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■ 「経営」をどうやって「管理」するか

経営管理(基礎編)
前回は、「経営管理」の対象を説明しました。今回は、続きとして「管理」するという行為、すなわち「管理方法」を説明します。
前回は落ちで大家(「たいか」といいます、「おおや」ではありません。念のため)のM.ポーター様を持ち出しましたが、今回は、前座(大変失礼な言い回しですが)として大家の皆様にまず登場してもらいます。
世の中の経営管理論の概要をまた一枚のチャートで無理やりまとめたいと思います。
「経営戦略論」の概説でつかったフレームワークと同様に、誰が管理するかを縦軸、どうやって管理するのかを横軸にプロットしたチャートを用意しました。
経営管理(基礎編)_経営管理理論プロット図

■ 大家の方たちは経営管理をこう考えた

《MBO》
D.マクレガーが提唱した「目標による管理:MBO(Management by objectives)」は、本人の自主性に任せて目標を設定させ、十分に主体性を発揮して実践を行えば、大きな成果が得られるという考え方です。
「ヒトは怠け者でアメとムチで管理すべき」とする「X理論」と、「ヒトは自己実現のために進んで問題解決にあたるから自主性を尊重すべき」とする「Y理論」を提唱しました。当然「Y理論」での管理を暗に勧めているのですが、ちなみにこの概念は2000年前後に歪んで日本に導入され、流行しそして失敗した「成果主義」の根幹をなす考え方です。
経営管理対象としては、「組織」に有効なものであると考えられています。
経営管理(基礎編)_Y理論による目標管理
《マネジメント》
P.ドラッカーが提唱した、「マネジメント」は、①意思決定→②活動の組織化→③成果と目標値の比較検証、をひたすら継続するプロセスといえます。そして、その自分自身の目標は組織内で誰かの目標と相互にリンクしており、目標管理のループが有機的に結びついている目標管理の束(たば)が組織であるという見解です。
「マーケティング」と「イノベーション」も目標管理の対象であるとその著書で謳(うた)っているので、管理対象は、「事業ポートフォリオ」「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」「組織」と全てを包含しています。
(論者や信奉者は、上記のプロット図の全てをドラッカー様はカバーしていると主張されると思いますが、あくまで対比することによる分かりやすさの方を優先しています)
経営管理(基礎編)_ドラッカー 目標の連鎖
《TQC》
W.E.デミングは、「統合的品質管理」TQC(Total Quality Control)」を提唱し、①「品質の維持」すなわち「ばらつきをなくす」→②生産性の向上→③顧客満足の増大→④利益とシェアの向上、を生産現場だけでなく、設計、購買、マーケティング、営業現場にも適用し、経営層を含む全社的取り組みであたるべしと主張しました。
プロット図で「個人」に位置付けているのは、当初は現場のQCサークル活動から始まり、TQC、TQMと看板(呼び名)が進化するにしたがってその適用範囲が広がっていっただけで、その精神はあくまで現場主義であると認識してのポジショニングになっているからです。
管理対象として、「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」に適用するのが最適かと思います。
経営管理(基礎編)_管理図
《TOC》
E.ゴールドラットは、「制約理論(TOC:theory of constraints)」の中で、全体最適を実現することで、企業活動の最大の目的である「スループット」を最大化することを主張しました。スループット(ここでは活動成果と簡単に理解してください)の大きさを決めるのは「ボトルネック」であるとして、①ボトルネックを発見する→②ボトルネックを常に限界値まで能力が発揮できるように維持する→③それ以外のプロセスをボトルネックに調和させる→④ボトルネックの能力を向上させる→⑤ボトルネックが解消したら、次のボトルネックを探索する(①へ戻る)、という管理プロセスを提唱しました。
管理対象として、「事業ポートフォリオ」「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」に適用するのが効果を発揮できるのではと思います。
経営管理(基礎編)_ボトルネックとスループット

■ それぞれの理論の使い勝手

《期間管理との親和性》
皆さんは、中長期事業戦略(3~10年)、年度予算、四半期着地点予測など、Periodic な計画・実行・検証の管理サイクル(Plan-Do- Seeともいう)を運用されていることかと思いますが、圧倒的に、プロット図の左側の「目標による管理」を意識的または無意識的に実行していることになります。
一方、TQCやTOCは期間計画管理とはあまり親和性がありません。その理由は、両者とも不断の半永久的に継続する改善活動だからです。4月から3月と、1年間の統制結果の報告ができたとしても、前期末までに設定した目標値(統制値でもよい)を今期の改善活動の結果、これだけ達成しましたという報告は難しいことが予想されるでしょう。
世の中には、デミングが提唱した経営管理手法は「PDCA」という名で、このプロセスに忠実に期間計画管理をしなければならない、このプロセスを守っていないから計画管理がずさんになって業績が伸びていないのだ、という(特に経営コンサルタントの)声が大きいように思えます。
しかし、デミングは年次計画の廃止を主張し、定量的目標値の設定に反対した、という事実をご存知の方はあまりいないかと思います。
次回は、誤解多き「PDCA」と、筆者の持論である「仮説検証型目標管理」を説明したいと思います。
ここまで、「経営管理の管理方法」を説明しました。
経営管理(基礎編)_経営管理の方法

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-e1428166901472.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-150x150.jpg小林 友昭経営管理(基礎編)■ 「経営」をどうやって「管理」するか 前回は、「経営管理」の対象を説明しました。今回は、続きとして「管理」するという行為、すなわち「管理方法」を説明します。 前回は落ちで大家(「たいか」といいます、「おおや」ではありません。念のため)のM.ポーター様を持ち出しましたが、今回は、前座(大変失礼な言い回しですが)として大家の皆様にまず登場してもらいます。 世の中の経営管理論の概要をまた一枚のチャートで無理やりまとめたいと思います。 「経営戦略論」の概説でつかったフレームワークと同様に、誰が管理するかを縦軸、どうやって管理するのかを横軸にプロットしたチャートを用意しました。 ■ 大家の方たちは経営管理をこう考えた 《MBO》 D.マクレガーが提唱した「目標による管理:MBO(Management by objectives)」は、本人の自主性に任せて目標を設定させ、十分に主体性を発揮して実践を行えば、大きな成果が得られるという考え方です。 「ヒトは怠け者でアメとムチで管理すべき」とする「X理論」と、「ヒトは自己実現のために進んで問題解決にあたるから自主性を尊重すべき」とする「Y理論」を提唱しました。当然「Y理論」での管理を暗に勧めているのですが、ちなみにこの概念は2000年前後に歪んで日本に導入され、流行しそして失敗した「成果主義」の根幹をなす考え方です。 経営管理対象としては、「組織」に有効なものであると考えられています。 《マネジメント》 P.ドラッカーが提唱した、「マネジメント」は、①意思決定→②活動の組織化→③成果と目標値の比較検証、をひたすら継続するプロセスといえます。そして、その自分自身の目標は組織内で誰かの目標と相互にリンクしており、目標管理のループが有機的に結びついている目標管理の束(たば)が組織であるという見解です。 「マーケティング」と「イノベーション」も目標管理の対象であるとその著書で謳(うた)っているので、管理対象は、「事業ポートフォリオ」「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」「組織」と全てを包含しています。 (論者や信奉者は、上記のプロット図の全てをドラッカー様はカバーしていると主張されると思いますが、あくまで対比することによる分かりやすさの方を優先しています) 《TQC》 W.E.デミングは、「統合的品質管理」TQC(Total Quality Control)」を提唱し、①「品質の維持」すなわち「ばらつきをなくす」→②生産性の向上→③顧客満足の増大→④利益とシェアの向上、を生産現場だけでなく、設計、購買、マーケティング、営業現場にも適用し、経営層を含む全社的取り組みであたるべしと主張しました。 プロット図で「個人」に位置付けているのは、当初は現場のQCサークル活動から始まり、TQC、TQMと看板(呼び名)が進化するにしたがってその適用範囲が広がっていっただけで、その精神はあくまで現場主義であると認識してのポジショニングになっているからです。 管理対象として、「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」に適用するのが最適かと思います。 《TOC》 E.ゴールドラットは、「制約理論(TOC:theory of constraints)」の中で、全体最適を実現することで、企業活動の最大の目的である「スループット」を最大化することを主張しました。スループット(ここでは活動成果と簡単に理解してください)の大きさを決めるのは「ボトルネック」であるとして、①ボトルネックを発見する→②ボトルネックを常に限界値まで能力が発揮できるように維持する→③それ以外のプロセスをボトルネックに調和させる→④ボトルネックの能力を向上させる→⑤ボトルネックが解消したら、次のボトルネックを探索する(①へ戻る)、という管理プロセスを提唱しました。 管理対象として、「事業ポートフォリオ」「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」に適用するのが効果を発揮できるのではと思います。 ■ それぞれの理論の使い勝手 《期間管理との親和性》 皆さんは、中長期事業戦略(3~10年)、年度予算、四半期着地点予測など、Periodic な計画・実行・検証の管理サイクル(Plan-Do- Seeともいう)を運用されていることかと思いますが、圧倒的に、プロット図の左側の「目標による管理」を意識的または無意識的に実行していることになります。 一方、TQCやTOCは期間計画管理とはあまり親和性がありません。その理由は、両者とも不断の半永久的に継続する改善活動だからです。4月から3月と、1年間の統制結果の報告ができたとしても、前期末までに設定した目標値(統制値でもよい)を今期の改善活動の結果、これだけ達成しましたという報告は難しいことが予想されるでしょう。 世の中には、デミングが提唱した経営管理手法は「PDCA」という名で、このプロセスに忠実に期間計画管理をしなければならない、このプロセスを守っていないから計画管理がずさんになって業績が伸びていないのだ、という(特に経営コンサルタントの)声が大きいように思えます。 しかし、デミングは年次計画の廃止を主張し、定量的目標値の設定に反対した、という事実をご存知の方はあまりいないかと思います。 次回は、誤解多き「PDCA」と、筆者の持論である「仮説検証型目標管理」を説明したいと思います。 ここまで、「経営管理の管理方法」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します