親子上場の是非を再び ソフトバンク、鴻海の事例から(4)ソフトバンク債、子会社の連帯保証が東証の独立性審査の影響を受けること必至!?

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■ ソフトバンク親子上場の一番の影響点はむしろ債券市場にあり!

経営管理会計トピック

前回、株主に報いる財務戦略と子会社上場に伴う少数株主との利益相反の関係について深堀りしてみました。今回は、新聞報道に基づいて、ソフトバンクのエクイティ・ファイナンスとデッド・ファイナンスを取り混ぜた妙手を紐解いていきたいと思います。本当にSBGは手練れの財務戦略家が多く在籍していることが窺えます。

親子上場というと、株式市場にばかり目が行くのですが、ソフトバンクについては、それまでのデッド・ファイナンスの影響の広範さから、むしろ債券市場へのインパクトの大きさの方を注視するべきでしょう。

2018/1/27付 |日本経済新聞|朝刊 (ポジション)親子上場、連帯保証が焦点 ソフトバンク債 審査に不安、格下げ圧力かかる見方も

「ソフトバンクグループ(SBG)の親子上場構想が、社債市場で波紋を広げている。負債に頼らない資金調達は財務悪化の歯止めにつながるが、社債投資家は手放しで喜べないようだ。東京証券取引所による上場審査次第では、格下げ圧力がかかるとの懸念が浮上しているためだ。利回りを得られる貴重な銘柄として保有者が多く、市場の関心は高い。」

(下記は同記事添付の「「親子上場」の反応は限定的」を引用)

20180127_「親子上場」の反応は限定的_日本経済新聞朝刊

上記CDSの推移からも、ソフトバンク債の信用度には、携帯子会社の上場が報道された前後で特に信用力が急激に変動しているわけでもありません。

記事によりますと、

日本格付研究所(JCR)の本西明久チーフアナリストの元には問い合わせが相次いでいるものの、本西氏は「重要子会社として一体的に経営されるなら、格付けは変わらない」と回答しているとか。それでも、市場関係者の間では親会社SBGの格下げにつながるとの見方が浮上しているとか。

 

■ SBG発行社債に関する投資家の見方について

一般的に、子会社のIPOで手に入れた資金が上場親会社SBGの有利子負債返済の原資になれば、SBGの財務体質改善につながり、そのままSBGが発行していた社債の価値は上がると考えるのが常道らしいのですが、実態はそれほどシンプルではないようです。

(下記は同記事添付の「ソフトバンク債、投資家の論点」を引用)

20180127_ソフトバンク債、投資家の論点_日本経済新聞朝刊

1)調達資金の使途
孫氏が次の10兆円ファンド設立を声明しているなど、まだまだSBGの資金需要は旺盛で、それは外部借入や社債発行で賄われると考えた時、今回のIPOでの想定調達金額は約2兆円と概算されています。しかし、このスキームは前回まで議論していた新公開子会社の少数株主の利益に反すると共に、既存のSBGの株主の評価指標まで影響を及ぼしてしまう点に留意する必要があります。

IPO分は、SBGが株式市場で放出した子会社株式の対価なので、これを他の傘下にある事業に再配分することは問題ありません。ただし、引き続き、携帯子会社ソフトバンクの配当金もそういう事業買収の原資に当て込もうというのなら、携帯子会社ソフトバンクの少数株主は、ソフトバンクへの事業再投資を優先したい訳で、ここで親会社と少数株主間でソフトバンクの利益の使途をどうするかという点で利益相反が起こる可能性が高くなります。

2)資金調達手段の多様化
これは、「子会社の価値可視化。調達の選択肢増える」として、歓迎する向きがありますが、前段の「子会社の価値可視化」は、いわゆるコングロマリット・ディスカウント分をはがした資金調達することを歓迎していることになります。そこだけ見るとリーズナブルに感じますが、その分、SBGの株主価値は、上がるのでしょうか、それとも下がるのでしょうか?

子会社が部分上場することで、コングロマリット・ディスカウントを免れて株式市場から資金調達できました。はい、これは親会社の一時的利益としてはOK。しかし、その後の二重上場となった分、親会社の株式評価は、連結子会社の時価総額が増えた分、プラスになると考える見方と、連結分から独立して評価されたとしてマイナスになると考える見方の2つが世の中には存在するのです。

3)「返済原資」の一部外部流出
SBGが発行する既存のソフトバンク債の返済原資が子会社の少数株主への配当金として社外流出するとして、このIPOをソフトバンク債のリスクを増加させるものとしてマイナス評価する考え方があります。これも、少数株主利益を無視したSBG寄りの見方に過ぎません。そもそも子会社の配当金を「返済原資」と考えるのがおかしいという見方もあるのです。

4)東証による「独立性」審査
実は、既存のソフトバンク債が抱える最大の問題点はここにあると筆者は考えています。

まず、事実確認として、新聞記事によりますと、持ち株会社であるSBGが発行する社債は、携帯事業会社ソフトバンクが利払いの「連帯保証人」となっている保証付き普通社債の形で発行されているのです。円貨建てだけでその金額は約2兆円に上ります。これが、投資家の買い安心につながっていました。今回、ピッタリIPOでの調達額とほぼ同規模になります。

東証による携帯事業会社ソフトバンクの上場審査では、この連帯保証が大きな審査ポイントとなることが予想されています。なぜならば、子会社の親会社からの経営の独立性の担保が、少数株主保護の観点から厳しくチェックされるからです。東証が大株主である親会社の債務保証を解除することを上場承認の条件にした場合、SBGが発行する社債の信用度がガラッと変わってしまうのです。

5)格付け会社の判断
5000億円/年と言われている大きな純現金収支の黒字を有する携帯事業子会社ソフトバンクの連帯保証が解けたSBG債は、格付けや利回りが見直される可能性が高い状態にあると言えましょう。

 

■ 投資家の論点と評価について一言いいたい!

前章では、主に新聞記事で紹介された論点にコメントを付していきました。

「今のところ社債市場に波乱は見られない。SBGの信用力を示す利回りの対国債上乗せ幅や、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は15日の構想表面化以降も横ばいだ。国内投資顧問の担当者は「懸念があっても高い利回りは魅力で簡単に手放せない。売り買いの判断は社内で議論を続けている」と明かす。」

というのが記事にある国内投資顧問担当者の談。

格付け会社各社はそれぞれで判断するということですが、間違いなく、子会社上場に際しては、独立性の維持が重要な審査項目であることに間違いありません。それが社債発行条件に直結するのですから、格付けに影響がないわけがないと思うのは筆者だけでしょうか。

さて、SBGの練達のプロ財務戦略担当者のお手並み拝見です。

以下は、そのプロ技の本のご紹介の一部になります。ご参考ください。(^^)

(参考)
⇒「ソフトバンク「10兆円ファンド」資産膨張 市場に戸惑い 株価への影響 見極め難しく
⇒「ソフトバンクのアーム買収に伴う資金調達戦略の顛末(前編)奇手を使ったデッドファイナンスは成功した!? 日本経済新聞まとめ
⇒「ソフトバンクのアーム買収に伴う資金調達戦略の顛末(後編)巧妙なエクイティファイナンスが呼び込んだ波紋とは? 日本経済新聞まとめ
⇒「ソフトバンクのレバレッジ経営、アーム・ホールディングス買収を2重のキャッシュフローで読み解く!
⇒「ソフトバンク資金調達、個人向け社債の好機探る 今期 「アリババ株」担保も視野

(連載)
⇒「親子上場の是非を再び ソフトバンク、鴻海の事例から(1)親子上場のブーム再来の流れを中心にまずは株式市場の状況を確認する
⇒「親子上場の是非を再び ソフトバンク、鴻海の事例から(2)ソフトバンク親子上場に伴うコーポレートガバナンス問題とコングロマリット・ディスカウント問題を斬る!
⇒「親子上場の是非を再び ソフトバンク、鴻海の事例から(3)本当に株主に報いる財務戦略とは 少数株主との利益相反解消策まで考える
⇒「親子上場の是非を再び ソフトバンク、鴻海の事例から(5)鴻海の世界最適地上場は日本の電機メーカーの対極にあり!

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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