リース取引の類型を知る
引き続き、リース取引における会計処理を仕訳を中心にサマリします。Finance Lease か Operating Lease か、借手か貸手かで場合分けをして、リース取引の全容を確認したいと思います。
- Finance Lease – lessee
- Operating Lease – lessee
- Sales-Type Lease – lessor
- Direct Financing Lease – lessor
- Operating Lease – lessor
なお、「Finance Lease – 借手」のケースは、前回の復習になっています。
前提知識は、前回の解説をご参照ください。
Finance Lease 借手 – 実質が売買
【Example】
lease term: X3年1月1日~X5年12月31日(3年間)
Fixed payments: 毎期末に支払400
Discount rate: 10%
所有権が移転しない Finance lease
原資産の耐用年数は3年
取得日(リース開始日)の会計処理
期間3年10%の年金現価係数は、2.48685 なので、
annual rent = 400 × 2.48685 = 995
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Right of use asset | 995 | Lease liability | 995 |
リース料支払い時、決算時の会計処理
年度 |
期首債務額 |
利息発生額 ②=①×10% |
支払額 ③ |
債務返済額 ④=③-② |
期末債務額 ⑤=①-④ |
---|---|---|---|---|---|
X3 | 995 | 99 | 400 | 301 | 694 |
X4 | 694 | 69 | 400 | 331 | 363 |
X5 | 363 | 37 | 400 | 363 | 0 |
合計 | – | 205 | 1200 | 995 | – |
初年度を飛ばして、 X4年12月31日の仕訳は、次のようになります。
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Interest expense | 69 | Cash | 400 |
Lease liability | 331 | ||
Amortization expense | 332 | Accumulated amortization | 332 |
Operating Lease 借手 – 実質が賃貸借
【Example】
Lease term: X3年1月1日~X5年12月31日(3年間)
Fixed payments: 毎期末に支払400
Discount rate: 10%
Operating lease に該当
取得日(リース開始日)の会計処理
Operating lease の場合も、リース物件を一定期間使用できる権利 right of use(使用権資産)を取得し、その期間のリース料の支払義務を lease liability(リース負債)として認識することは、 finance lease と考え方と仕訳は同じになります。
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Right of use asset | 995 | Lease liability | 995 |
リース料支払い時、決算時の会計処理
まずは、 リース料の費用計上の方から。
operating lease は、資金調達の性格より、資産をレンタルして使用する性格の方が強いため、リース費用の認識は、定額法を用います。
ちなみに、リースとレンタルは、借手用に特別に調達したものか、貸手の在庫を充当するか等、厳密には異なる商取引であるとも考えられています。TACテキストでは、「資産をレンタルして使用する性格の方が強い」という説明があり、その表現に準拠しています。
operating lease は、リース期間にわたって、均等に費用負担させるという意識を強く維持する必要があります。最初の数ヵ月の間、rent が無料となる free rent の取り決めがあったり、各年度の rent 金額が可変な契約になっている uneven payments(変動レント)の取り決めがあったとしても、 lease term にわたって、均等に費用を計上することなります。
ここでは、現金主義ではなく、発生主義、ちょっと難しくいうと、価値費消の事実の発生(リース期間にわたって、リース物件を使用し続けているので、その期間については均等に価値費消の事実が起こり続けているという解釈)に伴う発生主義を見解に基づくものです。
Annual rent expense (lessee) = Total rents ÷ Lease term (year)
一方で、right of use(使用権資産)の償却(amortization)は、effective interest method(利息法)を用いて、reduction of principal を求めます。
よって、初年度を飛ばして、 X4年12月31日の仕訳は、次のようになります。
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Lease expense | 400 | Cash | 400 |
Lease liability | 331 | Accumulated amortization | 331 |
operating lease でも、right of use と、lease liability をB/S計上せずに、rent expense のみI/S計上する方法が認められています。その条件は、下記の通り。
- リース期間が12か月以内 かつ、
- lessee が purchase option を行使しないことが合理的である
Sales-Type Lease 貸手 – 実質が売買
理論的背景
考え方として、リース開始日から、lessee に所有権が移転し、原資産の支配を獲得しているとみなし、lessor はリース開始日に原資産を売却したとする会計処理を行います。
net investment in the lease(借手にとってのリース料総額の現在価値)の額を lease receivable(リース債権) としてB/S計上します。その際、原資産の帳簿価額との差額を売却損益としてI/S計上します。
加えて細かいルールを2つ追加です。
無保証の残存価額がある場合、その現在価値をB/S計上し、 net investment in the lease との合計額と、lease receivable の差額を売却損益としてI/S計上します。
Initial direct cost(初期直接費用)が発生している場合、
- リース開始日に売却損益が発生する場合、全額その日に expense 計上する
- リース開始日に売却損益が発生しない場合、リース期間にわたって償却する
【Example】
Lease term: X3年1月1日~X6年12月31日(4年間)
Fixed payments: 毎期末に支払7,000
Initial direct cost: 450
Carrying value: 22,000
Fair value: 24,255
The present value of an ordinary annuity for 4 years at 6%: 3.465
The present value of $1 for 4 years at 6%: 0.7920
リース開始日の会計処理
Lease receivable = 7,000 × 3.465 = 24,255
売却益 = 24,255 – 22,000 = 2,255
initial direct cost は、売却損益が発生しているので全額費用処理
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Lease expense | 450 | Cash | 450 |
Lease receivable | 24,255 | Gain | 2,255 |
Asset | 22,000 |
TACの講師の方の口頭説明では、固定資産売却で売却益を計上する際の仕訳の形と同じと覚えるのがよいとのこと。なるほど! ちなみに、繰り返しになりますが、売却益は現在価値と簿価の差額になります。
リース料受取時、決算時の会計処理
lease receivable の回収と受取利息に受取金額を分割する必要があります。大体は、受取額から受取利息を先に引いて、lease receivable の回収額を差額で求めます。もちろん、利息計算は、effective interest method で行います。
X4年12月31日の仕訳は、 その時点の lease receivable の残高に利率を掛けると算出できて、
受取利息 = 24,255 × 6% = 1,455
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Cash | 7,000 | Interest income | 1,455 |
Lease receivable | 5,545 |
Direct Financing Lease 貸手 – 実質が売買
理論的背景
sales-type lease と同様、基本的に資産売却に準じた処理になります。ただし、異なる点は、direct financing lease の場合は、金融取引(融資)の性格が強くなり、リース開始日にあたって、lessee が原資産の支配の獲得をしたとは考えません。
よって、この取引に付随して発生する以下の3つの損益項目についての会計処理はつぎのようになります。
- 売却益:繰り延べられ、リース期間にわたって償却処理
- 売却損:直ちに損失処理
- initial direct cost(初期直接費用):繰り延べられ、リース期間にわたって償却処理
【Example】
Lease term: X3年1月1日~X6年12月31日(4年間)
Fixed payments: 毎期末に支払7,000
Implicit rate: 6%
Carrying value: 24,255
Fair value: 24,255
The present value of an ordinary annuity for 4 years at 6%: 3.465
The present value of $1 for 4 years at 6%: 0.7920
リース開始日の会計処理
Lease receivable = 7,000 × 3.465 = 24,255
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Lease receivable | 24,255 | Asset | 24,255 |
リース料受取時、決算時の会計処理
lease receivable の回収と受取利息に受取金額を分割する必要があるの同じです。
X4年12月31日の仕訳は、 その時点の lease receivable の残高に利率を掛けると算出できて、
受取利息 = 24,255 × 6% = 1,455
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Cash | 7,000 | Interest income | 1,455 |
Lease receivable | 5,545 |
Operating Lease 貸手 – 実質が賃貸借
理論的背景
貸手が operating lease する場合、その経済的実質は、賃貸借契約となると考えられます。lessee との間の取引は、受取リース料をI/Sに収益計上しておしまいになります。別途、保有資産の減価償却などは、適切に行っておいてください。USCMAの問題では、その償却方法まで仕訳選択問題として出題されるかは不明ですが。
lessee の場合と同様、free rent や uneven payments 等の取り決めがあっても、毎期の rent 金額は、一定額となるように、以下の式で求めます。
Annual rent revenue (lessor) = Total rents ÷ Lease term (years)
【Example】
Lease term: X3年1月1日~X5年12月31日(3年間)
Fixed payments: 毎期末に支払400
Initial direct cost: 90
Carrying value: 900
耐用年数も3年
リース開始日の会計処理
initial direct cost を資産計上します。
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Asset | 90 | Cash | 90 |
リース料受取時、決算時の会計処理
rent revenue の計上と、資産の減価償却計算を行います。
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Cash | 400 | Rent revenue | 400 |
Depreciation expense | 330 | Accumulated depreciation | 330 |
以上です。お疲れさまでした。^^)
コメント