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原価計算基準(27)製造原価要素の分類基準 ④操業度との関連における分類 - 変動費と固定費

管理会計_アイキャッチ 原価計算(入門)
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変動費と固定費の間には

形態別分類、機能別分類、製品との関連における分類ときて、今回は操業度との関連における分類になります。操業度との比例的関係の視点から、「変動費」と「固定費」という概念を取り入れて、専ら管理会計の世界で原価管理を試みる際にしばしば用いられる原価分類概念です。

それでは、条文を確認してみましょう。

第一節 製造原価要素の分類基準
八 製造原価要素の分類基準
原価要素は、製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類する。

製造原価要素を分類する基準は次のようである。

(四) 操業度との関連における分類

操業度との関連における分類とは、操業度の増減に対する原価発生の態様による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを固定費と変動費とに分類する。ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。

ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等、又は操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素たとえば電力料等は、これを準固定費又は準変動費となづける。

準固定費又は準変動費は、固定費又は変動費とみなして、これをそのいずれかに帰属させるか、もしくは固定費と変動費とが合成されたものであると解し、これを固定費の部分と変動費の部分とに分類する。

原価計算基準(原文)

これを、縦軸にコスト(金額)、横軸に操業度(台数、時間など)をとって、簡単に図示すると次のようになります。

操業度との関連による分類

この図表の上段が「原価計算基準」に明示的に記述されているものです。下段は教科書に記載されている派生的・補助的なコスト概念になります。

こうした分類に昔は意味がありました

では、操業度に関連する原価分類を順に見ていきましょう。

<原価計算基準に記述があるもの>

変動費:Variable Cost
操業度の変化に対してその発生総額が変化する原価。直接材料費、間接労務費(作業高に依存する時給的賃金部分)が該当。要素の価格、質、経営規模などにより変化するとしても、操業度の変化に対して変化するものでなければならない。操業度の変化に対して比例的変化(原点ゼロから、あるラジアンで直線が引かれる)するものは、特に「比例費」と呼ばれる。この比例費を狭義の変動費とする場合もある

固定費:Fixed Cost
操業度の変化に対してその発生総額が変化しない原価。経営能力の形成と維持に関して発生するので、能力原価(capacity cost)とも呼ばれる

準変動費:Semivariable cost
比例費ではない変動費。原価分解によって、固定費部分と変動費部分に区分けすることができる費用。公共料金の多くは、毎月の一定額を基本料金と、毎月の使用分に従量的な変動額とに分けられるのをイメージするとよい

準固定費:Semifixed cost
全操業度区間に対して固定的ではなく、一定の操業区間でのみ固定的である原価。逆説的に、操業変化に対して連続的な規則的変化を起こさない性質の原価。飛躍費・区間固定費とも呼ばれる

<原価計算基準に記述がないもの>

逓増費:Progressive Cost
操業上昇に伴い比例割合以上に増加する費用。広義では準変動費に含まれる。超過比例費とも呼ばれる

逓減費:Depressive Cost
操業上昇に伴い比例割合以下で増加する費用。広義では準変動費に含まれる。習熟効果(経験曲線)を反映する原価要素に多く見られる

相対的固定費:Relative Cost
操業度をゼロ、すなわち経営を休止したときに、除去することができる固定費

絶対的固定費:Absolute Cost
操業度をゼロ、すなわち経営を休止しても、その発生・支払を回避することができない固定費

ちなみに、逓増費と逓減費は、比例部分と固定部分に分解して、準固定費として計算処理したり、区分線型近似によって比例費として計算処理されたりしていました。過去形で語るのは、ITが発達した現代、Excel関数でも逓増費・低減費は、簡単にそのまま処理できるので、そういう簡便法を今から学習する必要はありません。

また、準変動費も準固定費も、まだITが発達してない時代には、概念だけの存在(イデア)として想定し、予測計算上は固定費か変動費のどちらかにえいやと算入するか、または、それぞれ、固定費部分と変動費部分に仕分けてCVP分析の予測式に反映することをまじめにやっていました。

恐るべきIT。恐るべきExcel。現代では、こういう原価分解をまじめにやるだけ損をする時代になりました。

もう、この辺でオタクな原価分解の話は止めておきましょう。^^;)

操業度とは

変動費と固定費を表すグラフと横軸にある「操業度」とは、「生産設備を一定とした場合における利用度」と原価計算基準には説明が付されています。

例えば、工場の生産能力が増産のための設備投資などがなく、一定期間を通じて不変であると仮定した場合、半分の生産能力を使用して製品を作れば、操業度50%、生産能力の7割を使用したとしたら、操業度70%として、生産能力の使用度をその全体の生産能力に比べて比率的に分かることを前提にした計測値です。単純に、生産能力として、生産可能製品数量(個、台数、キロメータ、トンなど)、または設備稼働時間で測定値とすることが多いです。

ここには様々は語られていない前提が含められています。生産能力は、その生産能力を発揮することができる生産設備を一定期間、一定規模で保持することが条件になっています。この一定期間は、大抵の場合、1年程度とされています。短期利益計画、すなわち、単年度損益予算を策定する際の、CVP分析を当てはめることが想定されているからです。また、標準原価計算制度における標準改訂(標準設定)期間も、おおよそ1年程度とされているのと同じ理由です。

「原価計算基準」では、操業度を「生産設備の利用度」というふうに、生産設備に限定した記述になっています。この定義は、この基準が制定された時代背景が思いっきり反映されていることを忘れてはいけません。

工業化社会に向かう中で、原価計算といえば、ハードウェアによる製品のコストを算出するというのが暗黙の了解だった時代の名残です。たしかに、ものづくりの現場では、機械装置も使用して加工・製造活動が行われますが、まだまだ人間による労働力で生産活動も行われています。それは、加工費配賦のチャージレートとして、工程ごとに機械稼働時間と、労働時間を使い分けることからも窺い知ることができます。

また、「原価計算基準」が相手にしている総原価は、当然販管費を含みます。とすれば、「販売能力」も操業度に使えるようにしないと、販社のCVP分析はできないことになります。ですので、現代風にアレンジするとすれば、操業度を生産能力だけで測定するのではなく、広い概念で考えて、その企業や工程が保持している「経営能力」として捉える方が適用性が高いというものです。

例)
製造部門:生産量、直接作業時間、機械稼働時間など
補助部門:修繕部門における直接修繕時間、動力部門における供給Kw/hなど
事務部門:最大作業処理量(ホワイトカラーの文書作成量)、作業処理時間など
販売部門:最大受発注処理可能数量など

ちなみに、CVP分析の観点から、操業度を、製品との関連性で考えた場合、

①販売または生産数量で捉える
②販売または生産金額で捉える

という、数量カウントか金額メジャーで考えるかのテクニカルな差異については、下記シリーズを参考にしてみてください。

ここまで、「変動費」「固定費」「操業度」について説明をしました。次回は、原価分解(固変分解)の方法論などについて考えてみたいと思います。

みなさんからご意見があれば是非伺いたいです。右サイドバーのお問い合わせ欄からメール頂けると幸いです。メールが面倒な方は、記事下のコメント欄(匿名可)からご意見頂けると嬉しいです。^^)

原価計算基準(27)製造原価要素の分類基準 ④操業度との関連における分類 - 変動費と固定費

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