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■ いきなりでかつ多額すぎる!?減益報道

経営管理会計トピック
OPEC主導の原油安が総合商社の減益予想報道をまたまた引き出してきました。こういうショックを引き起こす理由は、会計的には、いわゆる「減損会計」という損失の認識方法にあります。

2015/1/27|日本経済新聞|朝刊
丸紅、原油安で損失1600億円 今期純利益48%減

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「丸紅は26日、原油やガスといった資源価格の下落で、海外に持つ資源の権益を減損処理すると発表した。買収した穀物子会社の減損処理と合わせて2015年3月期に1600億円の損失を計上する。最終的なもうけを示す純利益(国際会計基準)は前期より48%少ない1100億円と従来計画の半分になる。」
「減損」について、会計処理を細かに説明するというより、ビジネス(や経営管理)をやっていく中で理解していただきたいポイントになるべく絞って説明していきます。

■ 減損処理するに至った丸紅のビジネス状況を整理

1600億円の減損処理をするに至った丸紅の事業状況について、同日12面に概況説明記事がありますので、そちらを参照します。

2015/1/27|日本経済新聞|朝刊
丸紅、海外投資戦略に狂い 1600億円減損、資源・穀物で二重の打撃

「丸紅が2015年3月期に1600億円の減損損失に追い込まれた。資源事業の悪化と13年に買収した米穀物大手、ガビロンの不振によるものだ。資源事業では採掘コストがかさみ採算が悪化した。ガビロンは買収時に見込んだ相乗効果が出ていない。価格変動の激しい資源事業と、大型M&A(合併・買収)に潜むリスクが同時に表面化し、戦略の立て直しを迫られている。」
この記事とプレスリリースを元に、丸紅の減損損失の中身を一応確認してみました。
経営管理トピック_丸紅の減損損失の内容
まず、減損対象とされる資産の種類が「のれん」と「固定資産」の2種類あります。そして、減損損失を認識する理由として、
① 利益計画が未達
② 販売商品価格の下落
③ コストの上昇
の3つが挙げられています。
これらの理由に何か一貫性をお感じになられたでしょうか?
それは、全てにおいて、資産を取得する時に支払ったお金が、その資産を使った商売を通じて会社の預金通帳の中に戻ってこない、という意味において同義なのです。
もうちょっと会計的な言い回しにすると、「資産に投下した資金が回収できなくなったので、未回収分を一気に今期の損失として認識することにした」となります。。。
ちなみに、同業の住友商事が2700億円の減損損失を計上する記事に関するコメントは、
⇒「住商、資源戦略見直し 中村社長「見通し甘かった」 特別組織で原因究明
「のれん」とは何者で、その償却と減損の意味に関するコメントは、
⇒「(経済教室)国際会計基準の展望(下) 「のれん」処理、日本型は妥当 西川郁生 慶応義塾大学教授
を別途参考にしてみてください。

■ 減損損失が発生しない通常時の会計的メカニズムを説明

ここからは、初級者向けの会計基礎の説明になります。必要に応じて、読み飛ばしてください。
<事例1>
・あなたは、20X1年の年末に、100億円という値段で、可採期間が残りあと2年しかない油田を即金で買いました。
・その油田から算出された原油は、毎年100億円(しかも現金)で売れました。
・その他の人件費や税金などのコストはいったん無視します。
この時、20X1年~20X3年の3年間の毎年のキャッシュフローは下図のようになります。
経営管理トピック_減損損失前_キャッシュフロー
(20X1年)油田を買うために支払った100億円分、キャッシュフローはマイナス
(20X2年)原油が100億円で売れたので、昨年末に買った油田に支払ったお金と懐に入ったお金は丁度チャラになった
(20X3年)今年も、原油が100億円で売れたので、受け取ったこの現金の分が、この油田を買って原油販売ビジネスした際の儲けとなる
同じ条件で、今度は、同じ3年間の会計的利益を計算してみます。
ここでひとつ会計ルールが加わります。
・20X1年に買いとった油田は、残り2年間、等分の利益を上げることが見込まれています。そこで、「費用収益対応の原則」といって、売上が計上されるのと同タイミングで、その売上をゲットするために使った費用を計上しなくてはいけない、というありがたい会計ルールに従って、20X1年に買い取った油田の購入金額を50億円ずつに等分して、それぞれ20X2年と20X3年の費用として、計上することにします。
この時、20X1年~20X3年の3年間の毎年の会計的利益は下図のようになります。
経営管理トピック_減損損失前_会計的利益
(20X1年)油田を買うために支払った100億円分を、資産として計上
(20X2年)原油が100億円で売れたので、昨年末に買った油田として資産計上した分の半分:50億円を取り崩して費用として計上。差し引き、今年は50億円だけ儲かった
(20X3年)今年も、原油が100億円で売れたので、残りの資産価額の50億円をすべて費用として計上。差し引き、今年も50億円だけ儲かった
ここで、ちょっと脱線しますが、3年間トータルのキャッシュフローと会計的利益は、100億円として一致することです。単に、「CIF」とか、「利益」として計上するタイミングがずれているだけです。
この辺の違いが管理会計にどう影響するのか、簡単な説明を確認したい方はこちら
⇒「管理会計的に『儲け』を測る(1)
⇒「管理会計的に『儲け』を測る(2)

■ 減損損失が発生する時の会計的メカニズムを説明

さあ、ここからが本番です。上記の例に加えて、次のようなイベントが発生します。
<事例2>
・20X2年の年末に、所有している油田の埋蔵原油量は枯渇してしまい、20X3年には、1バレルの油も出てこないことが分かりました。
通常時は、20X3年に、原油売上:100億円が計上され、そのために油田購入コストの半分:50億円を費用計上する見込みでした。しかし、20X3年には、1円の売上も計上されないので、残りの50億円を回収できない(20X3年の原油元売りビジネスでは儲けが出ない)ことが判明しました。
この時、資産のまま計上しておく予定の50億円を一気に、20X2年の費用(損失)とすることにしました。これが「減損」の正体です。
20X2年に、減損処理した場合の会計的利益は下図の通りです。
経営管理トピック_減損損失処理
ここで、もう一度、減損損失を認識する理由として、丸紅が発表した内容を確認してみましょう。
① 利益計画が未達
② 販売商品価格の下落
③ コストの上昇
これらは、いずれも、上記の事例2によると、20X3年の原油の売上が蒸発してなくなったことと同じことを意味します。
①は、その字句通り、売り上げ減がそのまま利益計画未達、
②は、原油が枯渇して売上が無くなったのではなく、売値が崩れて売り上げが減った。そして結果として、儲けが出なくなり、油田購入コストの残りが回収できなくなった、
③は、上記事例1では、いったん無視したその他の運営コストがかさみ、利益が圧迫され、20X3年の利益が出ない(赤字になる)→油田購入コストの残り半分が回収できない、
という風に解釈すれば、同根の原因といえることができます。
今回は、あまりに基礎的過ぎて、説明に飽きた読者の方もいらっしゃったかもしれません。
次回は、
1.なぜ、シャープは一部の減損を回避する策を有しているといえるのか?
2.IFRSと日本基準の減損テスト方式の違い
3.IFRSと日本基準の資産価額の考え方の違い など
について説明したいと思います。
その前に、予習として、

2015/1/27|日本経済新聞|朝刊
(きょうのことば)減損処理 帳簿上の価格を引き下げ

に目を通しておいていただければと思います。

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小林 友昭実務で会計ルールをおさらい■ いきなりでかつ多額すぎる!?減益報道 OPEC主導の原油安が総合商社の減益予想報道をまたまた引き出してきました。こういうショックを引き起こす理由は、会計的には、いわゆる「減損会計」という損失の認識方法にあります。 2015/1/27|日本経済新聞|朝刊 丸紅、原油安で損失1600億円 今期純利益48%減 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「丸紅は26日、原油やガスといった資源価格の下落で、海外に持つ資源の権益を減損処理すると発表した。買収した穀物子会社の減損処理と合わせて2015年3月期に1600億円の損失を計上する。最終的なもうけを示す純利益(国際会計基準)は前期より48%少ない1100億円と従来計画の半分になる。」 「減損」について、会計処理を細かに説明するというより、ビジネス(や経営管理)をやっていく中で理解していただきたいポイントになるべく絞って説明していきます。 ■ 減損処理するに至った丸紅のビジネス状況を整理 1600億円の減損処理をするに至った丸紅の事業状況について、同日12面に概況説明記事がありますので、そちらを参照します。 2015/1/27|日本経済新聞|朝刊 丸紅、海外投資戦略に狂い 1600億円減損、資源・穀物で二重の打撃 「丸紅が2015年3月期に1600億円の減損損失に追い込まれた。資源事業の悪化と13年に買収した米穀物大手、ガビロンの不振によるものだ。資源事業では採掘コストがかさみ採算が悪化した。ガビロンは買収時に見込んだ相乗効果が出ていない。価格変動の激しい資源事業と、大型M&A(合併・買収)に潜むリスクが同時に表面化し、戦略の立て直しを迫られている。」 この記事とプレスリリースを元に、丸紅の減損損失の中身を一応確認してみました。 まず、減損対象とされる資産の種類が「のれん」と「固定資産」の2種類あります。そして、減損損失を認識する理由として、 ① 利益計画が未達 ② 販売商品価格の下落 ③ コストの上昇 の3つが挙げられています。 これらの理由に何か一貫性をお感じになられたでしょうか? それは、全てにおいて、資産を取得する時に支払ったお金が、その資産を使った商売を通じて会社の預金通帳の中に戻ってこない、という意味において同義なのです。 もうちょっと会計的な言い回しにすると、「資産に投下した資金が回収できなくなったので、未回収分を一気に今期の損失として認識することにした」となります。。。 ちなみに、同業の住友商事が2700億円の減損損失を計上する記事に関するコメントは、 ⇒「住商、資源戦略見直し 中村社長「見通し甘かった」 特別組織で原因究明」 「のれん」とは何者で、その償却と減損の意味に関するコメントは、 ⇒「(経済教室)国際会計基準の展望(下) 「のれん」処理、日本型は妥当 西川郁生 慶応義塾大学教授」 を別途参考にしてみてください。 ■ 減損損失が発生しない通常時の会計的メカニズムを説明 ここからは、初級者向けの会計基礎の説明になります。必要に応じて、読み飛ばしてください。 <事例1> ・あなたは、20X1年の年末に、100億円という値段で、可採期間が残りあと2年しかない油田を即金で買いました。 ・その油田から算出された原油は、毎年100億円(しかも現金)で売れました。 ・その他の人件費や税金などのコストはいったん無視します。 この時、20X1年~20X3年の3年間の毎年のキャッシュフローは下図のようになります。 (20X1年)油田を買うために支払った100億円分、キャッシュフローはマイナス (20X2年)原油が100億円で売れたので、昨年末に買った油田に支払ったお金と懐に入ったお金は丁度チャラになった (20X3年)今年も、原油が100億円で売れたので、受け取ったこの現金の分が、この油田を買って原油販売ビジネスした際の儲けとなる 同じ条件で、今度は、同じ3年間の会計的利益を計算してみます。 ここでひとつ会計ルールが加わります。 ・20X1年に買いとった油田は、残り2年間、等分の利益を上げることが見込まれています。そこで、「費用収益対応の原則」といって、売上が計上されるのと同タイミングで、その売上をゲットするために使った費用を計上しなくてはいけない、というありがたい会計ルールに従って、20X1年に買い取った油田の購入金額を50億円ずつに等分して、それぞれ20X2年と20X3年の費用として、計上することにします。 この時、20X1年~20X3年の3年間の毎年の会計的利益は下図のようになります。 (20X1年)油田を買うために支払った100億円分を、資産として計上 (20X2年)原油が100億円で売れたので、昨年末に買った油田として資産計上した分の半分:50億円を取り崩して費用として計上。差し引き、今年は50億円だけ儲かった (20X3年)今年も、原油が100億円で売れたので、残りの資産価額の50億円をすべて費用として計上。差し引き、今年も50億円だけ儲かった ここで、ちょっと脱線しますが、3年間トータルのキャッシュフローと会計的利益は、100億円として一致することです。単に、「CIF」とか、「利益」として計上するタイミングがずれているだけです。 この辺の違いが管理会計にどう影響するのか、簡単な説明を確認したい方はこちら ⇒「管理会計的に『儲け』を測る(1)」 ⇒「管理会計的に『儲け』を測る(2)」 ■ 減損損失が発生する時の会計的メカニズムを説明 さあ、ここからが本番です。上記の例に加えて、次のようなイベントが発生します。 <事例2> ・20X2年の年末に、所有している油田の埋蔵原油量は枯渇してしまい、20X3年には、1バレルの油も出てこないことが分かりました。 通常時は、20X3年に、原油売上:100億円が計上され、そのために油田購入コストの半分:50億円を費用計上する見込みでした。しかし、20X3年には、1円の売上も計上されないので、残りの50億円を回収できない(20X3年の原油元売りビジネスでは儲けが出ない)ことが判明しました。 この時、資産のまま計上しておく予定の50億円を一気に、20X2年の費用(損失)とすることにしました。これが「減損」の正体です。 20X2年に、減損処理した場合の会計的利益は下図の通りです。 ここで、もう一度、減損損失を認識する理由として、丸紅が発表した内容を確認してみましょう。 ① 利益計画が未達 ② 販売商品価格の下落 ③ コストの上昇 これらは、いずれも、上記の事例2によると、20X3年の原油の売上が蒸発してなくなったことと同じことを意味します。 ①は、その字句通り、売り上げ減がそのまま利益計画未達、 ②は、原油が枯渇して売上が無くなったのではなく、売値が崩れて売り上げが減った。そして結果として、儲けが出なくなり、油田購入コストの残りが回収できなくなった、 ③は、上記事例1では、いったん無視したその他の運営コストがかさみ、利益が圧迫され、20X3年の利益が出ない(赤字になる)→油田購入コストの残り半分が回収できない、 という風に解釈すれば、同根の原因といえることができます。 今回は、あまりに基礎的過ぎて、説明に飽きた読者の方もいらっしゃったかもしれません。 次回は、 1.なぜ、シャープは一部の減損を回避する策を有しているといえるのか? 2.IFRSと日本基準の減損テスト方式の違い 3.IFRSと日本基準の資産価額の考え方の違い など について説明したいと思います。 その前に、予習として、 2015/1/27|日本経済新聞|朝刊 (きょうのことば)減損処理 帳簿上の価格を引き下げ に目を通しておいていただければと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します