グラフを転載) 「15年11月に始めたグループ横断インターネット通販サイト「omni7(オムニセブン)」もコンビニの成長エンジンという位置付けだ。ネットと実店舗を連携する「オムニチャネル」戦略はセブンイレブン中心に描かれる。現在、オムニセブン利用者の7割は商品をセブンイレブンで受け取り、来店のついでに様々な商品を買っていく。オムニチャネル戦略によるセブンイレブンの収益貢献がそのままグループの成長につながる。」 より現時点での本業の業績向上をブーストさせる、そのための「オムニセブン」であり、 2016/2/4付 |日本経済新聞|朝刊 ユニクロ商品、セブンで受け取り16日から 提携第1弾、まず首都圏 という店頭サービスの展開につながっていきます。 再び、3/9の記事に戻りますと、 「8日には17年2月期も営業利益が過去最高を更新する見通しも明らかになった。このタイミングで好業績が続くと宣言した背景にはソニーやファナックなどに経営改革を迫った米国の「物言う株主」、サード・ポイントの存在がある。実際、セブン&アイもヨーカ堂の切り離しなどをすでに求められている。 一連のてこ入れ策について、村田社長は「サード・ポイントを意識したことではない」と言い切った。一方でグループのプライベートブランド「セブンプレミアム」の成功を例に取り、複合企業としてのグループ経営が相乗効果を引き出していることを強調。コンビニを柱とする成長戦略にあっても百貨店、スーパーの立て直しが必要であることを訴えた。」 とあり、記者の質問に語るに落ちた感もあるのですが、事業ポートフォリオの立て直しに必死な感は、明らかに、アクティビスト(物言う株主)であるサード・ポイントの圧力の存在をセブン&アイの経営陣が意識していることを推し量るに十分です。 そして、 2016/3/10付 |日本経済新聞|朝刊 セブン&アイ株、一時3%高 店舗閉鎖など評価 「9日の東京株式市場でセブン&アイ・ホールディングス株が一時前日比3%高の4583円まで上昇した。同社は8日、百貨店のそごう柏店と西武旭川店を9月末に閉鎖すると発表。総合スーパーのイトーヨーカ堂の不採算店舗の閉鎖前倒しも含めた構造改革を打ち出しており、収益改善を期待した買いが入った。」 と、株式市場では前日の事業ポートフォリオ見直しによる不採算店の閉鎖を好感しました。 「すでに40店舗の閉店を公表していたイトーヨーカ堂は17年2月期に20店舗を閉じる。百貨店の閉鎖も含め関連の特別損失を16年2月期に約55億円計上する。グループの経営効率を高める狙いだが、前期に赤字になったイトーヨーカ堂について市場では「抜本策とは言い難く、物足りない印象」(大和証券の津田和徳氏)という声も聞かれた」 ここまで来ると、コンビニ以外はいらない、と言っているのも同然ですが。。。ここで手垢についたPPM理論をいたずらに持ち出すつもりはありませんが、「負け犬」を機械的に切るだけで、中長期の企業の持続的成長は達成できるのでしょうか。そして、「負け犬」と「問題児」を、企業は瞬時に切り分ける事業に対する目利き力はどれくらいあるのでしょうか? 赤字事業を全て切って、将来の成長のタネをすべて手放し、手元には一時的にキャッシュが残り、それをファンドが回収してから速やかに去っていく。後に残るは、途方に暮れる経営者と従業員。そうならないことを切に願うばかりです。 2016/3/28付 |日本経済新聞|夕刊 「そごう・西武の店舗閉鎖不十分」 米サード・ポイントCEO 「物言う株主として知られる米投資ファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)は28日、日本経済新聞などの電話取材に応じた。株式を保有しているセブン&アイ・ホールディングスについて「(傘下の百貨店である)そごう・西武の店舗閉鎖の規模は十分ではなくもっと実施すべきだ」などと指摘した。  そごう・西武は現在23店舗を構える。セブン&アイはそごう柏店(千葉県柏市)と西武旭川店(北海道旭川市)の2店舗を9月末に閉鎖すると発表している。イトーヨーカ堂も17年2月期中に20店舗の閉鎖を公表しているが、この評価は避けた。  3月末が期限となる株主提案を実施するかどうかについては「まだ決めていない」と述べた。  また、サード・ポイントは、同日までにセブン&アイの取締役に向けて送った書簡の中で「鈴木敏文会長が血縁関係を理由にした人事を行うことは正当化されない」と指摘。「適切な後継候補の選考こそが、株主に利益をもたらす」とも述べた。これについてセブン&アイ首脳は「恣意的な人事は全くあり得ず、心外だ」と話した。」」 この書簡こそ、今回の騒動の直接の引き金を引いたと言えましょう。 さてさて、以上がセブン&アイ・ホールディングスのトップ人事、混乱の火種の段の説明になります。なんでも、表層的に起きた事件だけを見ていくと、その根本原因とか、下種な勘繰りに走りがちになります。因縁とか世襲へのこだわりとか。会社は所詮人間の集まりですから、そういった感情の機微もあるかもしれませんが、それだけで説明をつけていては、経営管理・経営戦略の語り部としては、非常につまらないのですよ。 次回は、一連の騒動の推移と、それに対する有識者のご意見を引き続き拾っていきましょうか。 ⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(2)指名報酬委員会から臨時取締役会までの流れ - 日本経済新聞まとめ」 ⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(3)コーポレートガバナンスに関する論点整理① - 日本経済新聞まとめ」 ⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(4)コーポレートガバナンスに関する論点整理② - 日本経済新聞まとめ」 ⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(5)コーポレートガバナンスに関する論点整理③ - 日本経済新聞まとめ」現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します