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(なるほど投資講座)管理会計の基礎(中) 原価計算、方法は複数 – 管理会計の中央に鎮座する原価計算について

管理会計(基礎)
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■ 原価計算が生まれて、そして管理会計に進化した

日本経済新聞夕刊に「管理会計の基礎」という全3回連載のコラムが掲載されました。管理会計オタクの魂がこれに反応してたまりません。

2017/11/21付 |日本経済新聞|夕刊 (なるほど投資講座)管理会計の基礎(上) 意思決定などに活用

「ひと言で管理会計といっても、手法は多岐にわたります。最も伝統的な方法が原価計算です。製品や部門などの単位で原価を計算し、販売価格を設定したり、目標に向けて原価を低減したりするのに使います。もう一つ代表的な方法が予算管理です。利益計画を作り、どのような責任体制で目標を達成したらよいのかを考え、計画と実績の違いを分析します。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

2017/11/22付 |日本経済新聞|夕刊 (なるほど投資講座)管理会計の基礎(中) 原価計算、方法は複数

「管理会計は意思決定や業績評価のための道具です。では具体的にどんな手法があるでしょうか。代表例の一つである原価計算を取り上げます。」

通常、「原価」と「予算」といえば、管理会計の中の花形です。経理部や管理部において、管理会計やっています、と大きな顔ができるとしたら、この2つのどちらかに携わっている時かもしれません。

ちなみに、筆者オリジナルですが、管理会計の中の分類は下表のように考えています。

⇒「業績管理会計の基礎(1)業績管理会計のポジショニングと「分類」と「比較」の重要性

統合基幹業務システム(ERP:Enterprise Resource Planning)が、資材所要量計画(MRP:Material Requirement Planning)が進化して生まれたように、管理会計も原価計算が進化したものという見方もできます。何を作って、誰に売れば、どれだけ儲かるかを知ることが原価計算の原始的な目的なのですから。それは企業経営活動そのものです。

そして、重厚長大型の製造業からソフトウェア企業、ITサービス企業から販売業まで業種を問わず、自社が提供している製商品/サービスが、いくらのコストで提供されているかを知ることは、そのビジネスの儲け方を知るとっかかりであって、ビジネスモデル構築の根幹なのです。

 

■ しかし、財務会計が原価計算を生み出したのだ

前章のきれいな流れに掉さす用で申し訳ないのですが、原価計算は、「原価会計」という名前でも呼ばれ、損益計算書を作成するために期間費用(期間原価)、貸借対照表を作成するために、棚卸資産評価額を計算するところから生まれたのです。

原価計算(入門編)原価計算のフレームワーク

⇒「原価計算基準(6)原価計算制度 - 特殊原価調査とはどう違うのか、内部管理用原価でも制度である理由とは?

日本の会計において、正式に原価計算とは何ぞやを説いている「原価計算基準」から、原価計算の目的を引用します。

① 財務諸表作成
② 価格決定
③ 原価管理
④ 予算編成/予算統制
⑤ 基本計画設定

①が財務会計で②~⑥が管理会計の領分となります。

では、本記事では原価計算とはどういう風に総括されているのでしょうか。

「利益を得るには商品やサービスの価格をいくらに設定すればよいでしょうか。設定した目標に対し、生産活動などは適切に運営されているでしょうか。原価を改善するにはどのような取り組みが必要でしょうか。こうした目的のために、原価計算します。」

利益目標(単年度予算、短期利益計画)をたてるため、コストダウン(原価管理、原価統制)のために、原価計算を行うと読むことができます。

 

■ そして原価計算はさまざまに分化する

本記事では、特に管理会計目的に特化して、標準原価計算と直接原価計算が取り上げられています。

(下記は同記事添付の「原価計算の主な種類」を引用)

20171122_原価計算の主な種類_日本経済新聞夕刊

● 標準原価計算
「工場の生産計画などに使われる標準原価計算という方法があります。製品1つあたりの原価に注目し、目標値と実際にかかった原価をそれぞれ算出して比較します。材料費や労務費など原価低減の余地がどこにあるかを分析します。」

● 直接原価計算
「もう一つの方法は直接原価計算です。費用を変動費と固定費にわけて分析するのが特徴です。変動費とは売上高の増減に応じて変わる費用を指します。材料費や仕入れ原価などが当たります。固定費は人件費や設備の減価償却費など売上高の変動にかかわらず発生する費用を指します。この方法は事業の採算を分析するのに役立ちます。」

使用目的や特徴に入る前に、財務会計で取り上げられている原価計算との対比が必要なようです。

財務会計では、「全部実際原価計算」による期間損益計算と棚卸資産評価を行うことがベースとなっています。「全部原価」と「実際原価」の組み合わせです。このままだと、諸処の経営意思決定に不都合な面があるので、この概念とは異なる原価概念で管理会計を行うのです。

「実際原価」⇔「標準原価」
「全部原価」⇔「直接原価」(ほんとは、部分原価の1種類として直接原価が存在)

 

■ 標準原価計算

実際にかかった原価と、事前に目標にしていた原価を比べることで、目標と実際の乖離幅を測定して、どれだけコストダウンまたはコスト維持ができているかを、予算目標達成のためのツールとして、現場の生産管理(生産効率の向上)のツールとして、標準原価計算が行われます。

原価計算(入門編)_標準原価による目標管理

⇒「原価計算 超入門(2)実際原価と標準原価

ここでは、目標にしていた原価をどうして「標準」と呼ぶのかについてだけ掘り下げていきます。

事前に見積もる原価は、従来は「見積原価」、成り行きで実際に支払ってしまった原価は「歴史的原価」です。事前見積原価でも、生産現場で能率を管理するため、統計的にストップウォッチや材料の払い出し記録から科学的に割り出した厳密に算出されたものを「標準原価」と特別に呼ぶことにしました。

原価計算(入門編)_原価の種類

そうした実際原価と標準原価の差異で「原価差異」がどれだけかを計算して目標管理をしようというのは、目標管理の中でも事前管理の範疇。毎期の「原価差異」の改善度を歴年で比較分析するのが事後管理。

原価計算(入門編)原価標準の設定の意味

⇒「原価計算基準(14)原価の諸概念⑤ 標準原価を使ってどうやって管理会計するんですか?

つまり、事前に目標を立て、事後にその目標達成度を評価し、次のアクションプラン策定に役立てる、いわゆるPDCAサイクルを動かす元として、標準原価は設定されるのです。その意味で、原価管理は差異管理ということもできるのです。

原価計算(入門編)事前・事後管理プロセス

 

■ 直接原価計算

まずは、全部原価と直接原価を原価要素の別で対比させたのが下表です。

原価計算(入門編)_全部原価計算と直接原価計算

製造間接固定費(減価償却費など)は、棚卸計算をして製品原価をするのが財務会計の基本ルール。それを全額、発生時に期間費用(=期間原価)とするのが直接原価計算。

以下、極端な例で説明します。原価計算期間は1ヵ月とし、4月と5月の損益を見てみます。

<前提条件>
4月に製品を1個、制作します。かかったコストは、直接材料費が100円と、間接固定費(機械の減価償却費)が100円とします。
4月中には売れずに、月末に棚卸製品として、200円がB/Sに計上されます。
4月に制作した製品が5月に、300円で売れました。
5月も製品を1個、制作しますが、これも同月内に売れずに、月末に200円の棚卸製品としてB/Sに計上されます。間接固定費(機械の減価償却費)は変わらずに100円だけ発生しています。

原価計算(入門編)_制度会計と直接原価計算

棚卸資産に発生コストを半永久的(強制評価減されない限り!)に棚上げできるのが全部原価計算。それでは、真実のコスト発生を正しく損益計算に反映されないと、発生時に全額その期の原価にしてしまうのが直接原価計算。経営者により厳しく、そして、コストの発生状態に素直に対応しているところが長所です。

⇒「原価計算 超入門(7)全部原価と直接原価の違い

⇒「(なるほど投資講座)管理会計の基礎(上) 意思決定などに活用  - 一般的に認知されている管理会計が持つイメージと本質のGAPを語ってみた
⇒「(なるほど投資講座)管理会計の基礎(下) 損益分岐点、事業の採算を分析 – またの名をCVP分析。長期では損益分岐点も移動する理由まで解説

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です

管理会計(基礎編)(なるほど投資講座)管理会計の基礎(中) 原価計算、方法は複数 - 管理会計の中央に鎮座する原価計算について

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