予算管理(3)予算管理の目的と機能 - 古典に学ぶ「計画機能」「調整機能」「統制機能」の意味とは

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■ 古典に学ぶ予算管理の目的と意義とは

まずは「予算管理」という営みの目的と、予算管理活動の意義や機能を、古の偉大なる研究者はどのように整理していたのかをご紹介します。

前回、会計実務解として筆者固有の見解として、

「中期事業計画」
・経営の構え、何を、どうやって、いつ、誰に売るかを決める
・会計数値より、経営方針、事業戦略や機能施策など、テキスト情報が主役
・そのために経営資源を何に配分するかを決める
・財務的には、全てが管理可能費で固定費は存在しない

「単年度予算」
・経営の構えを前提に、最高効率でどうやって成果を出すかを決める
・そのために経営資源をどうやって使用するかを決める
・数字の裏付けとなる個別施策の明示も添えられるが、会計数値が主役
・財務的には、キャパシティコストと固定費が存在する

という大雑把な2分類をさせて頂きました。

業績管理会計(入門編)予算管理の目的と意義

近代的な企業が製造業を中心に巨大化し、組織も複雑化を極める中で、全社的な経営方針を組織の隅々にまで行き渡らせ、会計数値を用いて企業全体の業績をとりまとめ、組織内の人々の活動と意識をひとつに統合し、活動結果の良否を判定して次の計画作業に活かすためには、上記のような、定説によれば3つ、識者によっては4つとか5つの機能を予算管理に求めたわけです。

つまり、大きな組織になって多数の人間が企業活動に参加することになり、トップマネジメントが定めた経営方針を具体的な施策に落とし込み、その施策の成果を事後的に評価するために、事前の目標値と事後の実績値を比較・分析するために、予算管理が行われるのです。

 

■ 予算管理の目的と意義を見ていく

経営スピードが速く、市場動向が目まぐるしく変化し、アダプティブに行動することを求められる現代ビジネスにおいて、前章のような従来型の予算管理の型は、もはや時代遅れかもしれません。しかし、そんな現代においても、筆者がコンサルテーションに入る大企業は、これら従来型の予算管理プロセスを後生大事に守っています。そこから変化や進化を提言する必要性は感じています。それゆえ、相互理解のために、古典的な予算管理の意義を学んでおく必要もあると考えています。

それでは、とりあえず定説の3分法にしたがって、予算管理の目的を順を追って説明します。この説明は、近代的組織となった私企業の経営管理構造(ヒエラルキーとプロセス)が前提にあります。そちらは、下記過去投稿にてできるだけ簡明に説明しています。

業績管理会計(入門編)_マネジメント・コントロール システムの前提

(参考)
⇒「業績管理会計の基礎(2)マネジメント・コントロール・システムのための管理会計とは

そして、余計な一言かもしれませんが、一般的な教科書というものは、「目的」「機能」「意義」という概念を明確に使い分けていません。それゆえ、どうしても教科書を参考に文章を書く際、これらの用語が混在してしまうことを事前にご容赦頂きたいと思います。

① 計画機能

予算編成とは一般的には予算を作る行為を指します。予算を作成するためには、企業や企業を構成する組織単位(事業部や部門など)における活動計画と、将来における業績予測の2つをインプットにして、会計数値で活動計画期間における財務的行動計画を立案します。

予算管理するためには、まず予算を作らねばならないので、そこで予算編成という営みが最初に登場するわけです。これにより、経営者は各組織の行動計画を財務的数値で全社統合した後の姿でその合理性を理解し、将来的に企業が受ける市場などの変化にどう対応すべきかを認識することができます。

そして、最終的に、全社予算を最終的な期間目標として公式化し、トップマネジメント自身、そして各組織の責任者に対して、しかるべき会計責任に応じた目標設定を与えることを可能にするのです。

② 調整機能

各事業組織、各機能組織がそれぞれの活動目標と財務的予算を掲げ、めいめい勝手に個別活動していては、全社目標の達成に程遠いと、近代的な巨大企業の形成から長い間、考えられていました。いわゆる全体最適と部分最適のお話です。予算を作る過程、いわゆる予算編成において、ボトムアップで各部の予算を吸い上げて、全社または上位の管理単位レベルで各部の活動目標や財務的予算をすり合わせる、トップダウンで、全社目標を達成できるように各部の予算値を設定する、等の各部の行動指針の全体最適化が2つ目の目的となります。

こうした予算作り込みの過程において、トップマネジメントの各部門への期待、各部門同士の相互期待、例えば販売組織の販売予定数量と、製造組織の生産予定数量とを、期初在庫数量を加味して一致するように調整する「製販すり合わせ」「製販会議」など、全社⇔各部門、各部門⇔各部門の間の利害関係の調整が予算編成で行われることを期待しているのです。

この中で、トップマネジメントが最終的に確定した予算が、トップマネジメントから各部への来期の活動目標の提示となり得ます。この局面を強調すると、「伝達機能」も予算管理の目的・機能のひとつであるという主張につながるわけです。

また、トップマネジメントから各部門の責任者へ示された予算値・目標値が、その組織責任者の権限の範囲を明確化することにも役立ちます。例えば、部門予算の執行権限をコストセンター長に与えれば、部門費予算の執行はコストセンター長の管理下になります。このように、分権的組織の中で、誰がどういう権限を有しているかを明確化する「権限付与機能」も予算管理の機能のひとつということもできるのです。

③ 統制機能

予算編成の過程で作られた活動目標や財務的制限は、実際の事業活動を通じて、やがて実績値として、いわゆる予実差異分析を行うことができるようになります。一般的に予算統制は、狭義として、予実差異管理と解されることも多いようです。しかし、それは少々難しく言うと、事中統制、事後統制の範疇になります。

トップマネジメントから各部門へ予算が公式化されて指示として下りていく過程は「権限付与機能」としても理解されています。これを、その部門が次の計画期間の間にやっていいことの範囲を事前に申し渡していると解せば、それは「事前統制」という性質のものになります。トップマネジメントやコントローラーから、その範囲で仕事をしてね、その範囲を超えたら越権だから注意してね、というタガをはめるわけです。よって、厳密に予算管理の機能の3分法、4分法、5分法の差異をちみちみと議論しても、会計士や税理士試験にも出題されないし、会計実務でも問題視されないので、あくまでアカデミックの世界で単位を取れるかどうかの問題だと断言します。

閑話休題

事中統制は、前回のPDCAサイクルの所で言及しましたが、「例外管理」「異常値管理」のことを指します。期初設定の目標値から外れそうになったら、即時に修正行動に入ることを意味します。

事後統制は、測定・評価期間、即ち予算期間が終了した時点で、予実対比し、明らかになった予実差異がいい方向でも悪い方向でもお構いなしに、どれくらい乖離したのか、なぜ乖離したのか、の原因分析を行います。この際、乖離幅が予算未達となったら、別の業績評価制度、人事報酬制度、人事考課や人事異動により、働き相応の処遇や評価が待っています。それが牽制になり、期初予算達成のための行動を制御する力を予算管理プロセスとして求められます。

こうした評価の側面を強調すると、「動機づけ機能」「業績測定機能」も予算管理の目的に挙げたくなるわけです。

今回は温故知新の回でした。どうしても、「予算管理」をその背景からバクッと全体像を理解しようとするなら、歴史と理論のさわりをどうしても触れざるを得ないのです。

また、従来の「予算管理」の理論は、上意下達を前提とした、ヒエラルキー組織としての企業の発展と共に生成されたことも忘れてはいけません。そこには、①トップマネジメント、②ミドルマネジメント、③現場担当者、という階層認識された組織観が前提になっているのです。こうした組織観がそぐわなくなった現代、次の新たな「予算管理」の考え方が必要になってきているわけです。

(連載)
⇒「予算管理(1)予算と計画の水平線 - 計画と予算の種類と体系
⇒「予算管理(2)予算管理プロセスの位置づけ - マネジメント・コントロール・プロセス、PDCAサイクル、ECMやSCMとの関係から
⇒「予算管理(3)予算管理の目的と機能 - 古典に学ぶ「計画機能」「調整機能」「統制機能」の意味とは
⇒「予算管理(4)予算管理の誕生と構造化の歴史 - 予算編成、予算管理、予実差異分析、予算統制の違い

業績管理会計(入門編)予算管理(3)予算管理の目的と機能 - 古典に学ぶ「計画機能」「調整機能」「統制機能」の意味とは

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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