会計原則・会計規則の基礎(2)戦後の日本経済の出発点のひとつとなった『企業会計原則』の誕生

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■ 『企業会計原則』の誕生年は昭和24年!

会計(基礎編)

「企業会計原則」「会計規則」「会計法規」という会計の世界の成文法(文書の形で会計処理の原理原則や手続きが記述してあるもの)を順次解説していきたいと考えています。本稿では、その昔、会計を志している(した)人(大学教授、経理実務家、学生、公認会計士など)がいの一番に学んだ『企業会計原則』のあらましをざっと見ていきましょう。

前回までは、個別の成文法としての会計法規、ひとつひとつの説明はせずに、会計法規の体系や背景となる基本的考え方を中心に説明してきました。そうした抽象的な議論・説明から、個別会計基準の解説に行くまでに、必ず触れなければならない、会計法規の中心に座しているのが『企業会計原則』です。

昭和24年(1949年)7月9日、経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告として、『企業会計原則』『企業会計原則注解』が産声を上げました。昭和24年といえば、ドッジライン/シャウプ勧告が出された年で、前年にGHQが経済安定9原則を発表し、翌年1950年には朝鮮戦争が勃発するという、まだ戦後日本経済が復興する前のタイミングです。一会計学を志した者として、筆者もこの『企業会計原則』こそ、日本経済復興の立役者の一人(擬人法的な表現ですが)と固く信じています。

その後、昭和29年、昭和38年、昭和44年、昭和49年、昭和57年(1982年)の5回、改訂されています。ことさら、改訂頻度と改訂年を取り上げたのは、昭和37年(1962年)に制定された『原価計算基準』がその後、一度も改訂されることなく現在にまで至っているのと好対照であることを強調するためです。そして昭和57年以降は改訂されていませんが、その後に公表された各種会計基準が、企業会計原則のどこどこと、あからさまに特定はしていませんが、上書きで制定されているので、事実上の改訂作業は現在進行中である、という初学者には理解するのが難しい立ち位置の会計原則なのです。

 

■ 『企業会計原則』制定の目的と趣旨

企業会計原則は、それまで不統一だった日本企業の会計報告の様式と計算技法を統一することを目的として制定されました。具体的には、日本経済復興のために、

① 外資の導入(外国資本が安心して日本企業に投資できるように)
② 企業の合理化(経営の効率化)
③ 課税の公正化(税法会計の基礎)
④ 証券投資の民主化(一般株主が安心して投資ができるように)
⑤ 産業金融の適正化(銀行などの金融機関からの融資取り付けを容易にするように)
を目指して企業会計ルールの統一を図りました。

そして、企業会計原則の性格(位置づけ)は次の3つ。

① 企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められたところ(GAAP)を要約したもの
② 公認会計士が財務諸表の監査をなす場合に従わなければならない基準
③ 商法(現会社法)、税法などの企業会計に関連のある諸法令が制定改廃される場合に尊重されなければならないもの

企業会計原則は、GAAPとして、会計慣習の理論的検討を通してあるべき会計処理・表示の基準を体系的に構築したものという意味で、「理論的規範性」を有する基準です。さらに、公認会計士が会計監査を実施する際に、企業の経理担当者が財務諸表を作成する際に、従うべきルールであることから、「実践的規範性」を有する基準とも言われています。まあ、会社法や法人税法も企業会計にかんする条文を制定・改正する際に、必ず尊重すべきルールとして決められているので、会計基準の中の王様なのだと考えてください。一部、改訂がなされずに、他の会計基準で勝手に上書き修正されているので、その意味では「裸の王様」になりつつありますが。。。(^^;)

 

■ 『企業会計原則』の体系

企業会計原則は大きく分けて、①一般原則、②損益計算書原則、③貸借対照表原則の3部構成をとり、それぞれの問題点について補足説明をする『注解』が付されています。

財務会計(入門編)_企業会計原則の構造

 

(1)一般原則
一般原則は、会計全般にわたる包括的な原則で、全部で7つあります。ただし、昭和49年(1974年)の改訂で、注解に「重要性の原則」が加えられ、実質的には8つあると考えた方が適切です。それら8つの原則は、4つの会計行為、①認識、②測定、③記録、④表示のいずれかに強く関連するかで分類することができます。ちなみに、①認識と②測定は「会計処理(実質)」、③記録と④表示は「表示方法(形式)」に大別されますので、ここでは、①真実性の原則という大前提を除いて、残りの7つを2つのグループに分けてみます。

財務会計(入門編)_一般原則の体系

 

(2)損益計算書原則
大別して、損益計算処理の実質的内容を決める「処理原則」と、損益計算書としての表示方法を決める「表示原則」に分かれます。「処理原則」は、「費用収益対応の原則」を頂点に、収益の認識・測定、費用の認識・測定の各原則から構成されます。ただし、測定原則は「取引価額の原則」として一本で説明されています。一方、「表示原則」は、一般原則にある「明瞭性の原則」を具体的に定義したものとして3つ存在します。

財務会計(入門編)_損益計算書原則の体系

 

(3)貸借対照表原則
最後に貸借対照表原則なのですが、こちらは、少々複雑で整理すら難解です。「貸借対照表基本原則」の下で「処理原則」と「表示原則」に大別されます。前者は、「認識原則」と「測定原則」に二分されます。「貸借対照表完全性の原則」「原価主義」の配下にさらに詳細手続が続きます。後者は、「科目記載の基本原則」と「注記記載の指示」に分かれます。前者は、①区分、②配列、③分類、④評価に細分化されます。最後の④評価は、前述の「原価主義」へとつながります。

財務会計(入門編)_貸借対照表原則の体系

今回は、それぞれの原則の内容にまでは踏み込んでいません。『企業会計原則』が、まずは、「一般原則」の下で「損益計算書原則」と「貸借対照表原則」に区分されていること、さらに、それぞれが、「会計処理」と「表示方法」を規定する諸原則を有している二重構造になっていることをご理解いただければ、本稿の所定のゴールに到達したといえましょう。

(参考)
⇒「会計原則・会計規則の基礎(1)会計原則の基本構成を知る
⇒「企業会計の基本的構造を理解する(1) 会計取引の計上に必要な「認識」と「測定」について
⇒「企業会計の基本的構造を理解する(6)財務諸表を取り巻く制度会計 - トライアングル体制と言われたのはその昔

財務会計(入門編)_会計原則・会計規則の基礎(2)戦後の日本経済の出発点のひとつとなった『企業会計原則』の誕生

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