原価計算基準(8)原価の本質② 建設利息の扱いについてIFRSとの違いをチクリと指摘する

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■ 原価とは、企業が顧客に提供する製品・サービスの経済価値計算の結果である!

前回は、4つある原価計算制度における原価の本質のひとつめ、「経済価値消費性」について解説しました。今回は残りの3つを片付けたいと思います(希望的観測)。

では詳細な説明に入る前に、「基準一」から「基準六」までの全体像はこちら。

原価計算(入門編)原価計算基準の一般的基準の構成

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

三 原価の本質

原価計算制度において、原価とは、経営における一定の給付に係わらせて把握された財貨又は用役(以下これを「財貨」という。)の消費を貨幣価値的に表わしたものである。

(一) 原価は、経済価値の消費である。経営の活動は、一定の財貨を生産し販売することを目的とし、一定の財貨を作り出すために必要な財貨すなわち経済価値を消費する過程である。原価とは、かかる経営過程における価値の消費を意味する。

(二) 原価は、経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値であり、その給付に係わらせて把握されたものである。ここに給付とは、経営が作り出す財貨をいい、それは経営の最終給付のみでなく、中間的給付をも意味する。

「給付」とは、経営活動によって算出された成果(アウトプット)です。経営活動とは、前回説明した通り、正常営業循環、買って作って売る、P/Lで表現するならば、売上高から営業利益までの経済活動を指します。

最終給付とは、製品やサービスなど、企業が顧客に対して提供する経済的価値のすべてです。

中間給付とは、最終的に最終給付に振り替えられる経済的価値のことで、中間製品、半製品、仕掛品、他部門に振り替えられる製品を意味します。また、補助部門の提供するサービス(用役提供)も含みます。例えば、ものづくり工場の中だと、修繕部の修繕活動や、動力部の動力提供など、部門別計算で最終製品の原価計算のために配賦されるようなものを意味します。

 

■ 財務活動に伴う費用は原則として非原価です

(三) 原価は、経営目的に関連したものである。経営の目的は、一定の財貨を生産し販売することにあり、経営過程は、このための価値の消費と生成の過程である。原価は、かかる財貨の生産、販売に関して消費された経済価値であり、経営目的に関連しない価値の消費を含まない。財務活動は、財貨の生成および消費の過程たる経営過程以外の、資本の調達、返還、利益処分等の活動であり、したがってこれに関する費用たるいわゆる財務費用は、原則として原価を構成しない。

原価計算基準における本項は、今回読み返してみると、繰返しが多く大変くどい文章であることを他人に説明しようとして、初めて実感しました。(^^) また、「経営過程」概念が再登場します。

経営目的を達成するためのプロセスが経営過程であり、その経営過程で算出された経済的価値が「原価」なので、背理法的に言うと、経営過程で費消された価値は原価を構成しないことになります。

例えば、資本調達、資本の返還、利益処分(今は株式資本に対する払い出しに対する包括的な取り決めになっていますが、昔は、当期純利益の中からの配当だけに焦点が当たっていました)など、財務活動による費用は原価計算制度上の原価にはなりません。

ここで論点となるのが、支払利息。資金調達のひとつ、デットファイナンスに伴う資本コストなので、いわゆる財務活動による費用にあたり、P/L上では、営業利益以下の営業外費用扱いとなることから、非原価と読めます。

 

■ 支払利息は原価なのか非原価なのか、日本基準の考え方とは?

日本基準では、原価計算基準に則り、支払利息は非原価と扱うのが原則となります。しかし、原則というからには例外があるわけで。。。

(1)自家建設
固定資産を自家建設により取得した場合、原価計算基準に従って適正な製造原価を計算し、これを取得原価とみなします。この自家建設による固定資産が稼働する前の期間に属する借入資本の利子は、これを取得原価に算入することができます(連続意見書第三・第一・四2)。

(2)不動産開発事業において特定の条件を備えている支払利子
日本公認会計士協会から公表されている、業種別監査研究部会「不動産開発事業を行う場合の支払利子の監査上の取扱いについて」によりますと、支払利子は原則として期間費用としますが、下記7要件のすべてを満たす場合に限り、取得原価への原価算入を認めています。

① 所要資金が特別の借入金によって調達されている
② 適用される利率は一般に妥当なものである
③ 原価算入の終期は関発の完了までとする
④ 正常な開発期間の支払利子である
⑤ 開発の着手から完了までに相当の長期間を要するもので、かつ、その金額の重要なものである
⑥ 財務諸表に原価算入の処理について具体的に注記する
⑦ 継続性を条件としみだりに処理方法を変更しない

結論、支払利息は原則として非原価だが、建設利息に限り、特定の条件を満たせば、原価扱い(取得原価すなわち固定資産額を構成する)となる、でした。

 

■ 支払利息は原価なのか非原価なのか、IFRSの考え方とは?

一方で、IFRSでは、IAS第23号「借入費用」により、借入費用の会計処理が規定されています。IAS第23号は、適格資産の取得、建設又は製造に直接起因する借入費用については、原則として、取得原価の一部として資産化し、その他の借入費用については即時に費用処理することを要求しています。何が適格資産かという問いは置いておいて、日本基準とIFRSとでは、逆の対応であるとまずはシンプルにイメージされると入りやすいでしょう。

逆に、積極的に、適格資産の取得、建設又は製造を直接の発生原因とする借入費用として認められたものは、当該資産の取得原価の一部として資産化されなければなりませんので、次の論点は何が適格資産にあたるのかになります。

(1)適格資産とは
適格資産(Qualifying asset)とは、意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を必要とする資産のことを指し、製造・生産に長期間を要する棚卸資産、製造プラント、発電設備、無形資産、投資不動産などが状況に応じて適格資産となりえます。

適格資産になり得ないものは、大別すると下記の3つ。
① 金融資産
② 短期間に製造又は生産される棚卸資産
③ 取得時点において意図した使用又は売却が可能な状態にある資産

(2)「適格資産の取得、建設又は製造を直接の発生原因とする借入費用」とは
当該適格資産に係わる支出が行われなかったならば避けられた借入費用のことをいいます。借入費用に係る資産化の開始と終了の判断ポイントは、「資産取得に係る支出が発生し、借入利息などが発生した時点」から「資産の使用及び販売を可能にするための活動が終了した時点」。したがって、上記開始時点から終了時点までの借入費用を資産化し、取得原価に算入することになります。しかし、適格資産の能動的な開発等に関する活動が中断された場合には、借入費用の資産を認めないことになります。

具体的には、
・当座借越、短期借入金、長期借入金の利息
・社債の割引額やプレミアムの償却額
・借入のコミットメントフィー
・借入のアレンジメントフィー
・ファイナンス・リース取引に関連する財務費用
・外貨建借入金から発生する為替差損益
となります。

(3)適格資産の直接的な紐付きの借入費用以外は、非原価となるか
上記でも触れたとおり、適格資産の取得の開始と終了の間に計上した利息費用、という位置づけなので、直接、金融機関に「この適格資産のための借り入れですよ」と宣言していなくても、当該期間における借入金ならば、原価算入となります。それゆえ、資産取得に係る支出時点から資産の取得のための活動が終了するまでに、一般資金需要目的の社債や借入金等が負債としてB/Sに計上されている場合、その負債は。適格資産購入のために使用されたと見なすことができる、いいえ、してくださいということになります。

最後の第4項が残りました。これもIFRSとの論点があるので、次回に持ち越しましょう。(^^)

(四) 原価は、正常的なものである。原価は、正常な状態のもとにおける経営活動を前提として把握された価値の消費であり、異常な状態を原因とする価値の減少を含まない。

⇒「原価計算基準(1)原価計算の一般基準の体系を整理 - ざっと原価計算基準の世界観を概括してみる!
⇒「原価計算基準(2)原価計算の目的 - ①財務諸表作成目的、②価格計算目的の盲点を突く!
⇒「原価計算基準(3)原価計算の目的 - ③原価管理目的は当時のマスプロダクションをそのまま反映したものだった!
⇒「原価計算基準(4)原価計算の目的 - ④予算管理目的と短期利益計画の盛衰
⇒「原価計算基準(5)原価計算の目的 ⑤基本計画設定目的 - そもそも経営計画は何種類あるのか?
⇒「原価計算基準(6)原価計算制度 - 特殊原価調査とはどう違うのか、内部管理用原価でも制度である理由とは?
⇒「原価計算基準(7)原価の本質① ものづくり経済を前提とした原価の本質的要件は4つ
⇒「原価計算基準(8)原価の本質② 建設利息の扱いについてIFRSとの違いをチクリと指摘する
⇒「原価計算基準(9)原価の本質③ 正常なものと異常なものの扱いについてIFRSとの違いをチクリと指摘する
⇒「原価計算の歴史 - 経営課題の変遷と原価計算技法・目的の対応について
⇒「原価計算基準」(全文参照できます)

原価計算(入門編)原価計算基準(8)原価の本質② IFRSとの違いをチクリと指摘する

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