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原価計算基準(31)費目別計算における原価要素の分類

管理会計_アイキャッチ原価計算(入門)
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原価計算のファーストステップ

原価計算は、費目別計算→部門別計算→製品別計算の3ステップで構成されていることをしつこく前回に説明しました。今回は、ファーストステップである費目別計算における原価要素の分類基準についてです。

ここでは、「原価要素」を「費目」別に分類することを目的としています。これも前回触れましたが、「原価計算基準」にとって「原価要素」は所与のものであり、生産・販売手段の元となる経営資源を表す具体的な事物のことを意味します。

個別的な例を挙げると、材料、労働力、そして資本。資本の場合は、資本を具体的な事物に転換した時点で個別の特徴を捉えてコストを計算します。保有する資産を利用することで、消耗工具備品費、建物・機械の減価償却費を認識します。

また、保有する生産能力を稼働させる際に、不可避的に消費しなければならない運転費用として、保険料、旅費交通費、通信費、修繕費などを認識します。

最後に、社外の用役サービスを享受する対価として、水道光熱費、賃借料、租税公課(ここでは自治体や政府の労協サービスの対価として考慮しておきましょう)を認識します。

5つある製造原価要素の分類基準

そういえば、延々と製造原価要素の分類基準について、これまで説明してきたのでした。ようやく、ここでその武器を使う場面がやってきました。武器が錆びついていないかチェックしておきましょう。

製造原価要素の分類基準

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「②価格計算目的」に基づき、材料費・労務費・経費という原価要素を形式的にかつ画一的にこう定義しなさいという姿勢が「製造工業原価計算要綱」(昭和17年)が戦時経済統制の視点から下々にお示しになられる、という立場をとっていました。

「原価計算基準」(昭和37年制定)は、戦後の自由経済の空気がそうさせたのかまでは分かりませんが(筆者はそこまで年を重ねていないので)、いったんその立場から自由になり、「①財務諸表作成目的」「③原価管理目的」「④予算管理目的」「⑤基本計画設定目的」をそれぞれ柔軟に満たすように、複数の考え方を組み合わせて、企業の社内自治をできるだけ尊重する立場をとりました。ある程度の任意・自由裁量を認めましたが、大枠の5つの費目定義の基本的考え方は示しておく、という姿勢です。

原価計算目的は不平等に決められていた!?

ではここでようやく今回取り上げる条文を確認してみます。

第二節 原価の費目別計算
一〇 費目別計算における原価要素の分類
費目別計算においては、原価要素を、原則として、形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、さらに必要に応じ機能別分類を加味して、たとえば次のように分類する。

  • 直接費
    • 直接材料費
      • 主要材料費(原料費)
      • 買入部品費
    • 直接労務費
      • 直接賃金(必要ある場合には作業種類別に細分する。)
    • 直接経費
      • 外注加工費
  • 間接費
    • 間接材料費
      • 補助材料費
      • 工場消耗品費
      • 消耗工具器具備品費
    • 間接労務費
      • 間接作業賃金
      • 間接工賃金
      • 手待賃金
      • 休業賃金 給料
      • 従業員賞与手当
      • 退職給与引当金繰入額
      • 福利費(健康保険料負担金等)
    • 間接経費
      • 福利施設負担額
      • 厚生費
      • 減価償却費
      • 賃借料
      • 保険料
      • 修繕料
      • 電力料
      • ガス代
      • 水道料
      • 租税公課
      • 旅費交通費
      • 通信費
      • 保管料
      • たな卸減耗費
      • 雑費

間接経費は、原則として形態別に分類するが、必要に応じ修繕費、運搬費等の複合費を設定することができる。

原価計算基準(原文)

ふぁふぁふぁ

個別具体的な例示があまりにごちゃごちゃして、本質が見えなくなっている恐れがあるので、かいつまんで基本要素と構成だけ取り出して説明しなおします。

費目別計算における原価要素の分類

まず、形態別分類は、製造原価の発生要因別に行われる分類です。企業の生産・販売活動に動員される経営資源の形態の違いに着目しているので、ほぼ原価要素と同じ定義になり、「材料費」「労務費」「経費」の3つに大別されます。最近はやりのデータエコノミーや知財権の活用による原価発生が個別に確認できない枠組みになっています。

まあ、「日本国憲法」(昭和22年施行)と「原価計算基準」(昭和37年設定)のいずれの改正が早いでしょうかね。憲法改正を虎視眈々と狙っている安倍首相(この記事作成時点前に、安倍晋三首相の通算の在職日数が2019年11月20日で2887日となり、桂太郎氏を抜き単独で憲政史上最長)に、「アベノミクス」の目的完遂のために、企業経営改革に著しい貢献が期待できる「原価計算基準」の改訂を進言してくれる経済界の大物が動いてくれないかな、と夢想している今日この頃です。^^)

閑話休題

話を本線に戻すと、「原価計算基準」が想定している各種目的の内、「①財務諸表作成目的」が優先されているため、費目別計算を行う際の費目の定義においては、「形態別分類」が基礎になっています。「機能別分類」「製品との関連による分類」(直接費と間接費の区別)は、「形態別分類」を側面支援する形で盛り込まれています。形態別分類が機能別分類と直間区分より上位に来ていることからそれが分かります。

それは、まず「①財務諸表作成目的」を基本ラインとし、「③原価管理目的」「④予算管理目的」を二次的な目的として、優先順位が「原価計算基準」の中でつけられていることによります。

さらに、この枠組みには「操業度との関連による分類」による変動費と固定費、「管理可能性に基づく分類」による管理可能費と管理不能費の識別がなされていません。このことは、現在の制度会計がGAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)として、「全部原価計算」を要請していることに基づきます。

ここからも、「原価計算基準」は、「①財務諸表作成目的」を優先して、一義的には「形態別分類」で費目別計算を行い、あくまで全部原価計算の枠組みの中でという条件下で、経営内部でも原価管理や予算管理に有用な明細データを持つことを可能にする、という立場であることが分かるのです。

「複合費」に潜むちょっと危険な論点

基準一〇は、やたらと「間接経費」の例示が多いのですが、そのすべては形態別分類にすぎません。「原価計算基準」は積極的に「間接経費」の機能別分類を例示してくれていません。あくまで「複合費」を設定することができますよ、という認容規定があるだけです。

この箇所(複合費)は2つの小さな個別論点を含んでいます。ひとつは、「部門費」との関係性です。おそらく、大企業と呼ばれる製造業では、原価計算の2ステップ目の「部門別計算」をきちんと行っているものと推察しています。とすれば、「修繕部門」に直接的または間接的に集計された「修繕部門費」の取り扱いは、「費目別計算」でことさら定義するものではなく、「部門別計算」(第三節、基準一五~十八)でとり扱われるべきです。

これは、中小企業向けに、「部門別計算」を厳密にするだけの工数的・時間的・能力的に不安がある場合は、費目別計算ステップの中で便宜的に「部門別集計」チックに「複合費」という名目で間接経費(場合によっては、間接材料費と間接労務費を取り合せても可)を集計してもいいですよ、という認容のメッセージと受け止めるのが通説になっています。

しかし、この解釈は原価計算の実務をあまりに顧みないものです。筆者は長年、原価計算プロセスのコンサルティングをしています。その体験からの発言ですが、通俗的に大企業といわれる製造業であっても、必ずしも、部門別計算を厳密に行っていない実例をたくさん見聞してきました。

それは、それらの大企業がイケていないのではなくて、原価計算プロセスを設計するにあたり、部門別集計の必然性がない、または、勘定科目による分類のほうが原価管理などの内部管理に有用である場合が考えられるから、というのが真相です。

ふたつに、現在の情報処理技術におけるリレーショナル・データベース内でのレコードの持ち方を複雑にする悪影響があることです。形態別分類をTOPに据えて、その細目として直間区分→機能別分類と細分化していく分には、ITというか、データベースのレコード管理は比較的うまく運用できます。

形態別分類→直間区分→機能別分類という親子関係をもってレコードを細分化していけば、逆に親に向かってデータを集計することも容易なのは火を見るより明らかです。

そこに、複合費の分析軸を持ち込むということは、原価要素を、「形態別分類→直間区分→機能別分類」という集計キーと、複合費という集計キーをクロスさせないと、データ処理ができなくなることを意味しています。ひとつの原価データを常に2軸で管理する必要が生じます。これはIT設計的にはイケていないデザインになります。

むしろ、勘定科目コードの分析軸と、複合費ではなくて、そこは思い切って、部門コードの分析軸の2軸で原価費目データを管理する、としたほうが、ITシステムの設計・構築・運用としてはスッキリするはずです。

まあ、この道、すでに四半世紀以上の経験があるオジサンがこう言っているのです。一度、騙されたと思って、勘定科目コードで複合費集計や製販振替(製造原価と販管費を振り分けること)するより、部門コードの積極的活用をご検討ください。

部門コードと勘定科目コードの関係を整理することで、「原価計算基準」では梯子を外された格好になっている「変動費」「固定費」、「管理可能費」「管理不能費」も自ずと明らかになるはずです。お試しあれ。^^)

みなさんからご意見があれば是非伺いたいです。右サイドバーのお問い合わせ欄からメール頂けると幸いです。メールが面倒な方は、記事下のコメント欄(匿名可)からご意見頂けると嬉しいです。^^)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、過去及び現在を問わず、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

原価計算基準(31)費目別計算における原価要素の分類

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