現在価値のここまでのまとめ
例えば、5年後の10,000円は、年利5%の世界を仮定すると、現在いくらの価値があるかを計算するのが、現在価値(Present Value)というものでした。異時点間の貨幣価値を比較するためには、貨幣の時間価値=金利 を用いて計算します。
ここで用いられる金利に関する仮定(出題の前提)としては、
- 年利である(1年間の利息を計算するもの)
- 複利である(「元本+前年までの利息の合計」に対して効果がある)
- 当期末に金利が計算される
現在価値(Present Value)を数式で表すと、
PV:現在価値、FV:将来価値、r:利子(年利)、n:期間(年)という定数で表した場合、
$$FV = PV \times (1 + r)^n$$
と定義できます。ここから、現在価値(Present Value)を求めるためには、
- Principal(元本、元金)
- Interest rate(利子率)
- Time(期間)
の3要素を考慮する必要があることがわかります。
現在価値(Present Value)と将来価値(Future Value)の関係は次のように表すことができます。
現在価値(Present Value) → 複利計算 → 将来価値(Future Value)
将来価値(Future Value) → 割引計算 → 現在価値(Present Value)
USCMAの試験での出題にあたっては、現在価値や将来価値を求める公式を暗記して使用する必要はありません。系数表から、該当する利子率と期間の組み合わせで得られる係数に元本を掛け算してあげることで求まるようになっています。
例えば、手元にある 50,000円の元本(元金)を、年利5%で、7年間運用した後の将来価値(Future Value)を求めたい場合、
$$50,000 \times (1 + 0.05)^7 = 70,355$$
という公式を使っても算出することができますが、
$$50,000 \times 1.40710 = 70,355$$というふうに、元本に適切な系数を掛け算してあげるだけでも答えを求めることができます。
年金将来価値と年金現在価値
これまでは、現に手元にある元本(元金)である 50,000円 とか、7年後の 70,355円 という残高、そこにある金額の時間軸を超えた貨幣価値を見てきました。これを応用して、毎年一定額の支払いがあるキャッシュ・アウト・フローや、毎年一定額の受け取りがあるキャッシュ・イン・フローの現在価値や将来価値を簡単に求める方法はないものでしょうか。
例えば、これから10年の間、毎年10,000円の振り込みがある年金の現在価値や将来価値を求めたい場合が該当します。
もちろん、毎年のキャッシュ・フローを年ごとに分解したうえで、前章でおさらいした方法を用いて、年ごとの現在価値や将来価値を算出後、最後に10年分すべてを足し合わせることでも答えを求めることができます。
それを容易にしたものが、系数表であらかじめ、毎年一定額の受け取りや支払いに伴うキャッシュ・フローの現在価値や将来価値を求める係数を出しておいて、それを元本に掛けることで算出する方法です。
まずは、来年から毎年1万円を7年間、支払い続けた(積み立てた)場合のこの年金の7年後の将来価値を計算してみます。7年間は年利5%で運用できるものと仮定します。
下記に、年金の将来価値(Future Value)を求める際に使用する「 年金終価表(Future Value of an ordinary annuity table) 」をExcelでハンドメイドしたので、そちらを掲載します。
年利5%と運用積み立て期間の7年がぶつかるところにある係数は、8.14201
年金の将来価値 = 10,000円 × 8.14201 = 81,420円 となります。
これを現実的な直感によって、数字の妥当性を検証してみます。7年にわたって1万円ずつ積み立てるのですから、積立金額の総計は7万円になります。積立期間中に、積立金は5%の利子率(しかも複利で計算される)で運用されるので、
年金のFV = 81,420円 ー 70,000円(積立金合計)= 11,420円 となり、
11,420円は、7年間の間、5%で積立金を運用した利息合計、と考えられます。実際の積立金の合計より、7年後の将来価値が上回っているのは、積立金の運用益が見込めるからと考えるのです。
では逆のパターンで、来年から7年にわたって、1万円ずつ年金を受け取れるとしたら、その年金の現在価値はいくらなのかを算出してみたいと思います。このケースでは、年金の現在価値(Present Value)を知るために、「 年金現価表(Present Value of an ordinary annuity table) 」を用います。
年利5%と年金受け取り期間の7年がぶつかるところにある係数は、5.78637
年金の現在価値 = 10,000円 × 5.78637 = 57,864円 となります。
これを現実的な直感によって、数字の妥当性を検証してみます。7年にわたって1万円ずつ受け取るのですから、受取金額の総計は7万円になります。受取期間中に、まだ受け取っていないお金は、年金を払ってくれる先の金融機関が年利5%で運用してくれて増やしてくれるはずですので、元手は7万円かからないことになっています。
逆の立場に立てば、7年にわたり、毎年1万円支払ってもらうというまどろっこしいことをせず、一括で年金(この場合はもはや「年金」というネーミングは無意味になってしまいますが)を受け取って、7年間自分の手で運用すれば、年金として受け取れたはずのトータルの7万円にするには、一括払いの金額は、57,864円で済むのだ、とも考えることができるのです。
年金のFV = 81,420円 ー 70,000円(積立金合計)= 11,420円 となり、
11,420円は、7年間の間、5%で積立金を運用した利息合計、と考えられます。実際の積立金の合計より、7年後の将来価値が上回っているのは、積立金の運用益が見込めるからと考えるのです。
年金という概念について補足すると
「年金」と聞くと、毎月継続的にもらえるとか、毎月継続的に積立金を支払うとか、数年間にわたって、一定額を受け取ったり支払ったりするイメージがあると思います。語感的にはその通りで、英語では、
annuity(年金)
となり、annual(一年の)という語と同様、「at-」:行く、年 を表す印欧語根が共通に用いられています。月払いとか月次受け取りもあるかもしれませんが、USCMAの受験の世界では、複利計算期間と同様、一年単位だと割り切って覚えたほうが効率的です。
これは、Excel関数を用いるときにも留意すべき点ですが、年金がもらえるタイミングが年初なのか年末なのかを意識する必要があります。
- ordinary annuity(期末払年金)
- annuity due(期首払年金)
実務の世界でも、USCMAの試験の世界でも、期末払いを前提にして考えるケースが圧倒的に多くなっています。断り書きがなければ、期末払いが前提条件となります。
このことは、TACの講師の方も混乱し、年金現価を算出する自分の板書の説明で、初年度に年金/金利が発生しなかったため、これは期初払いのケースの問題です、と言ってはいけない説明を苦し紛れにされていたほどです。
そういう筆者も実務の中で、Excelにてフォーミュラを組む際、投資の初年度は期末になって初めて利息が付くのを取り間違えることは、何度もありました。
Excelで表を作る際は、
0年目:実質的に、1年目の期初を指す。投資運用の場合は、元本が発生する
1年目:実質的に、1年目の期末を指す。投資運用の場合は、初年度の利息が発生する
2年目:2年目の期末を指す。投資運用の場合は、1年目末の元利合計に対して2年目の利息が発生する
という風に、初年度(0年目)という列を必ず設けることにしています。
直接、Excel関数で、年金現在価値と年金将来価値を求めたい場合は、年金でない場合と同様、同じく、PV関数とFV関数を用います。
年金と一時金(元本)の違いは、それぞれのExcel関数の引数として入力する値が、「定期支払額」か「将来/現在価値」かの違いだけです。
カシオ計算機株式会社様が運営している下記サイト「ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト」から、
- 終価係数
- 現価係数
- 年金終価係数
- 年金現価係数
を求めるフォーミュラのページリンクを付けておきます。
それから、予告通り、自作のExcelを提供します。上記4つの係数のテーブルです。Excelで作業する場合は、直接的に現在価値や将来価値を求めるので、あくまでこのテーブルは学習用ということになりますが。
最後の最後ですが、年金現価係数と年金終価係数の公式はココで解説は致しません。なぜなら、等差数列の和の公式まで知らないと、数式を読解できないからです。さらに、これを読解しても、USCMAの試験には直接役立ちませんし、実務においても、Excelで直接PV/FVを求めるので、学習の優先順位を下げることとしました。
ここまで長かったですが、これで現在価値の学習を終わりとします。
コメント