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業務プロセスの管理(1)処理フローの連続として作業を見る

経営管理_アイキャッチ 組織管理(入門)
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組織における分業と標準化

「業務プロセス」という用語は、コンサルティング現場でもよく用いられるので、そのまま飾らずにとりあえずは使用することにしています。筆者自身の持つ個人的な語感からは、「業務」と「プロセス」は同じことを意味しているので、「馬から落馬」のように、重言のひとつという認識です。

筆者の頭の中では、これを、「ビジネス・フロー(Business flow)」「作業フロー(task flow)」「業務フロー(work flow)」という言葉に脳内変換しています。つまり、分権化された組織内で実施されるお仕事というのは、川や水の流れに例えながら人の脳内でイメージ化されることが多いということです。

組織管理(入門)におけるここまでの話の流れを再整理させて頂きます。

  1. 組織は、より大掛かりな事業を実施するためと、より大きな利益を得るために、規模を大きくする誘因が働きがちである
  2. 組織がより大きな成果を上げるためには、より詳細化された各構成メンバの仕事の成果を統合する必要がある
  3. 構成メンバの仕事の成果を最大化するためには、分業体制が適切に運営されねばならない
  4. 分権化された組織内では、各構成メンバ間による(分業化された)お仕事の調整が必要になる
  5. 調整は、「標準化」という事前調整と、「ヒエラルキー」による命令という事後調整に大別される

前回まで、組織内で行われる分業に対する事前調整として、「標準化」を取り上げていました。標準化を構成する要素は、次の5つです。

組織管理(入門編)標準化の対象とは
  1. インプット
  2. プロセス
  3. アウトプット
  4. インターフェース
  5. 評価基準

関連記事 標準化とは - 分業を前提として大きくなった組織を運営するために必要なこと

今回から、標準化対象のひとつであった「プロセス」を、仕事の流れをどうやって形成するかという視点から取り上げていきたいと思います。

組織内の仕事をひとつの処理プロセスに例えて考える

お仕事というのは、いわば、「起承転結」のような一連の流れのように考えれば、いろいろと創意工夫のヒントが見つかるかもしれません。

  • 起:お客のニーズを捉える
  • 承:顧客ニーズと自社提供価値(ケイパビリティ)をひもづける
  • 転:自社リソースを使って、実際に付加価値を生み出す
  • 結:顧客に提供物(製商品/サービス)を届ける

この場合、起承転結の各ステップが絶妙に連結されていて、各ステップでやるべきことがきちんとなされて、それでいて、全社としてスムーズに仕事が進むことが理想的です。まさしく、分権化された担当者各員が己の役割を120%果たし、会社全体としても、全体最適化が図られ、各員の努力の結晶がそのまま顧客に提供価値として減耗することなく受け入れられるのが理想でしょう。

(注:筆者には「全体最適化」はイデア(理想像)であって、決して実現しないものだし、それを究極の目標とすると現場管理に逆作用してしまうという持論があります。それについては、中級以上のシリーズで触れていきたいと思います)

会社内の仕事を一連の流れ作業のように見立てて、それぞれの作業設計をすることは、経営管理の世界ではよく知られているやり方です。筆者がすぐに思いつくものを挙げただけでも、次のように多種多様なツールやメソッドがあります。
(中身は同じもので、名前だけ異なるものがあるかもしれませんが)

  • トヨタ生産方式
  • リーン生産方式
  • TOC(theory of constrains):制約条件の理論、制約理論
  • リエンジニアリング

フレデリック・テイラーが科学的管理法として、20世紀初頭、ストップウオッチを片手に、鉄鋼会社の主に生産現場を舞台に、

  • 時間研究:生産工程における標準的作業時間を設定し、これに基づいて1日の課業を決定するための研究
  • 動作研究:作業に使う工具や手順などの標準化のための研究

に明け暮れて、非効率な生産や組織的怠業を退治していった延長線上に、現代的な組織管理の主眼となる「ホワイトカラーの生産性向上」まで、解決施策探求の方法論はそうは変わっていません。AIとかIoTを有効活用して、大量引退する熟練工の技能伝承をつつがなく実施しようという試みも、古くはテイラーにまで遡ることができます。

ハードウェアのものづくり現場から始まったこうした作業管理や工程管理の考え方は、きわめて普遍的なものとして受け止められており、このシリーズでも、まずは視覚的にもイメージしやすいハードウェアの生産管理をケースに用いて、業務プロセスの有効な管理方法について考えていきたいと思います。

工程管理・生産管理のお約束を確認

ハードウェアのものづくり現場における工程管理・生産管理を例に、業務プロセス管理を考えることの普遍性や説明力の高さは上記の通りですが、実際に、何と何をメタファで置き換えているのが、ここでは言語化して確認しておきます。

説明を分かりやすく、抽象概念をハードウェアという具象化して解説を試みるのですが、そもそものその抽象概念の対象範囲が何かを知らされていないと、このメタファが有効にはならないので。

企業が産出するアウトプットは、ハードウェアとしての製品はもちろんのこと、金融やサービス業の場合は、無形のサービスが顧客に提供されます。また、IT産業では、ソフトウェアが顧客に提供されます。

ソフトウェアは、ハードウェアに近い形態として、パッケージソフトとして、箱に記録メディアを梱包して、店頭で小売りされることもありますし、ネットからダウンロードされることで入手することもできます。また、組み込みソフトの場合は、他のハードウェア製品に含まれていることになりますし、大きなプラント制御やインフラの運営に関わるものは、人(エンジニア)が、現場まで派遣されて、そこでコーディングや保守・運用に携わったりします。

あるいは、コンサルティングファームもその一員なのですが、知的財産や無形資産のように、ハードウェアやソフトウェアという知覚できる有形の(tangibleな)媒体を要しない提供物を顧客に引き渡すことを生業にしている企業もあります。

顧客に提供される成果物(アウトプット)はどういう形態であれ、それを提供する企業(組織)側としては、社内で必ずといっていいほど、何らかの分業が行われ、作業の一定の流れが観察されるものです。

作業の流れを何として捉えるか

次に、社内における作業の流れをどうやって見分けるかという問題について考えています。前章で触れたとおり、企業が顧客に提供する成果物がいつ目に見えるハードウェア(製商品)とは限らないので、社内の仕事の流れ、作業の流れも、ときには目に見え、ときには目に見えないものかもしれません。何か、一定の法則のようなものはないものでしょうか。

自動車や電機産業は比較的分かりやすいかもしれません。電子部品や金属製の筐体(きょうたい)を外部から購入し、社内の加工工程において、順番に、より小さなモジュールからより大きなモジュールが組み立てられ、最終的に完成品(自動車だったり家電だったり)が仕上がり、それを顧客に納品することになります。

そこでは、仕事や作業は、前工程からインプットとなる部品や半製品・仕掛品を受け取り、自工程でなんらかの加工作業を行い、次工程に作業結果を引き渡すというイメージが脳内にくっきりと浮かび上がることでしょう。その場合、各担当組織間に、顧客に最終納品されるべき製商品が徐々に形を変えながら、まるでリレーのバトンのように、受け渡されている映像そのものが、仕事や作業の流れとして認知できるはずです。

一方で、サービス業、筆者が現時点で属しているコンサルティング業を例にとります。クライアントから何らかの課題を与えられるところから、作業が始まります。その課題を解決するために、いろいろな検討作業を行います。ブレインストーミングだったり、顧客ヒアリングだったりします。そういう作業を経て、最終的には検討結果を報告としてまとめて顧客に提示します。顧客がその報告に納得すれば一連の仕事は終了します。

この場合には、最終報告書を紙や電子媒体に複写して、納品することも法的な見地から実施されるのが常ですが、究極的には、口頭での説明で済ませたり、実際の行動(顧客のマニュアルを修正してするとか、顧客の作業自体を新しいものに置き換えるなど)で結果が明らかになったりする場合もあるので、必ず有体物に転写された成果物が必須というわけではないのです。

このように、仕事や作業の流れは、いろいろな形態をとって、人間に知覚されますので、本体か触媒として何か別の転写物を活用するか、その対象を明確に意識し、ルール化して会話しないと、この種の議論は最初の入り口で空回りしかねないのです。はい、コンサルティングの現場ではよくありがちなことです。

(まとめ)作業の流れを知覚する方法を整理

以上の説明を踏まえ、一枚物のチャートで、仕事・作業の流れの把握方法について、読者の方々とのお約束を取り付けてから、このシリーズの後段の説明に入りたいと思います。

作業の流れ

モノ(ハードウェア)を社内で作っている作業の流れを、

  1. 部門目的:どの部門がどういう作業目的を持っているかの相関関係
  2. 作業順序:モジュール組立が終わらないと完成品ができないという物理的・時間的制約
  3. 意思決定:人間が行う情報処理や意図的な活動意思の連関
  4. 情報:組織間・担当者間でやり取りされる作業指示の表す情報体の流れ
  5. モノ:最終成果物を組成する構成物の物理的・時間的流れ

という風に要素分解してみました。世の中の教科書は、この5要素のいずれかを用いて作業や仕事の流れを説明していることが多いです。どれが正しいというものではなくて、説明のしやすさで、個々の論点において使い分けられます。ご参考ください。

なお、設計書に描かれている製品イメージがリアルなモノに転写されるという発想は、藤本隆宏教授の「ものづくり経営学」に大きな感銘を受け、その通りだなと感じているので、そのまま描画させていただきました。

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みなさんからご意見があれば是非伺いたいです。右サイドバーのお問い合わせ欄からメール頂けると幸いです。メールが面倒な方は、記事下のコメント欄(匿名可)からご意見頂けると嬉しいです。^^)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、過去及び現在を問わず、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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