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■ 言うは易し、行うは難し。KPIマネジメントに対する誤解とは?

管理会計(基礎編)

世の中には、「KPI経営」とか、「BSC(バランスト・スコアカード)経営」という言葉が流布し、業績管理指標を掲げて、目標管理による従業員への叱咤激励だけが経営管理と思い込んでいる企業があまりに多すぎるように思えます。筆者は、経営管理・管理会計領域の経営コンサルタントとして、多くの企業のKPI設定とその可視化(*)の取り組みを支援してきました。

(*)だいたいは、BI(Business Intelligence)ツールを導入し、マネジメントコックピットや経営管理レポートというデータ管理の仕組み作りまでお手伝いします。

そういう数々のプロジェクトで様々な業種・業態のクライアントの「KPI経営」のお手伝いをしてきましたが、過去の経験を顧みるに、思わず閉口してしまうユーザ要求を受け付けることがありました。

(要求1)他社の成功事例を紹介してくれ。そのままマネすれば経営の成功確率が上がるハズ
(要求2)誰が見ても納得性が高くて適切と思われるKPIを設定してくれ
(要求3)経営者の要求はしょっちゅう変化する。普遍的で変化に耐え得るKPIを提案してくれ

筆者の返答は決まって次のようなものです。
(ただし、クライアントの機嫌を損ねないように、言い方や説明の順序には十分に配慮していますが)

(返答1)貴社の喫緊の経営課題や中長期の経営目標は決まっていますか? 貴社ならではの目標設定がなされないと、経営陣、従業員、そして社外のステークホルダーは納得しないと思いますよ。

(返答2)あくまでKPIは人が使うものです。有効に活用されるためには、使用目的や使用者の立場によってカスタマイズされる必要がありますよ。

(返答3)普遍的な業績管理指標はこの世には存在しません。全てのKPIは、その企業のビジネスモデルや経営戦略の変容に伴って、逆に適切に変化させるべきものです。できるだけBIシステムの改修コストを抑えられるようなデータ保持の形式に工夫することはできますが、永遠に不変なKPIを提案することは不可能です。

筆者のKPIへの思い、BI構築の流儀については、下記の過去投稿記事も併せてご覧ください。ここで、「先行指標」「結果指標」「BSC」「BI」など、経営管理手法やITシステム構築のコツについて言及してあります。

⇒「偏差値・満足度・就職率…経営「見える化」広がる 関学大や早大 各部署が改革目標共有 - KPIの見える化経営と使われないBIについて
⇒「Jクラブを格付け 浦和、経営力でV 効率や戦略で高得点14年時点 -企業経営評価をする際に気を付けるべきこと

 

■ 言うは易し、行うは難し。KPIマネジメントを上手に乗り切るコツとは?

筆者の思い出話ばかり書いてもしょうがないので、筆者ならではの「KPI経営」のコツとは何か? 4つにまとめてみました。

業績管理会計(入門編)_KPI マネジメント成功のコツとは

(1)分かりやすさ
最近よく目にする財務KPIで、「CCC:キャッシュ・コンバージョン・レート」というものがあります。これは、運転資金管理のためのKPIで、CCCという指標は、売上高の何日分のキャッシュ(運転資金)が企業内でくすぶっているか、この数字を小さくすると、企業でしかたなく滞留していたキャッシュを他のモノの購入に充てられたり、銀行への返済に回せますよ、ということを見える化するための指標です。

さらに、これが、
① 売上債権が売上高の何日分滞留しているか
② 在庫が売上高(時には売上原価)の何日分滞留しているか
② 仕入債務が売上高(時には売上原価)の何日分滞留しているか

に分解することができ、それぞれ、
① 債権回収チームへの目標設定
② 生産管理チームへの目標設定
③ 購買管理チームへの目標設定
に活用でき、しかも、全員の努力の結果が「CCC」という指標に合成され、チーム横断的に全体でどれだけ目標を達成したかもわかる優れものです。

こういうKPIの使い方をすることは、分かりやすさの追求という面でお勧めです。

(参考)
⇒「FY2015 トヨタ自動車 財務分析(3)CCC 財務分析テンプレート『9 Matrix Financial Analytics』より
⇒「花王、アジア資金効率改善 300億~400億円捻出、設備投資柔軟に
⇒「東芝、世界で資金効率化 4地域別にCFO 投資から回収を素早く

(2)適切性
→次章で詳しく。

(3)達成感
この目標を達成した時に担当者が得られる満足感を皆が共有するためには、2つの仕掛けが必要です。

① 時にはITシステムの力を借りて、「目標値」「実績値」「達成水準(予実差異)」が定量的に誰が見てもわかる状態になっていること

② 仮に目標を達成したら、達成度に応じて、人事評価、報酬制度、表彰制度などで、具体的な見返りが発生すること

「人事評価」:中長期的な人事考課に配慮されて、将来の昇格や人事考課で有利になる
「報酬制度」:KPI達成に比例した変動給やボーナス制度とリンクしている
「表彰制度」:KPI達成の労をねぎらうように、皆の前で褒めてもらえる

(4)継続的改善
通説としての「PDCA」サイクルに乗っかって、KPI改善プログラムが実践されている。おそらく、大体の企業で目標として掲げられるKPIというものは、業績評価期間(月、半年、1年、中計期間)にわたって、継続的に改善のための取り組みが営まれているはずです。全ての企業内チームが、1つか適切に整理された複数のKPIを常に目標に掲げて不断の努力をおこなうことが、最終的に企業業績の改善につながる、というわけです。

 

■ 適切なKPIを設定する時に大事にすべきこととは? ①ビジネスモデルを見極める!

それでは最後に、適切なKPIを設定するためのコツを説明します。それは、「ビジネスモデル上のボトルネックを解消することを促すようにKPIを設定すること」です。これだけでは分かりにくいですよね。では、もう少し抽象度を下げて説明していきます。

この図は、4種類のビジネスモデル(言い換えると「勝利の方程式」や「経営課題」の所在に自覚があるということ)毎に、適切なKPIを簡易的にマッピングしたチャートです。

業績管理会計(入門編)_KPIの適切な設定方法

<ビジネスモデル>
(1)装置産業:大型の先行投資で生産の構えを準備。年度別の会計業績としては、多額の減価償却費が固定費として損益を圧迫するので、固定費回収のために、生産設備の高い稼働率が求められる
(例:石油化学や鉄鋼業など、重厚長大産業で特にプロセス系生産業に多く見られる)

(2)イノベーション:世の中に無い新しい商品を世に送り出し、高い付加価値を付けて、結構お高めの値段設定でも顧客支持を集めて、それなりの利益を生み出す。その利益の大半は、次の新商品開発の原資に回ることも多い
(例:ジョブズ存命中の米アップル社など)

(3)コモディティ①:マーケットでの一般消費者からの認知度の低さが致命的で、陳列棚における競合他社品との選択に知名度の無さで競り負けている。しかし、商品の機能性は高く、生産・物流上のプロセスも整備されているので欠品ロスも少ない
(例:比較的社歴が若く、ブランド価値がそれほど大きくない企業)

(4)コモディティ②:商品企画からマーケティング活動までは卒なくこなし、誰でも知っているブランドで、適時に新商品も出しているが、店舗での販売が伸び悩んでいる。もしくは、ネット通販など、あらたな販売チャネル創造に出遅れ、販売力に課題がある
(例:比較的社歴が長く、ブランド価値が大きいものの、社内で新たなアイデアが採用されにくくなっている企業)

それぞれのタイプごとに、バリューチェーン上で大切にしたらいいのではないかと思われるKPIを設定しました。ビジネスモデルごとに異なる指標がマッピングされていたり、どの企業にも同じものが設定されていたりします。やはり、業種業態、市場における相対的位置や商品ライフサイクルに応じて、見るべきKPIは異なってきます。

 

■ 適切なKPIを設定する時に大事にすべきこととは? ②目標達成度と貢献度から1番を探す!

前章で掲載したチャートの縦軸は、「達成水準」を示しており、それぞれのバリューチェーン上の活動に設定されたKPIが最大限目標を達成した場合の水準を相対的に示したものです。例えば、装置産業の「新商品開発サイクル」は、80%程度の達成度で、「設備稼働率」の100%達成度と同じになると見ます。

横軸の幅は、各ビジネスモデルにおける全社目標と各バリューチェーン上のKPIの相対的関係を意味しています。例えば、装置産業の場合、全社目標が「営業利益」だとした場合、「設備稼働率」が100%の目標を到達したら、目標とする営業利益の50%は達成できるという各KPI間の重みづけを意味しています。

こうして、4つのビジネスモデルを見比べた場合、業種業態が異なれば見るべきKPIも変わり得ますし、同じ業態でも、有している企業固有の経営課題に応じて、注力すべきKPIも変わり得ることが分かります。それは、同じ企業であっても、外部環境が変化したり、目下の経営課題が解決されれば、見るべきKPIが変化し得ることも同時に意味します。

このチャート自体は、筆者オリジナルですが、実は参考にさせてもらったコンセプトが実在します。それは、ゴールドラット博士の「制約理論」です。あの「ザ・ゴール」で有名なものです。

「制約理論(TOC:theory of constraints)」では、スループットを大事にします。このチャートに掲載されている各社のKPIのハコが横に連なるパイプラインに見立てて、一番幅が小さい所がボトルネックになります。パイプラインは一番狭い所の流速を早くするか、そもそも幅を広げることで、パイプライン全体を流れる量(=企業利益)を最大化することができます。つまり、企業は、ボトルネックを解消することで、全社の生産性→利益を最大化することができるのです。それゆえ、ボトルネックに位置するバリューチェーン上の機能に課せられたKPIを最重要指標として、その100%達成を全社一丸となって目指すのです。これが、ベタですが、全社最適のKPI設定というものです。

あなたの会社のKPIは、きちんとボトルネックに設定されていますか?
そして、ボトルネックのKPI達成に経営リソースがきちんと割かれていますか?

業績管理会計(入門編)_KPI経営入門(1)適切で分かりやすいKPIを設定する - 経営目標への達成水準と貢献度から経営ボトルネックを探る!

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KPI経営入門(1)適切で分かりやすいKPIを設定する - 経営目標への達成水準と貢献度から経営ボトルネックを探る!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-e1428166718340.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-150x150.jpg小林 友昭業績管理会計(入門編)BI,BSC,Business Intelligence,CCC,KPI,TOC,イノベーション,キャッシュ・コンバージョン・レート,コモディティ,スループット,バリューチェーン,ビジネスモデル,ボトルネック,マネジメントコックピット,制約理論,装置産業■ 言うは易し、行うは難し。KPIマネジメントに対する誤解とは? 世の中には、「KPI経営」とか、「BSC(バランスト・スコアカード)経営」という言葉が流布し、業績管理指標を掲げて、目標管理による従業員への叱咤激励だけが経営管理と思い込んでいる企業があまりに多すぎるように思えます。筆者は、経営管理・管理会計領域の経営コンサルタントとして、多くの企業のKPI設定とその可視化(*)の取り組みを支援してきました。 (*)だいたいは、BI(Business Intelligence)ツールを導入し、マネジメントコックピットや経営管理レポートというデータ管理の仕組み作りまでお手伝いします。 そういう数々のプロジェクトで様々な業種・業態のクライアントの「KPI経営」のお手伝いをしてきましたが、過去の経験を顧みるに、思わず閉口してしまうユーザ要求を受け付けることがありました。 (要求1)他社の成功事例を紹介してくれ。そのままマネすれば経営の成功確率が上がるハズ (要求2)誰が見ても納得性が高くて適切と思われるKPIを設定してくれ (要求3)経営者の要求はしょっちゅう変化する。普遍的で変化に耐え得るKPIを提案してくれ 筆者の返答は決まって次のようなものです。 (ただし、クライアントの機嫌を損ねないように、言い方や説明の順序には十分に配慮していますが) (返答1)貴社の喫緊の経営課題や中長期の経営目標は決まっていますか? 貴社ならではの目標設定がなされないと、経営陣、従業員、そして社外のステークホルダーは納得しないと思いますよ。 (返答2)あくまでKPIは人が使うものです。有効に活用されるためには、使用目的や使用者の立場によってカスタマイズされる必要がありますよ。 (返答3)普遍的な業績管理指標はこの世には存在しません。全てのKPIは、その企業のビジネスモデルや経営戦略の変容に伴って、逆に適切に変化させるべきものです。できるだけBIシステムの改修コストを抑えられるようなデータ保持の形式に工夫することはできますが、永遠に不変なKPIを提案することは不可能です。 筆者のKPIへの思い、BI構築の流儀については、下記の過去投稿記事も併せてご覧ください。ここで、「先行指標」「結果指標」「BSC」「BI」など、経営管理手法やITシステム構築のコツについて言及してあります。 ⇒「偏差値・満足度・就職率…経営「見える化」広がる 関学大や早大 各部署が改革目標共有 - KPIの見える化経営と使われないBIについて」 ⇒「Jクラブを格付け 浦和、経営力でV 効率や戦略で高得点14年時点 -企業経営評価をする際に気を付けるべきこと」   ■ 言うは易し、行うは難し。KPIマネジメントを上手に乗り切るコツとは? 筆者の思い出話ばかり書いてもしょうがないので、筆者ならではの「KPI経営」のコツとは何か? 4つにまとめてみました。 (1)分かりやすさ 最近よく目にする財務KPIで、「CCC:キャッシュ・コンバージョン・レート」というものがあります。これは、運転資金管理のためのKPIで、CCCという指標は、売上高の何日分のキャッシュ(運転資金)が企業内でくすぶっているか、この数字を小さくすると、企業でしかたなく滞留していたキャッシュを他のモノの購入に充てられたり、銀行への返済に回せますよ、ということを見える化するための指標です。 さらに、これが、 ① 売上債権が売上高の何日分滞留しているか ② 在庫が売上高(時には売上原価)の何日分滞留しているか ② 仕入債務が売上高(時には売上原価)の何日分滞留しているか に分解することができ、それぞれ、 ① 債権回収チームへの目標設定 ② 生産管理チームへの目標設定 ③ 購買管理チームへの目標設定 に活用でき、しかも、全員の努力の結果が「CCC」という指標に合成され、チーム横断的に全体でどれだけ目標を達成したかもわかる優れものです。 こういうKPIの使い方をすることは、分かりやすさの追求という面でお勧めです。 (参考) ⇒「FY2015 トヨタ自動車 財務分析(3)CCC 財務分析テンプレート『9 Matrix Financial Analytics』より」 ⇒「花王、アジア資金効率改善 300億~400億円捻出、設備投資柔軟に」 ⇒「東芝、世界で資金効率化 4地域別にCFO 投資から回収を素早く」 (2)適切性 →次章で詳しく。 (3)達成感 この目標を達成した時に担当者が得られる満足感を皆が共有するためには、2つの仕掛けが必要です。 ① 時にはITシステムの力を借りて、「目標値」「実績値」「達成水準(予実差異)」が定量的に誰が見てもわかる状態になっていること ② 仮に目標を達成したら、達成度に応じて、人事評価、報酬制度、表彰制度などで、具体的な見返りが発生すること 「人事評価」:中長期的な人事考課に配慮されて、将来の昇格や人事考課で有利になる 「報酬制度」:KPI達成に比例した変動給やボーナス制度とリンクしている 「表彰制度」:KPI達成の労をねぎらうように、皆の前で褒めてもらえる (4)継続的改善 通説としての「PDCA」サイクルに乗っかって、KPI改善プログラムが実践されている。おそらく、大体の企業で目標として掲げられるKPIというものは、業績評価期間(月、半年、1年、中計期間)にわたって、継続的に改善のための取り組みが営まれているはずです。全ての企業内チームが、1つか適切に整理された複数のKPIを常に目標に掲げて不断の努力をおこなうことが、最終的に企業業績の改善につながる、というわけです。   ■ 適切なKPIを設定する時に大事にすべきこととは? ①ビジネスモデルを見極める! それでは最後に、適切なKPIを設定するためのコツを説明します。それは、「ビジネスモデル上のボトルネックを解消することを促すようにKPIを設定すること」です。これだけでは分かりにくいですよね。では、もう少し抽象度を下げて説明していきます。 この図は、4種類のビジネスモデル(言い換えると「勝利の方程式」や「経営課題」の所在に自覚があるということ)毎に、適切なKPIを簡易的にマッピングしたチャートです。 <ビジネスモデル> (1)装置産業:大型の先行投資で生産の構えを準備。年度別の会計業績としては、多額の減価償却費が固定費として損益を圧迫するので、固定費回収のために、生産設備の高い稼働率が求められる (例:石油化学や鉄鋼業など、重厚長大産業で特にプロセス系生産業に多く見られる) (2)イノベーション:世の中に無い新しい商品を世に送り出し、高い付加価値を付けて、結構お高めの値段設定でも顧客支持を集めて、それなりの利益を生み出す。その利益の大半は、次の新商品開発の原資に回ることも多い (例:ジョブズ存命中の米アップル社など) (3)コモディティ①:マーケットでの一般消費者からの認知度の低さが致命的で、陳列棚における競合他社品との選択に知名度の無さで競り負けている。しかし、商品の機能性は高く、生産・物流上のプロセスも整備されているので欠品ロスも少ない (例:比較的社歴が若く、ブランド価値がそれほど大きくない企業) (4)コモディティ②:商品企画からマーケティング活動までは卒なくこなし、誰でも知っているブランドで、適時に新商品も出しているが、店舗での販売が伸び悩んでいる。もしくは、ネット通販など、あらたな販売チャネル創造に出遅れ、販売力に課題がある (例:比較的社歴が長く、ブランド価値が大きいものの、社内で新たなアイデアが採用されにくくなっている企業) それぞれのタイプごとに、バリューチェーン上で大切にしたらいいのではないかと思われるKPIを設定しました。ビジネスモデルごとに異なる指標がマッピングされていたり、どの企業にも同じものが設定されていたりします。やはり、業種業態、市場における相対的位置や商品ライフサイクルに応じて、見るべきKPIは異なってきます。   ■ 適切なKPIを設定する時に大事にすべきこととは? ②目標達成度と貢献度から1番を探す! 前章で掲載したチャートの縦軸は、「達成水準」を示しており、それぞれのバリューチェーン上の活動に設定されたKPIが最大限目標を達成した場合の水準を相対的に示したものです。例えば、装置産業の「新商品開発サイクル」は、80%程度の達成度で、「設備稼働率」の100%達成度と同じになると見ます。 横軸の幅は、各ビジネスモデルにおける全社目標と各バリューチェーン上のKPIの相対的関係を意味しています。例えば、装置産業の場合、全社目標が「営業利益」だとした場合、「設備稼働率」が100%の目標を到達したら、目標とする営業利益の50%は達成できるという各KPI間の重みづけを意味しています。 こうして、4つのビジネスモデルを見比べた場合、業種業態が異なれば見るべきKPIも変わり得ますし、同じ業態でも、有している企業固有の経営課題に応じて、注力すべきKPIも変わり得ることが分かります。それは、同じ企業であっても、外部環境が変化したり、目下の経営課題が解決されれば、見るべきKPIが変化し得ることも同時に意味します。 このチャート自体は、筆者オリジナルですが、実は参考にさせてもらったコンセプトが実在します。それは、ゴールドラット博士の「制約理論」です。あの「ザ・ゴール」で有名なものです。 「制約理論(TOC:theory of constraints)」では、スループットを大事にします。このチャートに掲載されている各社のKPIのハコが横に連なるパイプラインに見立てて、一番幅が小さい所がボトルネックになります。パイプラインは一番狭い所の流速を早くするか、そもそも幅を広げることで、パイプライン全体を流れる量(=企業利益)を最大化することができます。つまり、企業は、ボトルネックを解消することで、全社の生産性→利益を最大化することができるのです。それゆえ、ボトルネックに位置するバリューチェーン上の機能に課せられたKPIを最重要指標として、その100%達成を全社一丸となって目指すのです。これが、ベタですが、全社最適のKPI設定というものです。 あなたの会社のKPIは、きちんとボトルネックに設定されていますか? そして、ボトルネックのKPI達成に経営リソースがきちんと割かれていますか?現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します