■ 強さや清さが強すぎると弱く濁ってしまう
There is strong shadow where there is much light.
光が多いところでは、影も強くなる。
(ドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者、政治家、法律家 / 1749~1832)
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このゲーテの言葉をもって警鐘を鳴らす所以や価値はどこにあるのでしょうか。私が幼少のころ、学研まんがひみつシリーズを月に1冊ずつ、買って読むことが至上の喜びでした。その中で、子供心に、強風が吹いても柳の木は風を受け流し、風の力で倒れない。五重塔も柔構造で風に対して自らを揺らすことで風圧を逃がして倒壊を下げている。その一方で、鉄筋コンクリートで頑丈に作ったビルほど、強風による風圧をまともに喰らって逃がすことをしないので、一定の力以上のものが加わるとポキッと折れてしまう、という一説を読んだ時の衝撃は今でも忘れることはありません。
力に力で対抗していては、より強き者だけが残り、より弱きものは負けてしまう。それも生命や寿命を完全に失ってしまう(完全に破滅や倒壊するの意)。それこそ、見かけ上は強いけれど、生命力が豊かではなく、真の意味で強靭な存在ではない。どんな悪条件でもしたたかに生き延びることこそ、生命の世界では大変重要で、ただ歯が肉体が強ければ、「生き延びる」のではないことを、歴史学だけではなく、地質学や生物学も教えてくれています。
また、あまりに清すぎる水には、餌となる植物性プランクトンの生息数が少ないため、それを捕食する動物性プランクトンの数も少なく、またそれを捕食する水生昆虫や小魚も少ないため、大きな魚が棲息することは滅多にありません。
水清ければ魚棲まず
翻って、自分が属する会社組織を見つめ直してみましょう。強いリーダーシップの下では、強靭な組織力、構成メンバの地力がいまいち育っていないかもしれません。強力なコンペチターのいない市場に慣れ切った組織は、市場での競争に対する耐性・免疫に乏しく、何らかの作用で参入障壁が低くなった場合に、突然死するかもしれません。
強みをもつこと、無駄を排除することは、強い組織を作ることにとって非常に大切なことかもしれません。しかし、より長く生き延びる組織を作るためには、あえて冗長性や余裕があるところを人為的に用意したり、強みだけで人・モノを揃えたりするのではなく、ダイバーシティを重要視することも、生き延びる組織を作り上げるためには大切かもしれません。何かに特化しすぎると変化に対応することがかえって難しくなります。これが俗にいう「ガラパゴス化」なのかもしれません。
小さい組織が大きい組織に勝つ、とか、ピンチをどうやって切りぬけるか、とか、局地戦では、自身の優位点を最大限に生かした戦い方が大切になりますが、組織や人はずっと常在戦場の張りつめた空気感では疲弊してしまい、中長期に持続可能な取り組みをするには息切れしてしまいます。
時には休んだり、立ち止まって、来し方を振り返り、一見無駄と思えるようなことをやってみたり、わざと遠回りしてみる。そうすることで、これまで発見できなかったアイデアが降って湧いてきたり、これから向かう先の方向性(ビジョン)が明確になったりするものです。
柔構造で多様的で粘着的であるほうが、生命も組織も生き永らえることができます。すぐに、敵とか味方とか、善とか悪とか決めつけない生き方も、もしかすると賢い生き方かもしれません。
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