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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(32)スパークスの法則 - 問題を起こした人を探そうとすればするほど真実から遠ざかる

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■ スパークスの法則

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このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

外部リンク G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページ(英語)

前回、オルデンハウザー夫人がウェリントン夫人の歴史を学ばずに、同じ白パン工場の経営を始めた逸話から、歴史から学ぶことの大切さについて説明しました。

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そして、前々回指摘した通り、この話はまだまだ続きます。

前回は、同じ過ちを繰り返さぬよう、歴史に学ぶというか、クライアントの話を十分に聞くようにという教訓めいたお話をしました。そのクライアントから聞き出したお話が課題解決、あるいは解決すべき課題がそもそもなんであるかについて、なんともピント外れな場合はどうすればよいのでしょうか。

オルデンハウザー夫人の話は、本書に登場するスパークスというコンサルタントの実体験として語られています。そして、スパークスはオルデンハウザー夫人の話を聞かされる羽目になったのは、そもそもオルデンハウザー印の白パンにケチをつけたところからでした。それゆえ、本書は、スパークスと同じように、手あたり次第に見たもの聞いたものについて批評から入ることを強く戒めています。その理由は次の通り(本書p64)。

(1)いまから見ると愚かとしか思えない決断にも、当時はもっとも筋のとおった理由があった
(2)それに一番深い責任のある人物がいまの依頼主本人、または依頼主の上司である

可能性が強いからです。

これにより、ワインバーグ氏は問題解決に関する「スパークスの法則」を次のように定めます。

問題を解決できる見込みは、問題を起こしたのは誰なのか見つけ出そうという立場に近づけば近づくほど減少する

問題は組織の中で起きるものです。そしてその問題には多くの人が携わっているはずです。過去の問題を聞き取り調査(今風に言うとヒアリング、現状調査)する際に、それは誰が引き起こした問題かを問い詰めるような聞き方では、真因にまで到達せずに、表面的な聞き取りで終始してしまう可能性を示唆しているのです。

それは次のような箴言にも見られます。

簡単な調査にとどめ、くわしくなりすぎないように注意。われわれはコンサルタントであって検事ではない。

人は、他人からいろいろと質問されたとき、自分自身(話し手本人)の優先順位や起承転結のようなストーリーにしたがってしか、説明をしないものです。多くの人は自分視点で物事を説明します。それゆえ、まずは人から状況を聞き取りたいコンサルタントの聞くべき姿勢は、傾聴の心をもって耳を傾けることなのです。

理解のために調査をしよう。批判のために調査するのはやめよう。

特に、組織の外部からコンサルタントが招聘されて現状ヒアリングなどを始めようなら、ヒアリング対象となった人は多かれ少なかれ、過去の不始末などを根掘り葉掘りほじくり返されると身構えるのが自然です。そんなぴりぴりしたムードでヒアリングを実行しても、真因に近いことを聞き出せるかは疑問ですし、聞き方次第では、彼らの人格・知性・先見性にケチをつけられたと不興を買い、その後の改善活動に非協力的になるおまけまでつきかねないのです。

さあ、そんな人たちの心を開かせて、聞き出したいことを聞き出すための問いかけとは、

現状のうちからよい点を見つけ出し、それに言及しよう。

悪い点、改善すべき点は、現状ヒアリングをしていれば、向こうの方からやってきて、明らかになるものです。もしかすると、やらかした本人からの告白もあるやもしれません。前々回の事例となったオルデンハウザー夫人ですら、現在の自分の白パンがどんなにまずいものかについて知っていたのです。現状ヒアリングする際の傾聴の姿勢には特に留意が必要なのです。ヒアリング以降に、同じ人たちと問題解決にあたろうとするならば。

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