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■ 人工知能が東大を合格する日

経営管理会計トピック

前回」に引き続いて、「東大の入学試験を人工知能(AI)に解かせてみよう!」というお話です。

2015/9/18|日本経済新聞|朝刊 (真相深層)中国も「東大合格ロボ」開発 人工知能研究の世界競争激化 米先行、日本は官民連携を

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「人間の知能の働きをコンピュータで実現する人工知能(AI)の開発競争が激化してきた。東大合格をめざす日本のAI開発計画にならい、中国も「難関大合格ロボ」の開発に乗り出したことが分かった。先行する米国、追い上げる中国のはざまで日本は大丈夫か。」

前回は、標題にもある「世界競争激化」「官民連携」についてのコメントでした。今回は、「東大合格ロボ」そのものを採り上げます。というわけで、日本経済新聞の過去記事から。

2014/11/3|日本経済新聞|朝刊 人工知能、偏差値アップ センター模試「東大は無理」 国立情報学研

「国立情報学研究所などの研究チームは2日、開発した人工知能「東ロボくん」で大学入試センター試験の模擬試験を解くプロジェクトの結果を発表した。昨年より偏差値は上がり、受験生の平均点に近づいた。研究チームによると、全国の私立大学では約6割強の学部に合格できるものの、東大合格は無理だという。」

ここ国立情報学研究所(NII)で、プロジェクトディレクターとして研究を率いているのが、前回登場された、新井紀子教授。一橋大学法学部を卒業後、イリノイ大学数学科博士課程修了といった異色の経歴のお方。

新井紀子教授_日本経済新聞朝刊_20150918

(2015/9/18記事添付の新井教授の写真)

教授のインタビュー記事が下記サイトに掲載れています。
「人工知能で東大合格をめざす 新井紀子さん(52)」
http://www.yomiuri.co.jp/life/special/tatsujin/20150729-OYT8T50079.html

以下は、このサイト記事から引用・サマリで、簡単に、新井教授の研究内容をざっと見ていきたいと思います。

ズバリ、「人工知能(AI)が東大を合格する日は来るのか?」
教授によれば、答えは「Yes」。ただし、その前に社会に大きな変革がもたらされるとのこと。
その前に、そもそも人工知能(AI)関連の技術の進展についても、お話ししていきたいと思います。

 

■ 今の人工知能ができること

現在流行の人工知能(AI)ができることは、「分類問題」。分類問題とは、『写真に写っている物は何ですか』という問いに対し、『イヌとタヌキとビルが写っています』と答えること。この能力を飛躍的に伸ばしたのが、「機械学習」と「ビックデータ」。

「機械学習」とは、与えられた課題の正解を見つけ出すため、コンピュータ自身が学習していくプログラムのこと。現在の「機械学習」は、物事の原因と結果を示す因果関係(論理)ではなく、データのばらつきや集まり方などから関係性を推定する相関関係(統計・確率)で判断するように変化しました。その結果、問題解決の守備範囲は格段に広がったというわけです。そしてもうひとつの変化は、「最適化」。コンピュータの計算速度が上がったために、答えがその場でリアルタイムに、つまりコンマ何秒で出せるようになり、何度も再計算を繰り返して、確率論的に最適な答えを導き出すということです。そして、そのデータを取り出して何回も計算する対象は、そう、「ビックデータ」ということになります。

こうした「機械学習」の技術の実用化面として、「自動走行車をはじめ、電子カルテを使った自動診断、コールセンターに電話をかけてきた顧客の質問の自動分類、AP通信社が採用した経済記事の自動生成、ゲーム理論を基にした株式のアルゴリズム取引」において、AIを使ったビジネスチャンスが広がってきたというわけです。

しかし、現在の技術では「人工知能(AI)」に、高度な「自然言語」処理能力はまだ無理とのこと。いわゆる「フレーム」問題。例えば、スマートフォンの質問応答システム「Siri」や「しゃべってコンシェル」は、『近所においしいレストランない?』『電車の乗り換えは何分?』といった限定的な自然言語の理解を『分類問題』として実行しているだけなのです。つまり、人工知能(AI)が自然言語の意味を真に理解しているわけではないのです。

こうした、携帯などの質問応答システムは、ある質問が来たら、こう答えるのが統計的に確からしいという答えを膨大なデータから見つけ、返す仕組みについては、新井教授の著作に詳しく記述されています。

コンピュータが仕事を奪う

■ 世界の人工知能の研究の方向性

日本では「官民力を合わせて」というと、何かきれいごとのように聞こえますが、当然、研究には目的があります。

人工知能の研究で世界をリードしている米国の現況について解説してもらうと、

「グーグルとかアマゾンなどの業態は基本的にビッグデータが集まってくる企業なんですね。つまり、何かをアップロードするとかメールを書くとかといった無料のサービスを提供していますから、同じようなタイプのデータがどんどん集まるという仕組みを持っている。それをうまく活用できるよう、人工知能的な要素技術を求めるというのは、当たり前のことですよね」

そして日本との違いを説明してもらうと、

「米国ではドラえもんやアトムを作ろういうニュアンスはなくて、もっとフィージビリティ(実現可能性)を考えているし、使いどころを考えているんですね。(中略)また、皆さんご存じの自動掃除機ルンバの会社(アイロボット社)は元々、地雷除去ロボットを開発した会社だったわけです。それで、ほかの使い道はどうしますかと言ったときにヒューマノイド(人間型ロボット)にしようとは全然思わなかった。あれだけのロボットを作った会社が、この技術の出口は掃除機だと考えた。それがアメリカ人の冷静さで、ヒューマノイドにしたい日本とはギャップがあると思います」

米国は、ペッパー君みたいに、決してヒューマノイドを目指しているのではないということです。

(「機械との競争」=日経BP社)

機械との競争

■ 東ロボくんが練る「大学入試の傾向と対策」とは?

「東ロボくんの成績(総合7科目)は、偏差値50が今年視野に入っています。偏差値60はやや厳しいですが、もしそうなると大きな話です。仮に60まで行くと、東京オリンピックの後には大不況が起きるんじゃないかと」

では、その解答テクニックとは?

近著「ロボットは東大に入れるか」(イースト・プレス)によると、

ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)

「現代文の「傍線部問題」で、「本文の先頭から傍線部を含む段落」までを東ロボくんに取り出させ、正解がひとつ含まれる「選択肢」の各文章と比較させる。そのうえで本文と一致する文字数が最も多い選択肢を東ロボくんに正解として選ばせる解答方法」

「古文については、すでに存在している古文の語句解析辞書に加え、主要な古文をほぼ網羅した全集を使う。この全集には古文の現代訳も収録されており、これらをコンピュータに参照させ、問題文と比較しながら解いている」

つまり、膨大なデータ処理を高速スピードで、確率論的に解かせているというわけ。真に日本語を理解しているとは到底言えないわけです。

しかし、このようなアプローチで自然言語データを処理している「人工知能(AI)」であったとしても、処理能力が向上(ここでは偏差値60)すると、やがてホワイトカラーの仕事を奪うことになると警鐘を鳴らされています。その理由を次章で。

 

■ 人工知能がもたらす大失業時代のリスクはどれくらい?

新井教授によりますと、
「このプロジェクトが終わる2021年度までに東ロボくんの偏差値が60になると、その後たかだが10年でホワイトカラーの半分が代替されることを意味します。シナリオは二つだと思います。ひとつは、論旨要約や正誤判定ができるような新しい人工知能を積極的に導入し、不要になった人材を切り、生産性を上げていくこと。もうひとつは、法律上レイオフが簡単にできないからという理由でこうしたテクノロジーを敬遠し、その結果、生産性が上がらず、国際競争力をさらに失うというシナリオ。前者はレイオフという直接的な形で、後者は景気後退という間接的な形で、大不況が起こる可能性があると思います」

ここで3つの考察ポイントを。

(1)人工知能は、また社会的な問題解決能力は無い
グーグルの自動走行車なども最近マスコミを賑にぎわせているが、これが実現しても、バスやタクシー、トラック、鉄道の運転手などは失職しないだろうと思われます。というのも、「事故が起きた時、人工知能は責任を取れるのか」という問題があるからです。いくら、
人間の脳の神経ネットワークを模した機械学習を可能にするニューラルネットワークで(コンピュータが勝手に)学習した結果、人が死にましたという時、『どうしたらいいか?』『誰の責任ですか?』と聞かれても人工知能には答えは分からないのです。

(2)統計や確率を基盤とした機械学習は、原因と結果の関係が分からない
「裁判の判例調査や医療の診断の支援はできるでしょう。しかし、最後の判断は人間がやることになるのだと思います。翻訳なども完全な自動にはならなくて、翻訳支援システムになるでしょう。数学は定理証明支援システム、運転は運転支援システムなどと、『支援』というのがやたら出てきます。工場などもそうじゃないですか。ものすごく広い工場に2人しかいないとか。それでも無人にはならない。それと同じことが霞が関や大手町のビルでも起きるわけです」

(3)パーソナルビジネスの進展に人工知能は寄与する
「人工知能は支援をいっぱいしてくれるので、小さな会社がいっぱい出てくるんじゃないでしょうか。これまでは1億円稼がないと会社として成立しなかったですが、これからは1000万円とか2000万円を稼ぐ『小商い』みたいな会社が増えてくると思うんですね。『小商い』とは、お掃除コンサルティングとか、片づけコンサルティングとか、終末期コンサルティングみたいなもの。だって、これまでの会社が構えて来たオフィスはもういらない。スカイプはあるし、オンライン決済システムもあるから。オフィスも会計の人もいらない。予約システムも会社のウェブもだいたい無料で作ることができますしね」

新井教授のお話をかなり乱暴に要約すると、
① クリエイティブな仕事は残るが、それ以外のマニュアル仕事は人工知能に代替される
② 人工知能を支援機能として使いこなす、最終的な人間の判断仕事は残る
という感じです。

いろいろと、人工知能(AI)に対する幻想を打ち砕く、という流れのインタビュー記事だったのですが、やはり、最後はホワイトカラー受難の時代が来ることを予想されています。

現在の「東ロボくん」が大した自然言語処理をやっていないことが分かりましたが、それでも、偏差値50で全国私大の6割には合格できること、そしてこのまま偏差値60までいけば、ホワイトカラー受難の時代が来ること、を説明されて、違うことが問題(?)重大な課題だと気付きました。

それは、
① 東ロボくんが合格できてしまう入試問題で学生を選別している教育に本当に意味があるのか?
② 東ロボくんの偏差値60程度への進化の程度で失職の恐れがあるホワイトカラーの仕事に何の意味があるのか?

人工知能の研究には、新しいテクロロジーによるビジネスチャンスも待っていますが、「雇用」「教育」に代表される「社会構造」や「人の生き方」に対する問題を鋭く突き付けているものと感じています。まあ、個人的な趣味と、淘汰されるかもしれないホワイトカラーの一人として、今後も「人工知能(AI)」の動向を、ウォッチしていきたいと思います。



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(真相深層)中国も「東大合格ロボ」開発  人工知能研究の世界競争激化 米先行、日本は官民連携を(2)http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジー人工知能,AI,ビックデータ,NII,新井紀子,機械学習■ 人工知能が東大を合格する日 「前回」に引き続いて、「東大の入学試験を人工知能(AI)に解かせてみよう!」というお話です。 2015/9/18|日本経済新聞|朝刊 (真相深層)中国も「東大合格ロボ」開発 人工知能研究の世界競争激化 米先行、日本は官民連携を (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「人間の知能の働きをコンピュータで実現する人工知能(AI)の開発競争が激化してきた。東大合格をめざす日本のAI開発計画にならい、中国も「難関大合格ロボ」の開発に乗り出したことが分かった。先行する米国、追い上げる中国のはざまで日本は大丈夫か。」 前回は、標題にもある「世界競争激化」「官民連携」についてのコメントでした。今回は、「東大合格ロボ」そのものを採り上げます。というわけで、日本経済新聞の過去記事から。 2014/11/3|日本経済新聞|朝刊 人工知能、偏差値アップ センター模試「東大は無理」 国立情報学研 「国立情報学研究所などの研究チームは2日、開発した人工知能「東ロボくん」で大学入試センター試験の模擬試験を解くプロジェクトの結果を発表した。昨年より偏差値は上がり、受験生の平均点に近づいた。研究チームによると、全国の私立大学では約6割強の学部に合格できるものの、東大合格は無理だという。」 ここ国立情報学研究所(NII)で、プロジェクトディレクターとして研究を率いているのが、前回登場された、新井紀子教授。一橋大学法学部を卒業後、イリノイ大学数学科博士課程修了といった異色の経歴のお方。 (2015/9/18記事添付の新井教授の写真) 教授のインタビュー記事が下記サイトに掲載れています。 「人工知能で東大合格をめざす 新井紀子さん(52)」 (http://www.yomiuri.co.jp/life/special/tatsujin/20150729-OYT8T50079.html) 以下は、このサイト記事から引用・サマリで、簡単に、新井教授の研究内容をざっと見ていきたいと思います。 ズバリ、「人工知能(AI)が東大を合格する日は来るのか?」 教授によれば、答えは「Yes」。ただし、その前に社会に大きな変革がもたらされるとのこと。 その前に、そもそも人工知能(AI)関連の技術の進展についても、お話ししていきたいと思います。   ■ 今の人工知能ができること 現在流行の人工知能(AI)ができることは、「分類問題」。分類問題とは、『写真に写っている物は何ですか』という問いに対し、『イヌとタヌキとビルが写っています』と答えること。この能力を飛躍的に伸ばしたのが、「機械学習」と「ビックデータ」。 「機械学習」とは、与えられた課題の正解を見つけ出すため、コンピュータ自身が学習していくプログラムのこと。現在の「機械学習」は、物事の原因と結果を示す因果関係(論理)ではなく、データのばらつきや集まり方などから関係性を推定する相関関係(統計・確率)で判断するように変化しました。その結果、問題解決の守備範囲は格段に広がったというわけです。そしてもうひとつの変化は、「最適化」。コンピュータの計算速度が上がったために、答えがその場でリアルタイムに、つまりコンマ何秒で出せるようになり、何度も再計算を繰り返して、確率論的に最適な答えを導き出すということです。そして、そのデータを取り出して何回も計算する対象は、そう、「ビックデータ」ということになります。 こうした「機械学習」の技術の実用化面として、「自動走行車をはじめ、電子カルテを使った自動診断、コールセンターに電話をかけてきた顧客の質問の自動分類、AP通信社が採用した経済記事の自動生成、ゲーム理論を基にした株式のアルゴリズム取引」において、AIを使ったビジネスチャンスが広がってきたというわけです。 しかし、現在の技術では「人工知能(AI)」に、高度な「自然言語」処理能力はまだ無理とのこと。いわゆる「フレーム」問題。例えば、スマートフォンの質問応答システム「Siri」や「しゃべってコンシェル」は、『近所においしいレストランない?』『電車の乗り換えは何分?』といった限定的な自然言語の理解を『分類問題』として実行しているだけなのです。つまり、人工知能(AI)が自然言語の意味を真に理解しているわけではないのです。 こうした、携帯などの質問応答システムは、ある質問が来たら、こう答えるのが統計的に確からしいという答えを膨大なデータから見つけ、返す仕組みについては、新井教授の著作に詳しく記述されています。 コンピュータが仕事を奪う ■ 世界の人工知能の研究の方向性 日本では「官民力を合わせて」というと、何かきれいごとのように聞こえますが、当然、研究には目的があります。 人工知能の研究で世界をリードしている米国の現況について解説してもらうと、 「グーグルとかアマゾンなどの業態は基本的にビッグデータが集まってくる企業なんですね。つまり、何かをアップロードするとかメールを書くとかといった無料のサービスを提供していますから、同じようなタイプのデータがどんどん集まるという仕組みを持っている。それをうまく活用できるよう、人工知能的な要素技術を求めるというのは、当たり前のことですよね」 そして日本との違いを説明してもらうと、 「米国ではドラえもんやアトムを作ろういうニュアンスはなくて、もっとフィージビリティ(実現可能性)を考えているし、使いどころを考えているんですね。(中略)また、皆さんご存じの自動掃除機ルンバの会社(アイロボット社)は元々、地雷除去ロボットを開発した会社だったわけです。それで、ほかの使い道はどうしますかと言ったときにヒューマノイド(人間型ロボット)にしようとは全然思わなかった。あれだけのロボットを作った会社が、この技術の出口は掃除機だと考えた。それがアメリカ人の冷静さで、ヒューマノイドにしたい日本とはギャップがあると思います」 米国は、ペッパー君みたいに、決してヒューマノイドを目指しているのではないということです。 (「機械との競争」=日経BP社) 機械との競争 ■ 東ロボくんが練る「大学入試の傾向と対策」とは? 「東ロボくんの成績(総合7科目)は、偏差値50が今年視野に入っています。偏差値60はやや厳しいですが、もしそうなると大きな話です。仮に60まで行くと、東京オリンピックの後には大不況が起きるんじゃないかと」 では、その解答テクニックとは? 近著「ロボットは東大に入れるか」(イースト・プレス)によると、 ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ) 「現代文の「傍線部問題」で、「本文の先頭から傍線部を含む段落」までを東ロボくんに取り出させ、正解がひとつ含まれる「選択肢」の各文章と比較させる。そのうえで本文と一致する文字数が最も多い選択肢を東ロボくんに正解として選ばせる解答方法」 「古文については、すでに存在している古文の語句解析辞書に加え、主要な古文をほぼ網羅した全集を使う。この全集には古文の現代訳も収録されており、これらをコンピュータに参照させ、問題文と比較しながら解いている」 つまり、膨大なデータ処理を高速スピードで、確率論的に解かせているというわけ。真に日本語を理解しているとは到底言えないわけです。 しかし、このようなアプローチで自然言語データを処理している「人工知能(AI)」であったとしても、処理能力が向上(ここでは偏差値60)すると、やがてホワイトカラーの仕事を奪うことになると警鐘を鳴らされています。その理由を次章で。   ■ 人工知能がもたらす大失業時代のリスクはどれくらい? 新井教授によりますと、 「このプロジェクトが終わる2021年度までに東ロボくんの偏差値が60になると、その後たかだが10年でホワイトカラーの半分が代替されることを意味します。シナリオは二つだと思います。ひとつは、論旨要約や正誤判定ができるような新しい人工知能を積極的に導入し、不要になった人材を切り、生産性を上げていくこと。もうひとつは、法律上レイオフが簡単にできないからという理由でこうしたテクノロジーを敬遠し、その結果、生産性が上がらず、国際競争力をさらに失うというシナリオ。前者はレイオフという直接的な形で、後者は景気後退という間接的な形で、大不況が起こる可能性があると思います」 ここで3つの考察ポイントを。 (1)人工知能は、また社会的な問題解決能力は無い グーグルの自動走行車なども最近マスコミを賑にぎわせているが、これが実現しても、バスやタクシー、トラック、鉄道の運転手などは失職しないだろうと思われます。というのも、「事故が起きた時、人工知能は責任を取れるのか」という問題があるからです。いくら、 人間の脳の神経ネットワークを模した機械学習を可能にするニューラルネットワークで(コンピュータが勝手に)学習した結果、人が死にましたという時、『どうしたらいいか?』『誰の責任ですか?』と聞かれても人工知能には答えは分からないのです。 (2)統計や確率を基盤とした機械学習は、原因と結果の関係が分からない 「裁判の判例調査や医療の診断の支援はできるでしょう。しかし、最後の判断は人間がやることになるのだと思います。翻訳なども完全な自動にはならなくて、翻訳支援システムになるでしょう。数学は定理証明支援システム、運転は運転支援システムなどと、『支援』というのがやたら出てきます。工場などもそうじゃないですか。ものすごく広い工場に2人しかいないとか。それでも無人にはならない。それと同じことが霞が関や大手町のビルでも起きるわけです」 (3)パーソナルビジネスの進展に人工知能は寄与する 「人工知能は支援をいっぱいしてくれるので、小さな会社がいっぱい出てくるんじゃないでしょうか。これまでは1億円稼がないと会社として成立しなかったですが、これからは1000万円とか2000万円を稼ぐ『小商い』みたいな会社が増えてくると思うんですね。『小商い』とは、お掃除コンサルティングとか、片づけコンサルティングとか、終末期コンサルティングみたいなもの。だって、これまでの会社が構えて来たオフィスはもういらない。スカイプはあるし、オンライン決済システムもあるから。オフィスも会計の人もいらない。予約システムも会社のウェブもだいたい無料で作ることができますしね」 新井教授のお話をかなり乱暴に要約すると、 ① クリエイティブな仕事は残るが、それ以外のマニュアル仕事は人工知能に代替される ② 人工知能を支援機能として使いこなす、最終的な人間の判断仕事は残る という感じです。 いろいろと、人工知能(AI)に対する幻想を打ち砕く、という流れのインタビュー記事だったのですが、やはり、最後はホワイトカラー受難の時代が来ることを予想されています。 現在の「東ロボくん」が大した自然言語処理をやっていないことが分かりましたが、それでも、偏差値50で全国私大の6割には合格できること、そしてこのまま偏差値60までいけば、ホワイトカラー受難の時代が来ること、を説明されて、違うことが問題(?)重大な課題だと気付きました。 それは、 ① 東ロボくんが合格できてしまう入試問題で学生を選別している教育に本当に意味があるのか? ② 東ロボくんの偏差値60程度への進化の程度で失職の恐れがあるホワイトカラーの仕事に何の意味があるのか? 人工知能の研究には、新しいテクロロジーによるビジネスチャンスも待っていますが、「雇用」「教育」に代表される「社会構造」や「人の生き方」に対する問題を鋭く突き付けているものと感じています。まあ、個人的な趣味と、淘汰されるかもしれないホワイトカラーの一人として、今後も「人工知能(AI)」の動向を、ウォッチしていきたいと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します