プロセスの標準化 - 作業標準はプログラムとマニュアルとで示す。分業に対する事前調整の手段

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■ プロセスにおける標準化から見ていこう

前回、人が一人では成し得ないことをやり遂げるために大きな組織をつくり上げること、その組織内において、人々は分業で仕事を進めることが大前提となり、それぞれ分業の成果を再統合して大きな成果をあげる、この再統合のために「標準化」が必要であることを説明しました。

さらに、この標準化は、企業組織内の構成員の仕事を次の5つのパートからなるものと理解し、それぞれが「標準化」の対象となることも説明しました。

(1)インプット
(2)プロセス
(3)アウトプット
(4)インターフェース
(5)評価基準

組織管理(入門編)標準化の対象とは

さて、今回はその中から、「プロセス」における「標準化」を深堀して説明することにします。なぜ「プロセス」から説明を始めるのか。マニュアルとかプログラムとか、目の前の課業・タスク、仕事のやり方における「標準化」が皆さんにとって一番イメージしやすいと考えたからです。

 

■ 処理プロセスの標準化は料理のレシピから考える

筆者は料理を嗜みはしないのですが、テレビなどのお料理番組で、ボードに書かれたレシピがドンと目の前に出されると、どんな材料をどんな手順で調理すればこういう料理ができ上るのか、と比較的容易にイメージすることができます。

大抵レシピ(recipe)には、①必要な材料、②調理の手順が書かれています。

●引用:とんカツ|料理レシピ・献立|レタスクラブのプロ料理レシピ 24,395品

とんカツ

20180801_とんカツ

◎材料
・豚ロース肉 …2枚
・フライごろも(小麦粉、溶き卵、パン粉)…各適量
・キャベツ …1/8個
・トマト …1/2個
・マスタード、とんかつソース …各適量
・塩、こしょう、揚げ油

◎手順
1)豚ロース肉は赤身と脂身の間の筋を切り、塩、こしょう各少々をふる
2)小麦粉、溶き卵、パン粉の順に、フライごろもをつける
3)揚げ油を170~175℃に熱してフライごろもをつけた豚ロース肉を入れ、途中裏返して色よく揚げ、油をきる
4)ペーパータオルなどの上でとんカツを食べやすく切り、器に盛る
5)せん切りにしたキャベツとくし形に切ったトマト、好みでマスタードを添え、好みのソースをかける

お料理のレシピの偉大さは、
① 誰がやってもほぼ同じような料理ができる
② どこでやってもほぼ同じような料理ができる
③ いつやってもほぼ同じ料理ができる
ことです。大抵、レシピ通りに材料を揃えて、書かれた通りの料理の手順に従えば、という前提条件付きで。

もし、料理の出来不出来に不安な人がいれば、もっとレシピを詳細化するか、あるいは、同じレシピで同じ料理を作りたい人を集めて、講習会(いわゆるお料理教室)で実演付きで先生から学べばいいのです。

さらに、同じ料理というだけでなく、味や食感や盛り付け方までも完全に同質化・均質化したいのであれば、同じ調理器具を取り揃え、使う材料も全く同じものを同一業者から大量に仕入れさえすればいいのです。こうして、セントラル・キッチンを備えた、ファミリーレストラン・チェーンがどんなに店舗が増えたとしても、直営店とフランチャイズが混在したとしても、一大企業となっても、同じ看板(ブランド)を掲げていれば、どのお店に行っても、どの季節に訪れても、ほぼ同じ味の、同じ値段の料理が楽しめるようになるのです。

同じものを同時に複数以上の場所で、また時点を超えていつでも、再生産できるところにレシピの偉大さがあります。これが、処理プロセスの標準化の賜物なのです。

 

■ 処理プロセスの標準化の進め方とは?

処理プロセスの標準化を改めて定義してみます。

「特定の作業手順を定め、その手順通りに作業することで、誰が行っても時間や空間を超えて同じアウトプットを繰り返し生み出す(再生産)ようにすること」

では、料理をはじめとするものづくりでも、サービスの提供でも、何度も繰り返して用いられる一連の作業手順そのもののことは何と呼べばいいのでしょうか。それは、「プログラム」と呼ぶのが一般的です。それゆえ、処理プロセスの「標準化」とは、「プログラム化」と呼ぶこともできるのです。

そして、一人の作業者が遂行するプログラムを文書化して誰が読んでも分かるようにしたものを一般的には「マニュアル」と呼ぶのです。

プログラムという言葉から、コンピュータ原語を想起される方も多いと思われます。コンピュータ原語(CとかJAVAとか)も、

① 事前に処理や条件が定義されている
② 同じインプットが与えられれば、繰り返し同じアウトプットを算出することができる
③ この処理の次はこれと、ひとつずつの処理を直列で結び付けることができる

最後の文章は、ひとつずつの処理を「ステップ」と呼び、時には条件分岐を行いながらも、ステップを直列に手順通りにひとつずつ片付けていることで、プログラム全体がつつがなく終わるようになっていることを意味しています。それゆえ、卒業式や演奏会など、式典などの手順も同様にプログラムと呼称していることにも頷けますよね。

つまり、処理プロセスの標準化は、作業を一連のプログラム化することであり、プログラムの中に記述されているひとつひとつのステップを順に追っていくことで、ひとつの職責や作業を全うすることができるようになるのです。

 

■ プログラム化のお作法とは?

コンピュータ原語におけるプログラムも何万コードとか、何百万ステップからなる複雑なものもこの世には存在します。組織におけるプログラム(あるいはプログラム化されたマニュアルや作業手順)も、複雑なものから簡単なものまでありますが、組織は多くの人が関わって、会社として一つずつのアウトプット(製商品/サービス)を社会に提供することになるので、組織全体としては、ひとつの複雑なプログラムになっているといっても過言ではありません。

しかし、そこには一つの鉄則が必ず存在します。それは「単純化」。どんなに大きなプログラムであっても、どんなに複雑な作業手順であっても、それらを一つ一つに分解していくと、各要素は単純なステップの組み合わせに過ぎないのです。各ステップそれ自体はとてもシンプルなつくりになっています。

インプット → プロセス → アウトプット

この、in-process-out の組み合わせ一単位がステップであり、どんなに複雑なプログラムもこのステップの集合に過ぎないからです。ですから、どんなに大きい企業体であっても、構成員(従業員)の行う作業はシンプル・簡潔なステップの集合や配列からなるものあるべきですし、できるだけ単純化されているのが通常なのです。

なぜなら、人は単純化されて言語化されていないことを実行するのは難しいからです。逆に言うと、自然言語で記述されている通りに、指示通りに、高度な判断力を要せずに、自然な流れで作業ができるようにマニュアルは整備されている必要があるのです。そうした、明快で分かりやすいマニュアルに記載してある単純作業が幾重にも折り重なってこそ、複雑で偉大な成果物(製商品/サービス)を企業は社会に提供できるのです。

 

■ プログラム化が抱える問題点とは?

個々人は単純作業をこなすだけで、それが積み重なっていけば組織全体としては複雑で規模の大きい仕事を遂行することができる。それがマニュアル化、プログラム化の効用でした。そんな素晴らしいマニュアル化、プログラム化に、果たして欠点は無いのでしょうか?

◆組織全体としては複雑なタスクをひとりひとりの単純作業に分解するプログラム化が機能するための必要条件とは、

(1)ひとりひとりの作業にまで分解されたプログラムは相互に整合性を保っていること
(2)ひとりひとりがプログラム通りに作業を遂行すること
(3)作業実施前にプログラムが作成された時の前提条件が変わっていないこと

筆者はデジタルデバイドされているおじさんの一人なので、本当に頭の固い、融通の利かないIT機器に毎日悩まされています。でもIT機器の方からすれば、同じお作法でインプットさえ与えてくれれば、製作された環境条件と同じように利用されれば、従前の説明書き通りの機能を提供するので、使う法に問題があるともいえます。

しかし、ここにプログラム化、マニュアル化の隠された問題点があるともいえます。それは、事前に用意された手順と環境と機能しか果たせない、つまり、臨機応変に対応することができないのが問題なのです。

今度はもう少し、精密に上記3点の必要条件を見ていきます。

(1)プログラムの整合性について
複雑な組織の作業を一連の単純なステップに分解していく過程で、プログラマーとか作業定義者とかが、誤ってプログラムを作成する可能性があるのです。良かれと思って、とあるプログラムの一部(モジュールとも呼ばれる単位)を改変したら、プログラム全体が急に動かなくなったり、そもそもプログラムが思うように起動しない“バグ”が発生したりという問題があるのです。

(2)プログラムの実行について
プログラムやマニュアル自体がどんなに完璧でも、それらを実行する人の方が間違ったやり方でタスクを実行したとしたら、プログラムやマニュアルは事前に期待された通りの結果を完全には出してくれはしないでしょう。俗にいう、

Garbage In Garbage Out.
(無意味なデータをプログラム与えると無意味な結果が返される)

という状態になります。マニュアルにはこう書いてあるのに、「俺流でこうやるのだ!」といって我流でやられると、事前に想定した通りの納期と品質で組織全体の成果物が完成しなくなる恐れがあるのです。マニュアル通りに仕事をせずに臨機応変に対応したから顧客満足が高まるのだとか、マニュアルに捕らわれずに仕事のことを考えるからイノベーションが生まれるのだ、というのは別の機会にお話ししたいと思います。

(3)プログラム組成の前提条件について
プログラムというものは、そもそも、世の中の森羅万象すべてに対応することを事前に想定して作られてはいません。1日8時間働くことを前提としていたり、固定の作業で至って当たり前の品質のものを決まった納期で仕上げることを前提としていたり。特定顧客の特別な場合だけに生じる特別な受注に臨戦態勢で対応することを前提にはしていないのです。

例えば、特定顧客の特注に対応するには、通常の生産ラインとは別の場所で設計・段取り・生産を行う必要があります。90%の顧客がA製品を望んでいる場合、残りの10%の顧客が様々なバリエーションの別個の仕様となるB、C製品を望んだとしても、マニュアル化、標準化されたタスクでアウトプットされるのはA製品になるのは経済性の問題からも仕方のないことです。

 

■ プログラム化・マニュアル化が生きるそもそもの条件とは?

例外的事象もプログラムの中の都度都度盛り込んでいくしか方法が無いとしたら、そのプログラムはやがて全貌を知る人は誰もいなくなるお化けのような存在になり、誰も改変できないブラックボックスにやがて成り果てるでしょう。そして、いつの間にかピクリとも動かない代物になってしまうでしょう。

プログラム(マニュアル)化は、事前に標準化された行動を規定するものであり、元来、多様性、変化、不確実性、例外に対応することを不得手とするものなのです。その代わりと言っては何ですが、いつでもどこでも(時空を超えて)、比較的安価に同じ成果物(アウトプット)を繰り返し再生産することを可能にするという長所(メリット)を有するが故に重宝されるものなのです。

組織設計を行う場合、作業標準化を企図する場合、どの部分をプログラム化やマニュアル化して安定稼働すべきか、どの部分を例外や変化に臨機応変に対応できるように設計するか(多くはヒエラルキーを用いた人間の事後的判断に委ねられるのですが)、その見極めがとても重要になってくるのです。

プロセスの標準化は、分業を前提とした組織運営において、事前に知りうる条件でもって、各作業からのアウトプットがキチンと整合するように事前調整する手段として用いられるのです。

(連載)
⇒「標準化とは - 分業を前提として大きくなった組織を運営するために必要なこと
⇒「プロセスの標準化 - 作業標準はプログラムとマニュアルとで示す。分業に対する事前調整の手段
⇒「アウトプットの標準化 - 業績向上のためにはプロセスとアウトプットのどちらの管理が有効か?

組織管理(入門編)プロセスの標準化 - 作業標準はプログラムとマニュアルとで示す。分業に対する事前調整の手段

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