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KPI経営入門(9)JR東海、稼ぐ力突出 乗客1キロ運ぶ利益 競合の3倍(前編)- 原因と結果と因果関係を示す業績評価指標を探す!

業績管理会計(入門)
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■ 企業業績をどのように測定すれば適正な評価ができるか?

BSC(バランスト・スコア・カード)が世に出た時、売上高とか利益とかではない、全く新しい企業業績の評価指標が現れたとの誤解が世の中に一時、蔓延した時がありました。結局、BSCまたは戦略マップの要諦は、会計的業績(利益、売上高)を上げるためには、その手前の「顧客の視点」「プロセスの視点」「成長の学習の視点」といった非財務指標の向上が回り巡って、最終的には会計的業績向上につながるのだ、という落ちでした。

経営管理会計トピック_BSCフレームワークの特徴

⇒「就職先選び「財務」を見よう ROAで安定性を評価 キャッシュフローも重要

さて、運輸業界における、下記記事には、企業業績評価という視点から、どういった含蓄があると理解すればよいのでしょうか?

2018/6/6付 |日本経済新聞|朝刊 JR東海、稼ぐ力突出 乗客1キロ運ぶ利益 競合の3倍 東海道新幹線 株価支える

「国内の長距離輸送で競合するJR各社と航空2社の収益力を比較したところ、東海道新幹線を擁するJR東海の稼ぐ力が突出していた。安定した収入をリニア中央新幹線など先行投資に使い一段の成長を目指す。対抗する航空2社は格安航空会社(LCC)や国際線に活路を見いだすが、稼ぐ力の差は株価の勢いの差として現れている。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は同記事添付の「乗客1人を1キロメートル運んで稼ぐ営業利益」を引用)

20180606_乗客1人を1キロメートル運んで稼ぐ営業利益_日本経済新聞朝刊

 

■ 陸運業と空輸業の勝敗の分かれ目

以下は、新聞記事による2つの業界の業績評価を解説したものを要約したものです。

JR東海は1人キロ当たりの営業利益が9.7円となり、他社の1円台後半~3円台前半に比べて、収益力が突出していると評価されており、その要因を東海道新幹線に求めています。

「東海道新幹線が運行するのは東京・大阪・名古屋の三大都市圏だ。1編成16両で一度に最大1323人を運ぶ。折り返しにかかる時間も短く「のぞみ」の1時間当たりの片道運転本数は最大で10本になる。」

「のぞみ」の収益性の高さは次のように分析されています。

・高い座先利用率(そもそも需要が多い三大都市圏に立地。区間によっては90%超)
・販売価格も下がりにくい(出張などビジネスでの利用が多い)

「高頻度運行と高利用率というLCCが目指す運行形態を実現しながら、価格が安定している。「東海道新幹線は究極のLCC」と評するのは航空会社の幹部だ。」

(下記は同記事添付の「市場の評価はJR東海とJR東が高い」を引用)

20180606_市場の評価はJR東海とJR東が高い_日本経済新聞朝刊

これに対抗する航空2社、ANAとJALはどのような対策を打とうとしているのでしょうか?

・国際線
・格安航空会社(LCC)

これら2つに活路を見出だそうとしています。

「ANAHDの国内線を見ると1人キロ当たりの営業利益は約1.9円と計算できる。1編成を5人程度で運行できる新幹線に比べ、航空機はパイロットや客室乗務員など2倍以上の人数が必要だ。運べる人数は最大でも新幹線の半分以下。経営破綻を機に不採算路線を整理したJALでさえ国内線の単位当たり利益は3.1円ほどにとどまる。」

新幹線とガチ勝負になる国内線での勝負は捨て、ANAは、機材を小型化して23年3月期までに輸送能力を3%減らし、JALも21年3月期までの国内線売上の伸び率は4%にとどまっています。国内LCCは、航空機の武器である移動時間の短さに価格の安さを打ち出して潜在需要を掘り起こそうと、飛行機での旅行経験が少ない若い女性などをターゲットにするなど、徹底的にビジネスユースの新幹線との棲み分けで生き残りを図ろうとしています。

勝負の分かれ目と、どこに生き残りをかけるのか。上記のキロメートル当たりの利益は、結果評価か、戦略眼として将来に向かって見るべき指標のどちらなのでしょうか?

 

■ 勝負を分ける選択のための指標になっているための条件とは?

この題に記載している問いに対して、筆者は次のように思考を進めるようにしています。

原因 ⇔ 結果

の間には、「因果関係」が存在しているべきなのですが、経営分析や経営管理のシーンで用いられる業績評価指標(KPI)なるものが、原因を指しているのか、結果を意味しているのか、それとも「因果関係」を説明しているものなのか、使っている人も明確には認識していないことがとても大きな問題なのだと考えています。

キロメートル当たりの営業利益を高めることが、企業全体の収益性を決める「原因」なのならば、これを高める施策を打つべきでしょう。これが、企業活動の結果を表すに過ぎないのなら、これが導かれた因果関係のなぜを追いかけることができる業績評価指標を探し出す必要がありますし、そういう事態を招いた原因を示す業績評価指標はそもそもなんであるのか、起源を遡って明らかにしたくなるのが人情というものではありませんか。

字数が意外に多くなったので、続きの思考は後編に譲りたいと思います。(^^;)

(連載)
⇒「KPI経営入門(9)JR東海、稼ぐ力突出 乗客1キロ運ぶ利益 競合の3倍(前編)- 原因と結果と因果関係を示す業績評価指標を探す!
⇒「KPI経営入門(10)JR東海、稼ぐ力突出 乗客1キロ運ぶ利益 競合の3倍(中編)- 生産性、ROI、制約理論と時代の要請で見るべきKPIも変遷する
⇒「KPI経営入門(11)JR東海、稼ぐ力突出 乗客1キロ運ぶ利益 競合の3倍(後編)- 社会的インパクト評価からアウトプットとアウトカムの違いを知ってJALの決算発表資料を読む

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

業績管理会計(入門編)KPI経営入門(9)JR東海、稼ぐ力突出 乗客1キロ運ぶ利益 競合の3倍(前編)- 原因と結果と因果関係を示す業績評価指標を探す!

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