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共通資産の配賦の必要性で考える管理会計の目的とは - 会計技法の手段に溺れて経営管理の目的を忘れないように!

管理会計(基礎)
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■ そもそもの共通費の配賦の根拠と目的と道具性ですら怪しいのに。。。

今回はコラム風に管理会計を語りたいと思います。筆者は様々な業種のクライアントにおける経営管理の仕組み構築のお手伝いをするのを生業としています。そこで、かなりの頻度で質問や要求を受けるのが、共通費の配賦。そして、共通費の配賦ロジックを考察する前に、なぜその共通費を配賦したいのか、共通費を配賦する目的を必ず問うようにしています。

管理会計(基礎編)_共通費の配賦に対する対立的見解

(参考)
⇒「業績管理会計の基礎(12)事業別組織における会計責任構造の設計 ⑥本社費の配賦と管理可能利益の両立
⇒「業績管理会計の基礎(11)事業別組織における会計責任構造の設計 ⑤本社コーポレート部門における共通固定費の配賦
⇒「固定費の配賦の目的をきちんと認識していますか? -共通費と固定費の違い
⇒「事業部別業績管理 間接費の配賦

上記のチャートでも語っているように、共通費の配賦には功罪があり、目的に沿って配賦後利益の取り扱いには十二分の注意を払うことが必要であると説明しています。

そして、筆者の立場は配賦否定派です。業績管理会計、責任会計制度の趣旨から、配賦後利益には管理可能性がないからです。自分でどうしようもない配賦金額、引いては配賦後利益をなんとかしろ! とうるさく言われても、権限がないコスト発生はどうしようもないからです。

これを、意思決定会計の視点から、固定費回収計算の目安に使えるではないか、とう反論を受けることがあります。そうです。その通りです。ある程度の目安にはなりますが、配賦後利益による固定費回収を可能にする損益分岐点を明示したところで、それで営業活動ボリュームをどうにかコントロールするための意思決定が可能なのでしょうか?

これも、固定費回収点を上回って、固定費回収ができたらよかったね、という程度で、後いくら回収金額が不足しているからどの施策を打つか? と、ギリギリと数字を見ながら判断をするには、根拠薄弱な数字であると断言します。

いわんや、共通資産配賦後のセグメント別B/Sをや、です。(^^;)

 

■ 共通費の配賦のさらに上を行く共通資産の配賦の不可解

本社コーポレート部門には、各事業部に振ることのできない共通資産(全社資産)が留保されていることが通常です。これは便宜的にそう呼んでいるだけで、当然、負債・資本も各事業部に振ることができないものは、まるでゴミ箱のような扱いで、本社コーポレート部門のB/S項目として、その他扱いされています。

しかし、時には、そうした直接的な収益と紐づけることができない本社共通資産を各事業部に便宜上、配賦しようとする管理会計制度上の動きが現れることがあります。これは、事業部が自身の事業を営むのに必要な投下資本の額を明らかにし、各事業の資本コストを計算することを目的とすることが多いように見受けられます。

(参考)
⇒「業績管理会計の基礎(13)インベストメントセンターの管理 ①投資収益性の評価方法とは

ここで、各事業部に直接紐づけられる、売上債権、在庫、買入債務、個別固定資産、傘下子会社への投融資など、割り付けられる金額だけで、どうにか資本コストの元ネタになりそうな事業別投下資本の金額を捉えることはできないのでしょうか?

もし、経営者が頭の中で夢想するきれいな事業別投下資本の額が、簡単には割り出せず、共通資産(負債・資本)が多額に上る場合は、会計的技法の前に、そもそも技術的にその単位で事業別投下資本による資本コストを割り出すことが不適切なケースに当てはまってはいないでしょうか?

 

■ 共通資産の配賦方法を考える前に共通資産の存在の妥当性を疑え!

経営者と経理担当者は今一度、本社共通資産の配賦という無理を通そうとしていないか、確認頂きたいと思います。ある程度合理的(と本人だけが思っている)な基準で多額に上る共通資産を配賦せざるを得ない場合、それは、B/Sに贅肉が付いている可能性があります。

例えば、使い道が明らかになっていない現預金、過去の負の遺産である不採算事業を本社セグメント内に抱え込んで共通資産としている、無意味な持ち合い株式やダブダブの投融資、積みあがるだけ積上げた利益剰余金など。

つまり、本社共通資産(負債)の配賦可能性を問う前に、そんなに本社共通資産があっていいのかという問題が存在しているのかもしれないのです。例えば、肥大化した本社コーポレートサービス部門にかかる資産など。これは、そもそも会社に遭ってはいけない資産かもしれません。しかも、シェアードサービスにかかるフィーとして各事業部からP/Lで回収をはかることで、資産はどれだけ本社コーポート部門という上から目線でダブダブに滞留しているかを逆に明らかにし、本社コーポレート部門の投下資本採算性を見る、というやり方での管理もアリなのではないでしょうか? 配賦してしまうと本社部門肥大化の様が見えなくなりますよ!

コメント

  1. TK より:

    できることとやるべきことは違いますからね。