コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(14)オレンジジューステスト - それはできますよ、で、それにはこれだけかかります。

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■ 最適化症の治療のためにオレンジジューステストが存在する!

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

本書にて、筆者お気に入りの法則・金言をご紹介することになり、喜びに打ち震えているところです。なんたって、本書のこのオレンジジューステストは圧巻の出来ですから。過去にも本ブログにて取り上げたことがあります。

⇒「「それはできません」を言わないコンサルタントは、「オレンジジュース・テスト」を知っている!
⇒「(私の履歴書)重久吉弘(17)目標とする人 2015年2月18日 日経新聞(朝刊)より

最適化しすぎて、逆に適応力を失うコンサルタントへの警鐘として、このテストは大変有効なものなのです。

さて、今回は、本書(P35-37)にあるオレンジジューステストの具体例を以下に要約してご紹介することをお許しください。どうしても物語として説明しないと面白みに欠けてしまうので。

—-以下、本書からの要約—-

あなたは、出席者700名の営業部員年次大会のために会場を選ぶ任を与えられました。とあるホテルの宴会部長に、式次第の重要なポイントを次のように伝えます。

「うちの会社の創始者は、営業部のミーティングに関して一つの神聖な伝統を打ち立てました。それは、毎朝の営業部朝食会の最初に、成功を祈って、朝の7:00ジャストに、搾りたてのオレンジジュースを大きなグラスで全員で乾杯することなのです。しかも、2時間以内の搾りたてのフレッシュなオレンジジュースではないといけないのです。お宅は、このオレンジジュースをご用意いただくことができますでしょうか?」

ホテルの宴会部長の回答が一体、どんなものだったら、あなたは喜んで会場に選ぶのでしょうか? 下記の中からあなたが最適・最良だという回答を選ぶことはできるでしょうか?

(回答1)できます。お安い御用です。
(回答2)できません。残念ながら。
(回答3)できます。ただし、一人あたり1000ドル(10万円)かかります。

—以上、要約終わり—

ワインバーグ氏と彼の知人ルロイとの会話では、最適・最良の回答は(回答3)なのだそうです。どうしてかお分かりになりますか?

 

■ コンサルタントの資質を知るためには、オレンジジュースである必要はない!

現代日本の我々は、2時間以内の搾りたてのオレンジジュースを700人分用意するのに、どれだけ大変か、想像してもよく分からないかもしれません。その事実や難易度の高低、内容はどうでもいいのです。その回答姿勢が、最適・最良のコンサルタントの資質があるかどうかを示すものだからです。

(回答1)がダメな理由
お客が欲しいばかりに、安請け合いしているかもしれません。ウソをついて、濃縮還元缶ジュースを用意するかもしれないのです。実際には本当に簡単に実現できるのかもしれません。しかし、その難易度について、お客に説明責任を果たしていないので、信用できない回答姿勢と言えます。

(回答2)がダメな理由
「できません」と理由もなく断る姿勢。どうしたらできるかを創意工夫することもなく、諦める姿勢。これでは、なにか新しい変化を求めるクライアントの期待に応えることは100%無理です。

(回答3)がよい理由
きちんと、クライアントが何かを欲しているときに、それを実現する方法はこれこれです。しかし、代償はこれこれです。実現方法をひらめきや経験から導き出し、そのために犠牲になるポイント、デメリット、成立条件など、きちんと説明責任を果たしています。こういう回答をするコンサルタントは信頼するに足る、という理屈なのです。

 

■ 1000ドル払えるかどうかは、コンサルタントの課題ではない。クライアントが決めることだ!

ここに、誰の課題かを真剣に考えることができる考察例をいくつかご紹介します。

⇒「アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉(97)あなたが悩んでいる課題は本当にあなたの課題なのか?
⇒「アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉(98)相手の課題を勝手に背負うから苦しいのです!」
⇒「アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉(100)相手があなたを評価するかどうかは相手の課題です

コンサルタントがクライアントからお題を出されて、それを実現するのに、いくらかかるのか、犠牲にするコストをあれこれ考えて、つまり、QCDのC:コストも十分に考慮した提案をするのが「正解」と教え込まれているかもしれません。

しかし、上記のオレンジジューステストの例で言えば、1000ドル支払うことができるかどうか、決めるのは、依頼主の方であって、宴会部長の仕事ではないのです。宴会部長が真にやるべきなのは、依頼主からの依頼をどうやったら実現できるか、脳みそに汗をかいて最善の方法を提示することなのです。それが受け入れられるかどうか、決めるのは依頼主の仕事であり、権限なのです。

コンサルタントができもしないことを、いくら安い値段で受けますと言われても、あなたは、値段だけにつられて、そんな信頼性の低いコンサルタントに仕事をお願いしようとは通常は思わないでしょう。

一時は、だまし討ちに近い方法で契約が取れるかもしれません。しかし、契約の延長・継続は望むべくもなく、また、評判も地に落ちて、他からの依頼も消失すること間違いありません。

 

■ プロとして、クライアントもコンサルタントも自分の使命を明確に意識する!

クライアントは自分の依頼内容をできるだけ明確に、できれば制約条件なども付して説明しなければなりません。

コンサルタントは、依頼を受けた内容を真摯に受け止め、できるだけ実現できるような方策を全力を尽くして考え出します。

そして、再び、クライアントは、コンサルタントが全力で提案した内容を吟味し、自身にとって本当に値打ちのある提案かどうかを決めるのです。

この3ステップは、プロフェッションとプロフェッションの間の仕事のやり取りでは当たり前のことです。

ワインバーグ氏いわく、

それはできますよ。で、それにはこれだけかかります。

これをオレンジジューステストと称します。

ワインバーグ氏がこのテストを好む理由は次の通り。

私はまたそれを依頼主との間で、何の代償もなしに何かをもたらすような計画を考えたがるという、われわれ相互の間に発生する最適化症を治療するのにも使う。

⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(11)最適化症とトレードオフ療法 - 解けない問題にいつまでも取り掛かっているのはおよしなさい

できることとできないことを知る。これ知るなり。
(ちょっと『論語』を改変)

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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