■ 野菜販売からレストランまで 地元信頼No.1 奇跡の不動産会社の全貌
お客の要望に応える大網白里市の不動産屋さん。お客の声で「ここで野菜が買えると嬉しいよね」。その言葉で野菜の販売を始めた。さらに、お客様が食べたいと要望すると、野菜ランチバイキングがメインのレストランまでも始めた。
従業員は50人、売上高4億4500万円のいわゆる街の不動産屋さん。業務の一つが賃貸物件の紹介。その他、住宅を販売するだけでなく、建築の請負、持ち主がいない土地の管理なども行っている。この日も本社社屋で音楽イベントを行っていた。
「どの不動産会社も販売促進としてイベントをするが、あれって、なんとなく嘘くさい。結局、売るためにやっている、とか、買わせるんだろう、とか、でも大里はそれが目的ではない。」
地域の住民からの声。「地域貢献では千葉県で一番」いったいどういう意味?
社員たちの一日を追ってみる。朝6時半、大網駅の交通誘導を始めた。大網駅の通勤通学の車の往来のために、バスが定時運行できずに困っているという利用客の声から、社員たちが自主的に始めたものだ。さらに1時間がたった朝7時半、白里海岸で、住民と一緒にゴミ拾いを始める。そして朝8時半、交通整理や海岸清掃を終えた社員が出社し、ようやくここから業務が始まる。
ところが業務が始まったオフィスに赤ちゃん。大里は子連れ出勤OK。そして午前10時になると、会社の至る所であらゆる催し物が始まる。不動産業に無関係に地域住民が社屋に出入りしている。従業員の働いている時間について、新人は、本業と地域活動が5:5、ベテランでも7:3の割合だという。地域活動(学童保育、カルチャー教室、清掃など)は、全部で283種類を手掛けている。社員の中には、不動産業がやりたくてではなく、ボランティア活動の延長線上で入社した人まで、、、
■ 地域活動だらけの不動産会社 それでも40年間黒字経営
こうした地域活動は本業には関係ないと野老は言うが、お客さんの声として、
「地域の活性化の活動をすごくしている会社だと感じて、家もお願いしよう、と家族で話した」
「この人になら、土地を預けていても大丈夫。ここで買えば、ずっと面倒を見てもらえる。奥深い安心が、地域活動を見ていくうちに出てきた。」
この圧倒的信頼感で経営も40年間黒字続き。
「(地域活動を283種類もやっていると)こうなりたいと思ってやってきたわけではない。一つ一つ目の前の課題に、やれることはないか、と取り組んだだけ。みんなに珍しがられますが、“特別なこと”をしているとは思わない。」
「特別従業員のお給料が高いわけでもない。私もそんなに高い年収ではない。生活していければいいじゃないですか。」
村上氏が尋ねる。「社員の方はどういったモチベーションで働いているのか?」
「私は、社長として、トップダウンで伝えられる。社員は、嫌だな、と思っていても、社長から言われたから、会社のルールだから、と、一度は受け止めないといけないことが、実際には、その人の「嫌だ」のままになっていない。」
「例えば、新入社員の場合、不動産の仕事で「ありがとう」をもらうまでには何年もかかってしまうが、地域活動をしていると、その日からゴミ拾いなどで地域の人から「ありがとう」をもらえる。仕事の本質は「ありがとう」をもらうことで、そこにお金が伴うこと。社員は「ありがとう」を最初に体験することで、心地良さや意義を感じ、きちんと仕事をするようになる。そのために地域活動をやっているわけではないが、結果的に社員教育になっている。」
村上氏が確認する。「大里ではどうして子連れ出勤がOKなのか?」
「それしかもう方法が無いから。本当は、(子供が熱を出したら)会社を休んで自宅で子供の世話をできれば一番いいに決まっている。しかし、中小企業・零細企業は、その社員に頼らないと仕事が成立しないときもあって、その時は子育てしながら働いてくれている。子供が病気になっても“やんなきゃいけない仕事”がある。その時に働ける選択肢を用意すれば仕事をやってもらえる。」
村上氏が難しい質問をする。「大里には絶対ダメという(タイプの)人はいますか?」
「ボランティアばっかりやる人は逆にダメなんです。小さな会社で、地域貢献を成り立たせるためには、右手に理想は持っている、左手にはマネジメント。このバランスを持っていることが大事。」
■ なぜ気づけなかったのか・・・ 運命を考えた悲劇の真相
地域活動に信じられない打ち込む不動産屋さん。そこには悲痛な経験が。大里の方向性を大きく変えた出来事とは?
この日、管理している土地の草刈大会が始まった。この「土地管理」こそ、大里のビジネスの根幹となっている。土地管理代行は地域TOPの8400件。何もしないと、草が伸び放題になり、ゴミが不法投棄され、近隣トラブルを招きかねない。だから大里は、年に2回、草刈り・見回りを行い、管理費1万5000円(50坪)。刈り上がったところで、スイセンの球根を植えるプレゼント。花が咲いたところを写真に撮って、報告書に同封する。
毎年安定して入ってくる土地管理の収入があればこそ、地域活動に打ち込めるという。
母親から会社を引き継いだ野老。母親が土地管理のビジネス推進を勧めた。
「不動産会社は安定しないから、あなたが入社するなら、地道な草刈りを増やして、会社を安定させた方がいい、と(母親が)教えてくれた。」
都会に住む土地所有者を調べ、草を刈るからと営業。土地管理の件数は、1984年の約500件から、1994年の6900件へと増やした。社長になって3年目、会社の命運を大きく左右するあってはならない事故が起きる。農道を挟んで、伐採した木をロープで引っ張って軽トラで動かそうとしていたところ、バイクで突っ込んできた22歳の大学生がロープに気付かずに、そのまま転倒し、亡くなってしまった。
「息子や娘がもし事故で死に至らしめられたら、やっぱり、ずっと思い続けるだろうと想像できる。亡くなられた方への償いはどうやっても償えるものではないが、やれる限りのことはやる。」
野老は、遺族に償い続けながら、どうしてこんな事故が起きてしまったのかをずっと考え続けた。そして自分たちに足りなかったものに気付く。それは、
『気づく力』
「事故の瞬間に気づけなかった。後から見たら、なぜ見張りをつけなかったのか、ちょっとしたことができなかったのか、そのために許されない事故に結びつき大事な命を奪ってしまった。」
気づく力を身に着けたい。そこで始めたのが掃除。掃除をしていると、いろんなことに気づくという。縁石に生えている草を取る。なぜ縁石に草が生えるのか? それは縁石に砂が溜まってそこから草が生える。だから、そこで砂を取る。
「気づいたのに何もやらないストレスよりは、気づいたことをやる。体はいくらか使うことになるけれど、その方がストレスがない。」
気づく力が地域まで変える。野老の信念が大里綜合管理に関係する人たちの心に笑顔の花を咲かせる。
MCが聞く。「定年はないんですか?」
「大里は定年があったら働いてもらえない。元気な間は働いてください、と、社員の弔辞は私が読むと決めている。社員の弔辞は絶対私が読む。だって、一番(社員を)知っているのは私たち。“頑張り”も“スキル”も“素晴らしさ”も。」
村上氏が聞く。「あの人身事故で大里はどう変わったんでしょう?」
「危機に気づかなかったことを反省して、“気づく”ようになった。気づいても何もやらなければ、気づいてないのと同じ、だと気づいて、気づいたことで“できること”はやるようになった。」
「売上を上げることは、地域活動を続けるために必要だし、売り上げは、お客の役に立たなければ上がらない。だから、売り上げの上がらない会社は役に立っていないと言える。私たちも(売り上げを上げるために)必死です。自分の会社の売り上げが上がらないのは努力不足だと思っている。」
『役に立つ、が売上になる』
「やり続けること、そして欲をかかない。だから欲張らないこと。一緒に働いてくれる仲間を大切にすること。大里が地域活動を続けられる理由は、一番最初に「嫌だ」という社員に「協力して」と頼んで参加してもらうが、その社員たちが「やって良かった」と言うまで一緒にやっていく。やり続けることで、いい方向に向かうと思っている。そんな地域だったら素敵でしょ。“お節介なおばさん”が増える街、誰にも遠慮しないで、いいと思ったことをやる地域になれると思う。」
村上氏が尋ねる。「そのアイデアが湧き出る秘訣ってなんでしょうね?」
「一人一人にはもっと力があるし、やれることがあると思う。東日本大震災の時に、私たちはいろいろな救援物資を持って行った。「耳かきが欲しい」という人に耳かきを100個渡す。そうすると、自分が欲しい、ということでSOSが出されて、その人に100個渡すと、その人は自分の欲求を満たすと同時に、今度はその人が配り手に変わる。それは、その人を支援を受ける側から、支援をする側にさせることができる。そのこと以外に社会が良くなる方法はない。一人一人が、今の課題を自分でやる側に立たない限りね。」
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番組ホームページはこちら
(http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20151105.html)
大里綜合管理株式会社のホームページはこちら
(http://www.ohsato.co.jp/)
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