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そのおっさん、米国公認管理会計士(USCMA)のテキストで 税効果会計 Interperiod Tax Allocation を学習する

管理会計_アイキャッチ 米国公認管理会計士
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そもそもの税効果会計の意味とは

I/S (P/L) が提供する期間損益計算情報は、そもそも、発生主義会計をベースに、利益の平準化を行い、企業の正常的な収益性を示すことを心がけています。

極端な例え話をすると、大規模な建物の取得・建築の費用を支払った会計年度だけが、大きな赤字決算になって、その建物を使ってビジネスを営んだ会計期間が、大きな黒字決算になっていては、その企業の正常的な収益性が測定できていないといえます。

そこで、建物の取得原価を減価償却計算を経て、各会計年度に期間按分することで、期間損益の平準化を図ろうとします。

同じことが、税金支出コストにも言えます。

結論から申し上げると、税効果会計を適用しないと、支払税金は、実際に支払があった会計期間に「現金主義」で I/S (P/L) に計上されてしまいます。

発生主義で I/S を報告したい財務会計 Financial income (book income) と、税務会計 Taxable income における、利益と課税所得のカウントの仕方のズレが、時間軸上で発生する、すなわち、一時差異 temporary differences について、いわゆる、経過勘定と同じ所作で期間損益計算の目的を全うしようというのが税効果会計の目的になります。

税効果会計 の計算の仕方

経過勘定と同様に、会計上の費用・収益の認識のタイミングと、経過勘定が生まれてしまう現金(に同等する対価)のやりとり分を、会計側が税務に先んじて認識してしまった場合は、その差分を負債に計上し、逆に、会計側が税務に遅れて、まだ認識していないのに税務上の支払があった分は、資産に計上することで、I/S には、できるだけ実効税率に見合った税金コストを差し引いた当期純利益の表示を目指します。

  • Future deductible amounts 将来減算一時差異 → 将来の課税所得を減額させる
    • 会計上は当期費用だが、税務上は次期以降の損金 →将来の控除対象額を増やす
    • 税務上は当期の益金だが、会計上は次期以降の収益 →将来の課税所得を減らす
  • Future taxable amounts 将来加算一時差異 → 将来の課税所得を増額させる
    • 税務上は当期の損金だが、会計上は次期以降の費用 →課税を将来に繰り延べ
    • 会計上は当期収益だが、税務上は次期以降の益金 →課税を将来に繰り延べ

将来「減算」という言葉遣いは、税法の立場から見たもので、例えば、将来減算一時差異の費用・損金を例にすると、

  1. 今期、税法が定める減価償却費以上の額を会計的には期間費用扱いをして前払いする
  2. この前払分は、損金として否認されているわけだから、資産計上しておく(→繰延税金資産)
  3. 税法上、損金として認められる時期が到来し、繰り延べ税金資産を取り崩す
  4. 将来の課税所得が減る
  5. 将来の支払税金が減る

先に会計的費用として支払って、将来の課税対象所得を減らす効果があるから、これを「将来減算一時差異」と呼びます。それは、費用(損金)と収益(益金)からなります。

その逆に、会計的利益を先に計上してしまった分は、将来の課税所得を増やすことになるので、これらは、「将来加算一時差異」ということになります。

USCMAは、英語の試験なので、これらのまとめを英語でしたためます。

  Revenue Expense -> B/S
Future deductible amounts Taxable before recognized in book Deductible after recognized in book multiplied by tax rate  Deferred tax asset (DTA)
Future taxable amounts Taxable after recognized in book Deductible before recognized in book multiplied by tax rate  Deferred tax liability (DTL)

Deductible taxable か、after なのか before なのかと組み合わさって、2×2=4のパターンになっているだけです。

複雑ですよね、、、分かりました。日本語のチャートでこれをそれぞれに分解してみます。

将来減算一時差異-費用 当期 来期
会計 費用
税務 損金
将来減算一時差異-収益 当期 来期
会計 収益
税務 益金
将来加算一時差異-費用 当期 来期
会計 費用
税務 損金
将来加算一時差異-収益 当期 来期
会計 収益
税務 益金

小生の年齢がばれますが、日本で税効果会計が導入された直後の2000年代初頭、繰延税金資産を積んで、むりやりP/Lの当期純利益を黒字にしていたケースが散見されたことを鮮明に記憶しています。

将来の収益性の見込み(税法上、プラスの課税所得を得る見込み)がない場合、税金を前払いする能力が欠けているため、繰延税金資産を計上することが本当はできません。当局との知恵比べが続く期間を経て、現在は、極端に裁量的な会計処理は本当にできない感じになっています。

ですので、4パターンの内、「将来減算一時差異-費用」の計算処理だけを暗記して、後の3つは、その反対、反対の反対、という風に、頭の中で再処理をして、仕訳を作るようにしています。ご参考まで。

わかりやすい解説シリーズ「税効果」 第1回:税効果会計とは
税金・税効果について解説します。第1回では、税効果会計とはについて説明します。

計算事例で税効果会計の4パターンを頭に入れる

実例があったほうが頭に入りますよね。

Warranty liability 製品保証引当金 ~ Future deductible amounts – expense

この種の引当金(100)は、引当計上時には損金としては否認され、実際の補修が実施された年度になってからでないと、損金処理されません。その間を、繰延税金資産でしのぎます。

  • 差異発生時
account debit account credit
Deferred tax asset 100 Income tax expense – deferred 100
  • 差異解消時
account debit account credit
Income tax expense – deferred 100 Deferred tax asset 100

Unearned rent 前受レント ~ Future deductible amounts – revenue

家賃を店子から2年分まとめて前払(300)してもらった場合、会計的には期間按分するのが常識ですが、税法では、現金主義なので、受取時に全額益金としてカウントします。その認識ギャップが生じている間は、その差額を資産に計上してやり過ごします。

  • 差異発生時
account debit account credit
Deferred tax asset 150 Income tax expense – deferred 150
  • 差異解消時
account debit account credit
Income tax expense – deferred 150 Deferred tax asset 150

Depreciation 減価償却費 ~ Future taxable amounts – expense

USCMA試験問題でお馴染みの、会計上は、straight line method で償却計算を行うが、税務上は、Modified accelerated cost recovery system (MACRS) 修正加速原価回収法 を用いる場合は、償却開始の初期段階(耐用年数の初期段階)では、損金 > 費用 となるので、これ(差額は50とする)を調整する必要があります。

筆者にとっては、MACRSの計算問題の方が怖い存在ですが、、、よく間違えるんです。^^)

費用の方が過少になるため、差額を繰延税金負債に寄せておきます。

  • 差異発生時(初期段階)
account debit account credit
Income tax expense – deferred 50 Deferred tax liability 50
  • 差異解消時
account debit account credit
Deferred tax liability 50 Income tax expense – deferred 50

Installment receivable 割賦未収金 ~ Future taxable amounts – revenue

固定資産等を当年と来年の2年での割賦販売(400)とした場合、会計上は販売基準で全額当期の収益となるのですが、税法上は割賦基準が認められている場合、差異(200)が生じます。当期に認識できない収益はいきおい、負債に待避させておく必要があります。

  • 差異発生時
account debit account credit
Income tax expense – deferred 200 Deferred tax liability 200
  • 差異解消時
account debit account credit
Deferred tax liability 200 Income tax expense – deferred 200

事例と共に、4パターンを記憶することをお勧めします。

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