問題解決に着手する前に確認すべきこと
このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。
外部リンク G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページ(英語)
さて、問題解決をどうやって成功に結び付けるか。さも、問題がそこに実存し、クライアントも問題解決を望んでいる前提でこれまでお話してきました。最初に大切なことを忘れてはいけません。それは、本当にクランアントがその問題解決を望んでいるかということです。
コンサルタント業にまつわる一つの皮肉は、本当に助力が必要な人々からはめったに助力を求められることはない、ということである。そのため、たまたま近所にいたという場合に、頼まれもしないのに飛び込む、という誘惑に駆られることがある。だがそれは絶対にやってはいけない。要請がないとすれば、助力ができる見込みもありはしない。
G.W.ワインバーグ著「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」(P82)
コンサルタントに仕事を依頼してくるクライアントの立場からすれば、手っ取り早く目先の問題をコンサルタントに依頼して解決してほしいと心の底から願っているかもしれません。しかし、目先の問題というものは、誰の目にもすぐに止まり、存外、解決策もシンプルでその気になれば社内の人間だけで解決できるものも少なくはありません。
重要な気づきがさらにふたつあります。ひとつは、そういった課題解決を不得手にしている人がより外部のコンサルタントに依存したがることです。自分でちょっと考えればできるにも拘らず。ふたつは、直ぐに解決できる問題を解決したところで、得られる果実は、そんなに大したものではないということです。
ここまでの議論をまとめます。
- 問題の解決に着手するには、まずクライアントからの要請があることが必須条件である
- 問題解決を苦手としている人ほど、外部のコンサルタントに依存したがる
- そういう依頼人からくる問題は目先のシンプルなものであることが多い
- シンプルな問題を片付けても影響は小さいことが多い
- よって、本当に解決しなくてはならない問題こそ、そうそう簡単にコンサルタントに依頼が来るものではない
問題の解決のために最初に必要なこと
問題解決をうまくやろうと考える場合、必然的にこのジレンマに悩まされることになります。クライアントから依頼が来やすい問題というものは、解決しても得られるメリットは少ないですが、クライアントから依頼が来ない問題こそ、一度解決すると大きな見返りが期待できるというものです。
そのジレンマを何らかの工夫で抜け出し、クライアントの問題を解決しようと腕まくりしたとき、次の難関が待っていることになります。それは、問題解決に対するクライアントからの協力が得られるか、という難物です。
これは、最近の現場でよく使われる言葉なのですが、「プロジェクトを進める中で、クライアント側のキーマンの『コミットメント』が得られているかどうかが大切なポイントとなる」というセリフです。
(この用語を日本に流行らせた人は、最近、別の意味で耳目を集めておりますが、、、)
これも皮肉的な現象なのですが、問題解決のために社外からコンサルタントを招聘し、それに対して結構な金額を支払っているのですが、にも拘らず、コンサルタントがいろいろと献策しても、頑として受け入れないとか、現状調査に非協力である、といったことが嘘ではなく、実際に目の前で起きたりします。^^;)
あるいは、「コミットメント」ではなく、「スポンサーシップ」というカタカナをつかうこともあります。「スポンサーシップ」という用語を日本で使う場合は、実際のプロジェクトメンバとか、プロジェクトメンバが協力を仰ぐべき現場担当者が対象ではなく、プロジェクト体制図の上部に君臨するプロジェクト・オーナーや、ステアリング・コミッティのメンバ、概して、役員であることが多いのですが、会社組織の上位者の協力・支持を得ていることを指していることがほとんどです。
ここで、説明をまとめます。
- 問題解決を成功裏に収めるためには、関係者の協力が大前提である
- 当事者間の協力は「コミットメント」という言葉で確認されることが多い
- 上位者からの支持は「スポンサーシップ」という言葉で確認されることが多い
問題の解決のためにできること
原則として、コンサルタントは自分の問題を解決することがミッションではありません。あくまで、クライアントを支援することがミッションです。支援は、主体がクライアント側にないと実施できません。これは、コンサルティングの実施の大前提なのです。
しかしながら、現実はそう簡単ではありません。コンサルタントに仕事の依頼が舞い込んだとしても、単に自部署の来年度予算獲得のための大義名分を得るための方便だったりします。その場合、自部署の活動費を獲得することが目的であり、課題を解決することは二の次となります。
そういう場合、真剣に何が真因の根本的な問題(ルート・コーズ、route cause)なのかの追究にも熱が入らないことはおろか、コンサルタントが一生懸命に仮説を提示して、無理矢理に問題を作り、解決策を提示して、実行計画を遂行するために旗を振っても、誰もついてこようとしないケースが多々あります。
なぜなら、そういう状況に陥った場合、誰も、コンサルタントがもたらそうとしている「変化」を望んでいないからです。当たり前のごく自然な流れなのです。
そこで、現在、プロジェクトがあまりうまくいっていないコンサルタントや依頼側のプロジェクトメンバの方へ。
あなたのプロジェクトがやろうとしていることに、社内の関係者は上下の関係なく、本当に賛意を示していますか?
まず、あなたのプロジェクトがやろうとしていることの大義名分が本当の意味で立っているのか、再確認してみてください。そのうえで、「やるべし」と自分を信じさせることができるものならば、そこまできてやっと、問題解決の方法論を議論するレベルに到達しているといえます。
誰と、いつまでに、どこで、何を、どうやって、やれば、あなたの理想に近づけるか?
そしてもっと具体的に、
変化させたいもの、新たに獲得したいもの、回避したいもの、排除したいもの、延期したいもの、代替させたいもの、は何か?
というできるだけ複数の視点で、アプローチを洗い出していってみてください。
今日はここまで。^^)
関連記事 コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(40)問題解決の問題を解決する方法① - 解決方法の欠如
関連記事 コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(41)問題解決の問題を解決する方法② - 歴史の欠如
みなさんからご意見があれば是非伺いたいです。右サイドバーのお問い合わせ欄からメール頂けると幸いです。メールが面倒な方は、記事下のコメント欄(匿名可)からご意見頂けると嬉しいです。^^)
コメント