■ 内面の悩みは、誰かに打ち明けるためのもの
「最近ウツっぽいんです」
「忙しくて休みが取れないんです」
内面の悩みに見える言葉も、
すべて対人関係の問題に起因している。
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「もう年で若い人には勝てません……」という一見悩みを吐露しているかのように聞こえるセリフは、実は個人の内面の悩みではないのです。そう言いながら、片一方の頭の中では、「年の割には結構頑張っているでしょ!」というアピールしたいという気持ちがあるのです。
「最近ウツっぽくて……」というセリフも、額面通りに受け取ってはいけません。「ウツ」になりそうなほどに、繊細でナイーブな自分、へとへとになるほど、周りから要求されて仕事が忙しいアピールに過ぎないのです。
このように、一見すると内面の悩みを吐露しているように見受けられる言葉も、全てそこには耳を傾けてくれる「相手」がいることを意識し、「相手」に対して自らの優位性をアピールする、という「目的」から発せられた言葉なのです。つまり、「使用の心理学」なのです。
私たちの言動や感情には、すべて「相手」がいて、「目的」があります。前回述べた仙人のエピソードに見られるように、観客に向けて発せられた言葉に過ぎないのです。それほどまでに、対人関係が大切な私たちなので、あらゆる悩みは対人関係に帰結する、ということができるのです。
体調が悪いことや、神経症に冒されていることもまた、対人関係上の問題となります。病気になる事で特別な存在となり、相手への優越をアピールできるからです。そのために病にかかることは、人にとって必要なことなのです。
もちろん、健康を害すること、全ての病の原因が、周りの気を惹くための仮病だと言っているわけではありません。物理的に、羅病は大変な問題です。ここで言及しているのは、そのことを悩みとして、相手に訴えること、その行為が、相手への優越を得るための行動である、といっているだけです。誤解なきよう。
卑近な例で言えば、皆さんも幼少の頃、熱を出して、母親や家族に大切に看病されて、うれしい気持ちになったことはありませんか? もう熱が下がっているのに、もう一日、学校に登校せずに、お家で布団に横になって、付きっきりで看病してくれる母親に甘えたり、、、
そういう類の話を、アドラーは大人も自然にやっているでしょ、と指摘しているのです。
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