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社外役員の兼務制限 日立、4社まで 外部の知見、自社に集中

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ 社外役員の兼務制限は、企業統治指針の強いガイダンスに従って!

経営管理会計トピック

先日は、「あなたの社長は適正価格ですか?」と日本の役員報酬の低さを議論させて頂きました。今度は、その社長を掣肘・牽制することを期待されている「社外役員」の兼務制限のお話です。

2016/3/2付 |日本経済新聞|朝刊 社外役員の兼務制限 日立、4社まで 外部の知見、自社に集中

「社外役員の兼務を制限する上場企業が増えてきた。主要企業の3社に1社が役員兼務のルールをつくり、日立製作所は兼務先を4社までに限定した。自社での活動にできるだけ集中してもらい、社外役員の経験や知識を経営に生かす狙いがある。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

会社と利害関係がなく、外部から登用する社外役員には「社外取締役」と「社外監査役」の2種類があります。東京証券取引所は昨年導入した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード:原則4-8)で、2人以上の社外役員選任を企業に求めました。兼務については「責務を果たせる合理的な範囲にとどめる」と定めているにすぎません。しかし、企業は横並びでこれを遵守することに余念がありません。

(参考)
⇒「企業統治指針「全項目を順守」1割強 適用から半年 報告書「表現横並び」課題

お上からの規制に慣れきった日本人は、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の説明が苦手で、ひたすら「コンプライ」に務めています。

2015年5月1日の会社法の改正、それを受けた、2015年6月の東証における「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」の改訂は、ひたすら、企業に対して兼任制限の内部ルールの設定に走らせただけに終わったということです。

筆者には難しくて読んですぐ理解できませんでしたが、一応、法務省ホームページより、該当の法改正の趣旨説明の箇所をご紹介しておきます。

会社法の一部を改正する法律案

ここでは、なぜ社外役員の選任を企業に求めるのか、まず原理原則を可能な限りシンプルに説明しますと、「一般株主の利益を尊重する取締役会の運営(議決権行使)が行われるように、当該会社との特別の利害関係(多額のお金をもらっているとか、雇用関係にある(あった)ような縛られた、自由判断を阻害する関係)が無い人を取締役会のメンバーにしておきましょう」というものです。

 

■ ひたすら今度は社外取締役の資格要件を見ていきますか、、、

では、次のホームページ:中島成総合法律事務所(社外取締役・社外監査役の要件厳格化、社外取締役設置推進措置)を参考に、会社法の該当する改正部分をできるだけシンプルに要約すると、

「社外取締役」の資格要件として、
現行(会社法2条15号)は、

(1)当該会社又はその子会社の「業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人」(以下「業務執行取締役等」)でなく、かつ、
(2)過去に当該会社又はその子会社の業務執行取締役等となったことがないもの

今回の改正はこれに加え、
(1)にプラスして、
① 当該会社の経営を支配している個人(以下「支配個人」)、又は親会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと、
② 親会社の子会社(当該会社を除く)(以下「兄弟会社」)の業務執行取締役等でないこと、
③ 当該会社の取締役、支配人、その他の重要な使用人又は支配個人の配偶者、二親等内の親族(親子、兄弟姉妹等)ではないこと

(2)にプラスして、
期間制限を新たに設けて、社外役員に就任する前10年以内に、当該会社又はその子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがないこと

小難しいことは実務担当者に任せて、本質をつかみますと、要は、経営者に雇われていない、経営者と親戚でない、経営者ともっと無関係な人を選びましょう、ということです。

ついでに、「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」から、社外役員の資格禁止要件、これはダメね、というリストを抜粋したものを下記に転載します。

20160308_東証_社外役員の資格禁止要件120160308_東証_社外役員の資格禁止要件220160308_東証_社外役員の資格禁止要件320160308_東証_社外役員の資格禁止要件4

 

■ 今度は新聞記事に戻って、各社の対応を整理してみましょうか、、、

それでは、新聞記事にまとめられた各社の対応状況を整理していきます。

「QUICK ESG研究所が、昨年末までに提出されたコーポレートガバナンス報告書を調べたところ、日経平均株価採用の225社のうち71社が何らかの制限を付けた。」

● 日立製作所(上場子会社の日立建機、日立金属含む)、日本製紙
社外役員が他社の役員に就ける上限を4社と規定

●旭化成
社外役員が他社の役員に就ける上限を3社と規定

● DMG森精機
社外役員が他社の役員に就ける上限を2社と規定

● ソフトバンク
社外役員が他社の役員に就ける上限を「数社以下」

● ホンダ
社外役員が他社から役員就任を要請されたときは社長に通知するよう求める

● エーザイ
独立性・中立性を確認する

● 東洋紡
職務に支障が無いか確認する

● 日清紡ホールディングス
指名の際に兼任状況を把握

● スズキ
取締役会の事前承認が必要

新聞記事では、
「企業が社外役員の「囲い込み」に動くのは、企業統治指針の設定や不祥事防止ばかりが目的ではない。企業間の競争が厳しくなるなかで成長し続けるには、生え抜き役員とは違う視点で意見できる社外の力が必要だと感じているからだ。」

「日立は兼務先を4社にした理由を「取締役会への出席だけでなく、事業の理解や議論の準備に必要な時間を確保してもらうため」と説明する。特に異分野でのM&A(合併・買収)や経営トップを社外に求める際には、社外役員の経験や人脈が生きる場合がある。就任前に向こう1年の日程をきめ細かく提示し、経営への積極的な参加を働きかける企業もある。」

とむしろ、積極的に業績向上のために、経験豊富な社外役員の知見を求めていくメリットもあるのだ、と解説しています。それじゃ、どんな人が社外役員になっているのか、それが問題です。

 

■ 最後にどんな人が社外役員になっているのか、調べてみましょう!

2016/3/2付 |日本経済新聞|朝刊 5~6社務める人材も 大学教授や元経営者 争奪戦激しく

「上場企業が一斉に社外役員の導入に動いた2015年春は、有識者や元経営者、官僚OBを急いで確保する「争奪戦」が起きた。候補者を企業に仲介するプロネッドによると、15年度に東証1部上場で2社以上の社外役員になっているのは897人と1年で約150人増えた。」

(下記は記事添付の、4社以上兼務する人の推移グラフを転載)

20160302_4社以上の社外役員を兼務する人_日本経済新聞朝刊

記事に従って、様々な事例をご紹介すると、

「企業は選ぶ基準に「専門知識と豊富な経験」(セブン&アイ・ホールディングス)などを挙げる。著名な大学教授や元経営者が引っ張りだことなり、5~6社の社外役員を務める人もいる。」

「大蔵省(現財務省)に入り、国土交通審議官で退官した船橋晴雄氏は第一生命保険など2社の取締役、パソナグループなど4社の監査役を兼ねる。伊藤邦雄・一橋大学大学院特任教授はセブン&アイや東レなど、坂根正弘・コマツ相談役は武田薬品工業、旭硝子など5社の取締役を掛け持ちする。」

「人材の奪い合いはさらに激しくなりそうだ。企業統治指針はまず望ましい社外役員の数に「2人以上」を挙げ、その次の段階として「取締役会の3分の1」を求める。海外の機関投資家も呼応し、英資産運用大手LGIMなど20の機関投資家は「17年6月までに社外役員が3分の1に達しない企業には、株主総会の議案に反対票を入れる」とした内容の書簡を日本の主要企業に送った。」

これだけの人材争奪戦の状況は、それだけ社外取締役の人数の伸びでも厳しい状況が見て取れます。下記は、東証の2015年7月29日:プレスリリース「東証上場会社における社外取締役の選任状況<確報>」から3枚のチャートをご紹介します。

20150729_社外取締役の選任状況

20150729_独立社外取締役の選任状況

20150729_2名以上の独立社外取締役の選任状況

それゆえ、同記事に戻りますと、

「プロネッドによれば上場企業の社外取締役の報酬は年700万~1000万円が多く、金額は上昇傾向にある。」

という報酬金額のレベルになります。さてさて、これが一般株主として妥当な負担金額でしょうか。そして社内経営者の役員報酬と比べて、過大なのか過少なのか。もちろん金額の絶対額で評価しようというのではないですよ。当然その責務の重さとの比較です。

市場取引と同じ。供給より需要が上回れば価格は高騰することによって市場均衡がもたらされます。

えっ、筆者のコンサルフィーは妥当なのかって???
それは、フィーを支払って頂くクライアントのお気持ち次第です。
筆者としては、お支払いいただく以上のバリューを提供しているつもりですが、、、
現クライアントの皆様、もし、価格に見合ったバリューでない場合は、その旨、お申し出ください。ご返金はできませんが、もっと精進します。ダメじゃん!(春風亭昇太風に)(^^;)

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