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アウトプットの標準化 業績向上のためにはプロセスとアウトプット どちらを管理するのが有効か?

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アウトプットとは何かを考える所から見ていこう!

この連載は、標準化の大切さ、プロセスの標準化とお話が続き、今回はアウトプットの標準化が題材となります。

何度も提示していますが、標準化には、企業組織内の構成員の仕事を対象に、次の5つのパートからなるものであると整理いたしました。

(1)インプット
(2)プロセス
(3)アウトプット
(4)インターフェース
(5)評価基準

組織管理(入門編)標準化の対象とは

今回は「アウトプット」の標準化に焦点を当てます。その前に、厳密に「アウトプット」と似たような言葉である「アウトカム」の違いについて、今一度、念のために説明を加えておきます。

【アウトプット】
企業内活動(プロセス)が直接的に生み出すもの

【アウトカム】
企業内活動によりもたらされたアウトプットに対する評価

組織管理(入門編)アウトプットとアウトカムの連携

例えば、完成車メーカーのアウトプットは、生産・販売された「自動車」そのもの。ユーザ(消費者)がその自動車に乗って、意図したとおりに「移動」を行う、そのモビリティーがアウトカムになります。

企業が直接的に生み出すものがアウトプットならば、そのアウトプットの標準化がもたらすものは何か、を考えるのは、その企業の経営活動の直接的な活動成果をどうやってコントロールするかの手段として「標準化」を用いるという意味になるのです。

処理プロセスの標準化に対するアンチテーゼとなるアウトプット・コントロール

処理プロセスを徹底的に「標準化」し、誰がやっても同じ手続きさえ踏まえれば、期待通りに同じアウトプットが繰り返し生み出されるように意図的に管理することを、「プロセス・コントロール」と呼びます。このプロセスを標準化することで企図通りの結果を期待できるようにするためには、次の条件を満たすことが必要となります。

  1. すべてのステップをマニュアルまたはプログラム通りにたどれば期待通りの結果が得られる蓋然性が高い
  2. 期待されるタスクがルーティンワークで定型化するのに相応しい
  3. 与えられるタスクが高い習熟度も高度な判断力も必要としない、単純作業者に任せるのが相応しい

その一方で、どんな手法や方法を採用してもいいから、ある特定の結果さえ出せば、やり方は問わないとする管理手法を「アウトプット・コントロール」と呼びます。企業の中で、組織が大きく複雑になればなるほど、分業の度合いが高まります。分業の度合いが高まるほど、一つ一つの作業を再統合して企業全体で大きな成果を得ること自体の難易度が高くなります。

組織管理(入門編)プロセス・コントロールとアウトプット・コントロール

組織運営者として、全てを束ねて、すべてに対して指図することは難しくなるので、ある一定程度の権限移譲を施すことが必要になります。権限移譲のやりかたのひとつに、目的や達成水準というアウトプットだけを規定して、やり方は作業に任せるという方法を採ることが楽になる局面もあります。こういう場合に、「アウトプット・コントロール」は効果を発揮することになるのです。

どういう仕事の状況ならば、「アウトプット・コントロール」が有利になるかというと、

  1. 不確実性が高い場合、事前に決められた作業標準を厳格に守らせるより、作業者が臨機応変に対応した方が目標達成に効果的となる
  2. マニュアルやプログラムが規定する標準から外れた、例外事象が頻発する場合
  3. 作業者が高度な判断力を有し、作業者の思考力・応用力に頼ったほうがいい結果がもたらされることが明らかである

という状況が考えられます。

プロセス・コントロールとアウトプット・コントロールの使い分けとは?

仮に、あなたが明日の朝までに東京から大阪へ移動することを作業目標だと指示されたとしましょう。その場合、「何時何分のどの新幹線のどの座席に乗車して、新大阪駅での乗り換えは何番ホームのどの車両番号の在来線に乗り換えて、徒歩で●●通りを歩いて、目的地まで辿り着いてください」と具体的な指示を出すのがプロセス・コントロールのやり方になります。

この場合、大阪の地理に不案内な作業者を無事に目的地にまで送り出すには、上記のような指示を出すことが適切かもしれません。一方、丁度その時に、列車事故で鉄道網のダイヤが乱れていたとしたらどうでしょうか? 

自分で創意工夫ができる人ならば、それならということで、羽田空港から飛行機で伊丹空港まで移動して、、、という風に、臨機応変に考えて行動し、結果として、指示通りに明日の朝までに大阪までの移動を成し遂げられるかもしれません。

しかし、地理不案内で旅慣れていない人ならば、最初の指示通りに鉄道を使って移動ができずに、明日の朝までに大阪まで辿り着けないかもしれません。

このように、プロセス・コントロールが適切か、アウトプット・コントロールが適切かは、一概に言えず、状況次第、作業者の習熟度や経験値、判断力次第ともいえるのです。

アウトプット・コントロールと標準化の関係をもう少し精密に見てみる!

論理的には、アウトプット・コントロールを実施する際には、何を標準化して何を標準化しないかを従前に(十全に)検討しておく必要があります。

例えば、年度単位の人事考課における「目標管理」制度の運用を見てみましょう。年度初めに会社全体の売上・利益目標を定めておきます。それを各事業部、各部門へとブレイクダウンしていき、やがては、従業員個々人の年度目標を定量的に定めます。

この時、個々人の目標達成の程度だけを決めて、その達成のための方法論を縛らないやり方は、アウトプット・コントロールによる目標管理制度の運用がなされていると考えることができます。

ただし、達成目標の程度やランクをあらかじめ定めて置き、その達成程度に応じて業績比例給の支払いルールを詳細に決めておくことは、部分的にプロセス・コントロールを実施しているとみることもできます。

その評価基準には定性的・定量的な標準が決められているので、それを達成するための行動様式をある程度縛ることができるから、逆説に言えば、会社側が想定する行動を採らないと期待する結果がもたらされないケースもあり得ます。

評価に応じて報酬を決めたり、翌年度の目標設定の変更方法を決めたり、評価方法・強化基準・手続きは標準化されているのが通常です。このように、会社内になる様々な制度や取り組みは、詳細に分析してみると、プロセス・コントロールの面もあり、アウトプット・コントロールの一面があったりするものなのです。

このように、目標設定の標準化と処理プロセスの標準化とは、必ず相対するものではありません。

ある程度重要なメインプロセスは安定稼働を目的として標準化の対象として管理し、残された曖昧で高度な人間的な判断を要する部分、定型化することができずに例外処理を常に臨機応変に施す必要がある部分とに分割します。

後者は目標管理の対象として、アウトプット・コントロールを適用するといった適切な使い分けが行われることが望ましいと考えられるのです。

ということで、ディープラーニングを中心とする人工知能(AI)関連のテクノロジーの脅威が声高に叫ばれていますが、目標管理の対象とせざるを得ない、高度で柔軟な判断を要する仕事はまだまだ生身の人間がやるしかないタスクが多くみられます。

できれば、皆さんがそういう仕事に従事されており、且つ、十分な報酬を頂いていることを願ってやみません。

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