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■ 「ROE改善度」による企業ランキング

経営管理会計トピック
今回は、時価総額1000億円以上で、この5年間にROEが改善したランキング上位20社のリストが目に留まったので取り上げたいと思います。

2014/10/24付 |日本経済新聞|朝刊
発掘長期保有株(3)ROE改善度 人員、資金を最適配分 上位20社、半数が上場来高値

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

記事では、ROEが大幅に改善した企業というのは「合理化に踏み込んだり、人員や資金を最適配分する仕組みを作り直したりして稼ぐ力を取り戻したところが多い。上位20社のうち7割が今期最高益を更新する見通し」とあります。
下記は、新聞記事に掲載のあった、上位20社のランキングです。

5年間でROEが改善した企業
1 ユナイテッドアローズ
2 サイバーエージェント
3 DIC
4 富士通ゼネラル
5 セリア
6 日本ペイント
7 日本瓦斯
8 東海東京F・HD
9 住友ゴム工業
10 朝日インテック
11 日本M&Aセンター
12 平和
13 大東建託
14 ミネベア
15 テイ・エス テック
16 SCSK
17 ブリヂストン
18 あいHD
19 リゾートトラスト
20 大和ハウス工業

それでは、次章で、いわゆる「稼ぐ力」を財務分析だけで検証させてください。

■ ROEの分解式による「稼ぐ力」の読解

前章のランキングに入った20社は、業種・規模も様々なので、一概にビジネスモデルの優劣や、成長ステージの別を個別に議論できないので、こういう時は、財務数値だけで語ることもひとつの有効な分析方法となり得ます。
まず、財務分析の前提ですが、少なくとも日経新聞のこの記事では、

ROE = (親会社説による当期純利益) ÷ (期首期末の純資産の平残)

で、計算されていました。
20社の相対的比較ができればよいので、ここでは算出方法は問わないこととします。また、筆者の手間を削減する意味で、分子は「親会社説による当期純利益」、分母は「純資産の期末残高」とさせていただきます。つまり、有価証券報告書の「第1【企業の概況】 1【主要な経営指標等の推移】」に記載のある「当期純利益」と「純資産額」の数字をそのまま使わせてください。(^^;)
下表のROE分解式は、念のため、計算式を再記しておきます。

ROE = 売上高純利益率(ROS) × 総資産回転率(STN) × 財務レバレッジ

経営管理会計トピック_ROE改善企業ランキング_上位20社
経営管理会計トピック_ROE改善企業ランキング_上位20社_補足データ 
決算月を途中変更した企業があったこと、「直近」の定義が不明なこと、等から新聞記事のデータに近似しない企業がありますが、ご容赦ください。
デュポンチャート方式によるROEの分解分析について、皆さんはどのような感想をお持ちになったしょうか?

■ ランキング上位は本質的な収益体質へ改善

実は、このような分析に取り掛かる前に、筆者は、仮説を必ず持ってから作業に入ります。作業前の仮説は、「『財務レバレッジ』を使って、ROEを改善している企業が多いはず」でした。
それがどうでしょうか? ランキング上位に入っている企業は押しなべて、「財務レバレッジ」を効かしているどころか、「債務を返済」or「自己資本の充実(利益剰余金の増加)」を図っていました。大きなリターン(高いROS)で、逆にROE計算の分母を増やしながら、ROE自体も上昇している訳です。ここまで来ると、欧米企業との財務戦略の違いが明確です。財務レバレッジを効かすことが良いか、悪いかの判断は、当該企業の資金需要状況と成長ステージに左右されるので、一概に言えませんが、この結果に筆者は少々びっくりしています。
次に、「STN」の改善貢献度が低いことが目を引きました。上位2社は、さすがに「STN」も大きく改善しているのですが、分析結果から、日本企業は、総収入を得るための事業投資効率に総じて疎いというか、意識が薄いようです。
最後に、一番重視されているのが「ROS」で、「ROE」改善に最も貢献しているポイントでもあることが分かりました。日本企業は総じて、目前の高マージンのビジネスモデルの構築、現場オペレーションの改善に強いことが改めて分かりました。コスト削減、高マージンの新商品を途切れさせずに上市する、などなど。
まあ、「直近(決算月がバラバラなのであくまで類推ですが)」の5年間といえば、リーマンショック直後の、いわゆる「需要蒸発」の直後なので、ROSの改善が目立つのは当然といえば当然なのかもしれません。
最後に、筆者の仮説通り、「財務レバレッジ」で「ROE」を改善させている企業は皆無ではありませんでした。特に、「ROS」の貢献度がマイナスでかつ「財務レバレッジ」がプラスの貢献になっている企業には注意してください。高「ROE」だけで株式購入すると、たまに痛い目に合う、、、ということです。

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小林 友昭とことんROE■ 「ROE改善度」による企業ランキング 今回は、時価総額1000億円以上で、この5年間にROEが改善したランキング上位20社のリストが目に留まったので取り上げたいと思います。 2014/10/24付 |日本経済新聞|朝刊 発掘長期保有株(3)ROE改善度 人員、資金を最適配分 上位20社、半数が上場来高値(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 記事では、ROEが大幅に改善した企業というのは「合理化に踏み込んだり、人員や資金を最適配分する仕組みを作り直したりして稼ぐ力を取り戻したところが多い。上位20社のうち7割が今期最高益を更新する見通し」とあります。 下記は、新聞記事に掲載のあった、上位20社のランキングです。 5年間でROEが改善した企業1ユナイテッドアローズ2サイバーエージェント3DIC4富士通ゼネラル5セリア6日本ペイント7日本瓦斯8東海東京F・HD9住友ゴム工業10朝日インテック11日本M&Aセンター12平和13大東建託14ミネベア15テイ・エス テック16SCSK17ブリヂストン18あいHD19リゾートトラスト20大和ハウス工業 それでは、次章で、いわゆる「稼ぐ力」を財務分析だけで検証させてください。 ■ ROEの分解式による「稼ぐ力」の読解前章のランキングに入った20社は、業種・規模も様々なので、一概にビジネスモデルの優劣や、成長ステージの別を個別に議論できないので、こういう時は、財務数値だけで語ることもひとつの有効な分析方法となり得ます。 まず、財務分析の前提ですが、少なくとも日経新聞のこの記事では、 ROE = (親会社説による当期純利益) ÷ (期首期末の純資産の平残) で、計算されていました。 20社の相対的比較ができればよいので、ここでは算出方法は問わないこととします。また、筆者の手間を削減する意味で、分子は「親会社説による当期純利益」、分母は「純資産の期末残高」とさせていただきます。つまり、有価証券報告書の「第1【企業の概況】 1【主要な経営指標等の推移】」に記載のある「当期純利益」と「純資産額」の数字をそのまま使わせてください。(^^;) 下表のROE分解式は、念のため、計算式を再記しておきます。 ROE = 売上高純利益率(ROS) × 総資産回転率(STN) × 財務レバレッジ   決算月を途中変更した企業があったこと、「直近」の定義が不明なこと、等から新聞記事のデータに近似しない企業がありますが、ご容赦ください。 デュポンチャート方式によるROEの分解分析について、皆さんはどのような感想をお持ちになったしょうか? ■ ランキング上位は本質的な収益体質へ改善実は、このような分析に取り掛かる前に、筆者は、仮説を必ず持ってから作業に入ります。作業前の仮説は、「『財務レバレッジ』を使って、ROEを改善している企業が多いはず」でした。 それがどうでしょうか? ランキング上位に入っている企業は押しなべて、「財務レバレッジ」を効かしているどころか、「債務を返済」or「自己資本の充実(利益剰余金の増加)」を図っていました。大きなリターン(高いROS)で、逆にROE計算の分母を増やしながら、ROE自体も上昇している訳です。ここまで来ると、欧米企業との財務戦略の違いが明確です。財務レバレッジを効かすことが良いか、悪いかの判断は、当該企業の資金需要状況と成長ステージに左右されるので、一概に言えませんが、この結果に筆者は少々びっくりしています。 次に、「STN」の改善貢献度が低いことが目を引きました。上位2社は、さすがに「STN」も大きく改善しているのですが、分析結果から、日本企業は、総収入を得るための事業投資効率に総じて疎いというか、意識が薄いようです。 最後に、一番重視されているのが「ROS」で、「ROE」改善に最も貢献しているポイントでもあることが分かりました。日本企業は総じて、目前の高マージンのビジネスモデルの構築、現場オペレーションの改善に強いことが改めて分かりました。コスト削減、高マージンの新商品を途切れさせずに上市する、などなど。 まあ、「直近(決算月がバラバラなのであくまで類推ですが)」の5年間といえば、リーマンショック直後の、いわゆる「需要蒸発」の直後なので、ROSの改善が目立つのは当然といえば当然なのかもしれません。 最後に、筆者の仮説通り、「財務レバレッジ」で「ROE」を改善させている企業は皆無ではありませんでした。特に、「ROS」の貢献度がマイナスでかつ「財務レバレッジ」がプラスの貢献になっている企業には注意してください。高「ROE」だけで株式購入すると、たまに痛い目に合う、、、ということです。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します