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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(53)上手な頭の中の引き金の仕掛け方 ポテトチップの原理

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上手な引き金の仕掛け方

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

外部リンク  G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページ(英語)

コンサルタントとして読者は、自分の頭の中に、そして依頼主の頭の中に、引き金を仕掛ける能力を持っていなければならない。読者が提供できる一番影響の大きいサービスは、人々がトラブルがそこにあると知りながらそれに引っ掛かることのないように助ける、ということであるからだ。

G.W.ワインバーグ著「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」(P100)

よく”地雷を踏む”という言い方を耳にします。 相手が触れて欲しくないことを、うっかり口に出してしまうことを指していいます。良かれと思って口にしたことが実は触れてはいけないことで、相手が怒り出したり、相手に避けられたりする原因となってしまうこととは知らずに、ついそれに言及してしまう、アレです。

ビジネスシーンでは、この類のことは、職場の人間関係を良好に保つために、まさに地雷を踏んで相手方を怒らせないように、手探りで会話の糸口を探す手練手管があまた紹介されています。

実は、この”地雷”の持つ特性を逆手にとって、逆に利用してあげましょう、というのが、冒頭のワインバーグ氏の趣旨だと私は理解しています。

つまり、言葉による名付けが何にせよ、”地雷”だろうが”引き金”だろうが、「Aを口にしたら、Bさんは怒る」「Cを見せたら、Dさんは悲しむ」という直截的にどのような感情や判断をもたらすのか明らかな言動というのは、そのあとに続くリアクションがとても高い確率で予見できるが故に、とても利用しやすいからです。

労せずして、期待される言動をもたらすことができるのです。不確実性がなくなり、蓋然性が高まるのだから好都合ではありませんか。

脊髄反射的な行動が予見可能な引き金は有効活用すべし

「ナッジ」(nudge:肘で軽く突く)という概念をご存じでしょうか。 2017年に、 リチャード・セイラー教授が ノーベル経済学賞を受賞したのは、「行動経済学」をテーマとした研究によってでした。

簡単に「行動経済学」を説明させていただくと、「必ずしも人間は合理的な判断に基づいて行動するわけではなく、心理学的なさまざまバイアスや思い込み、遺伝子レベルで組み込まれた本能がそうさせる脳の働きに基づき、判断して行動していることが意外に多い」ということを研究したものです。

従来の新古典派経済学が人間を 経済的合理性のみに基づいて個人主義的に行動する存在(ホモ・エコノミクス(homo economicus: 経済人 ) と仮定したのは間違いで、人間って案外、合理的でない感情や、ちょっとした外部からの影響に判断が左右される生き物だよ、ということを科学的に(この場合は統計学的な実証アリという意味)証明してみせたのが行動経済学の一番簡単な理解法だと思います。

私が一番好きな「ナッジ」の例が、オランダ、スキポール空港の男子トイレの便器(朝顔の方)に、ハエのシールが貼ってあることです。なぜだか、男子というものは、用を足すときに、目標物があると、それに向かって用を足す習性があり、それを利用して、飛沫が飛び散らないようにして、男子トイレの掃除コストを飛躍的に下げることに成功した、というものです。

まあ、スキポール空港で私も実際に目にしたもので、当時(2001年頃)はなぜそこに、ハエのシールが貼ってあるか謎でしたが。それと、どうでもいいですが、オランダの便器は高い位置にあるため、平均身長が低いアジア系の人は、オランダで小用を足すのは一苦労です。

相手の行動をコントロールしたかったら、ナッジを使うこと

そこで、引き金とポテトチップの話に戻るのですが(前置きが長すぎる)、ビジネスやライフスタイル、コンサルティングの場合は常套手段になるかもですが、相手方の行動をどうにかこちらの思うようにしたほうが、当方が相手に合わせるより、100倍仕事がやりやすいので、どうにか相手をこちらの思惑通りに動かそうと考えるのが常ではありませんかね。

そういう場合に、ハエと便器の例を持ち出すと、ちょっと下品な感じがするので、そういう場合はワインバーグ氏のポテトチップの袋に書いてある注意書きを例に出すといいのではないかと思います。

ポテトチップの原理

相手のことを知っていれば、引き金を仕掛けるのはたやすい。

G.W.ワインバーグ著「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」(P101)

これは、ビスケットの箱書きという例でも有名なのですが、現代の食品衛生に関する法令順守のため、そうした食品容器(袋や箱、缶詰など)には、とても小さい字で、しかも、普通ならそこは目につかないだろう、という場所に、細かく、「この製品は細心の注意を払って当社の最高レベルの品質管理基準に従って製造しておりますが、万一この製品に問題があった場合は、この袋(箱・缶詰など)の〇〇の部分を切り取りとって〇〇まで郵送してください。良品と無償で交換させていただきます」と書いてあるあれのことです。

あれはこそこそとそこに書いてあるのではなくて、ああいう風に書いてあると、どうしても目がそこに行くものなのです。そうすれば、業者としてはまさに意を得たりです。そうやって、製品を買ってくれた消費者ひとりひとりが気にしてくれるので、あえて、品質保証管理を知らせるための広報費用を節約し、それを製品単価値下げやさらなる製品改良のための研究費に回すことができるのです。

「押したら引く」「ハエがいたら命中させる」

こういうメカニズムを活用したしくみというものは安上がりな割に効果を発揮してくれる優れものなのです。ちょっとした広告やプレゼン、社内規定づくりにこうした知恵があることを頭の片隅に置いておいてください。

(おまけ)2つのやってはいけないこと

ひとつは、本当に消費者の目をくらませるために、一部の約款などがそれに該当するかもしれませんが、あえて分かりにくく、目に触れないように、万一目に触れても見過ごすように、注意書きを記載しておくという動機で、細かい字句で重要なことを記載すること。

もうひとつは、パワーポイントやExcelで作成した報告書に赤字を用いること。

先のやつ、業者が本当に悪意をもって説明書きを分かりにくいところに記載することで、消費者にとって不利な契約を結ばそうとすることは、裁判で争えば、十中八九負けます。弁護人が ハーヴィー・スペクター & マイク・ロス のコンビでない限りは。

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後ろのやつ、プレゼン資料に赤字を使うことは、極力控えるべきです。

を見ると、人間(ホモ・サピエンス)は、興奮してアドレナリンが放出されます。それは、まだサバンナで猛獣に襲われていたとき、いち早く猛獣から逃げ延びるために、心筋収縮力を上昇させて 運動器官への血液供給増大を引き起こす反応を起こさせるからです。

人類のDNAに刻まれた防衛本能を使って、その場のプレゼンを凌いだとしても、次がありません。赤を使わずに訴求力の高い資料作りに励んだほうが自分にとっていいことだと思いませんか。

あ、すみません。赤をコーポレートカラー、ブランドカラー、チームカラーしている関係者の皆様へ。当然、色彩心理学的には、赤にはポジティブな意味もあります。

ポジティブイメージ(愛情、勇気、積極的、勝利)

イギリスの科学誌では、赤いユニフォームの選手の勝率は55% だそうですし、赤は食欲・性欲を高める効果も認められています。 神経や血流を刺激し交感神経系を興奮させる為、赤色の下着や靴下をみにつける事で、低血圧や冷え性に効果があるそうです。

ビジネスにも使える!赤色が与える6つの心理効果と、ズルい使い方・例 | 株式会社スマイルアカデミー
色彩心理学を応用した、赤色のちょっとズルい使い方・例(ビジネスにも使える)と、赤色の与える6つの心理効果を紹介しています。カラーセラピスト曰く、意識的に色を選ぶことができれば、今よりも人生をコントロールする事ができるようになる!との事ですの...

もちろん、シャカシャカポテトてりやきマ〇〇バーガー味、おいしいですよね。^^)

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