企業会計原則(10)単一性の原則とは - 形式多元は認めるけど実質一元を求める。二重帳簿はダメ!

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■ 作為的な二重帳簿は許しません!

会計(基礎編)

今回は『企業会計原則』における『一般原則』の学習の第10回目となります。今回は、「単一性の原則」になります。

『企業会計原則』の全体構成は下図の通りです。

財務会計(入門編)_企業会計原則の構造

そして、その3部構成の『一般原則』の構成は次の通りです。

財務会計(入門編)_一般原則の体系

単一性の原則

七 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

「単一性の原則」は、株主総会提出用、金融機関への融資申込用、税務申告用など、各種報告目的ごとに異なる形式で財務諸表を作成せざるを得ない場合、それらの内容が信頼すべきひとつの会計記録に基づいて作成されるべきことを要請するものです。その実質的な記録内容は、「正規の簿記の原則」にしたがって作成されることを大前提にしているのです。

● まとめ
報告目的による報告形式の多様性は認めるが、計算内容については単一であらねばならない

制度会計は、企業業績と財政状態を誰かに伝えて、それぞれの主体にデータ活用してもらうために、ディスクロージャー、決算発表、という形で企業の外に財務諸表を公表しています。それは、その公表財務諸表を使って、出資、融資、各種税制度立案、雇用政策立案、商取引の安全性・妥当性の判断に用いてもらおうとするものです。いわば、「情報会計」という側面を持っています。

同じ時点または同じ会計期間において、投資家には100円の利益、与信担当者には200円の利益、税務当局には10円の利益と、企業経営者および財務担当者が勝手に、報告数字を情報活用者の判断を自社に有利なように誘導するために、報告数字をそれぞれに改ざんしてはいけない、ということなのです。これを許すと、公表用財務諸表が、ステークホルダー間における利害調整機能を失ってしまうからです。

 

■ 「相対的単一性」と報告目的の多様性について

情報会計(誰かに会計情報を伝える)という側面を強く持つ制度会計は、報告相手毎に、会計報告目的が種々存在します。

財務会計(入門編)会計報告目的の多様性

それぞれに、
・決算公告
・事業報告書
・決算短信
・有価証券報告書
・法人税申告書(別表)
・内部統制報告書
・事業別業績報告書 などなど

さまざまな書式・様式による報告が義務化されていたり、自発的に公表されていたりします。昨今では、経理事務負担軽減目的から、各種報告書のフォーマットの共通化が図られたり、報告義務項目の簡素化が図られたりしています。

財務会計(入門編)_「貸借対照表」の表示方法

このように、会計報告の目的は多用であり、それぞれの目的に適合するように報告形式の多様性は認められますが、報告内容は単一であることが要請されます。報告内容さえ合っていればいい、というのが「相対的単一性」であり、報告形式もぴったり合っていなければならないとするのが「絶対的単一性」と呼ばれています。従来は、「相対的単一性」の姿勢が採られていました。最近は、強制・義務という視点ではなく、経理事務負担軽減という観点から、できるだけ同じフォーマットで開示していこうという動きが活発になっています。

ちなみに、昔は、会社法(旧商法)では「当期利益」、金商法(旧証取法)では「当期純利益」と勘定科目名まで異なっていましたが、現在は「当期純利益」で統一されています。ただし、法人税法の方は??? 調べてみてください。(^^;)

 

■ 単一性には「相対的単一性」と「絶対的単一性」がある

ここからは会計実務を離れて若干会計理論側のお話になります。

企業会計原則がみとめる「単一性の原則」は、「相対的単一性」ということで会計実務上は理解が一致しています。そこでは報告形式の多様性が認められています。それは、

① 勘定科目設定における具体性の差異
② 区分表示方法の相違

などであり、それぞれの報告目的に応じた表示をなすほうが、公表用財務諸表の利用者にとっては、情報会計として目的に沿うものだと考えられています。

財務会計(入門編)単一性の原則の理論的分解

一方で、報告内容の単一性については、さらに2つの見解が存在します。

① 信頼し得る会計記録に基づいて作成されたもの
② 政策や考慮のために事実の真実な表示を歪めていない

のであれば、その条件の枠内ならば、会計取引の解釈の幅を認めようとするのが「相対的単一性」の立場です。一方で、同じ認識基準と測定基準を用いるならば、収益・費用・資産・負債・資本の各数字は必ず一致すると考えるのが「絶対的単一性」の立場になります。

これは、「真実性の原則」で触れたとおり、会計の世界の「相対的真実」をどう解釈するかということが問われるお話です。

「証憑準拠性のある取引事実」に基づく「信頼し得る会計記録」であれば、棚卸資産の価額決定について、個別法を採ろうが先入先出法を採ろうが、会計報告目的に適合した会計処理であれば、それぞれの報告目的に応じた弾力的な処理を積極的に認めてもいいはずです。これにより、あまりに厳格な単一性の解釈は、他の一般原則にも抵触するので、ここでは視界から外しておいた方がよいでしょう。

 

■ 「相対的単一性」は「報告形式」にどう影響するのか?

この「単一性の原則」のお話をして、会社法と金商法の財務諸表は、その開示業務を含めてどんどん歩み寄り、内容は元より形式面においても「単一性」の理想の世界に進んでいるベクトルを示しています。一方で、税務会計の方は、まだ一定の距離を採っているのが現場での実態です。

例えば、固定資産の耐用年数。企業の中には、会計上の耐用年数と税務上の耐用年数を使い分けている所があります。これは、報告形式面ならず、取引内容面でも二重帳簿の嫌疑有で、単一性の原則に背いていることになるのでしょうか?

単一性の原則が要請している「報告内容の単一性」は、信頼のおけるただ一つの会計帳簿・会計記録にしたがって、会計報告の様式は問わず、適切にステークホルダーに財務諸表を公開してください、とするものです。上記の場合、「固定資産管理台帳」がしっかりと運用されており、会計上の耐用年数および減価償却費、税務上の耐用年数および減価償却費がきちんと分別管理されていれば、税務申告時に別表十六に必要事項を記載してあればよしとするものと解釈されています。

つまり、ここでは、申告書(別表)も含めて報告形式の多様性を認められている、と解釈すると素直に理解すると頭にスーッと概念が入ってくるのではないでしょうか?

(参考)
⇒「会計原則・会計規則の基礎(1)会計原則の基本構成を知る
⇒「会計原則・会計規則の基礎(2)戦後の日本経済の出発点のひとつとなった『企業会計原則』の誕生
⇒「企業会計原則(1)真実性の原則とは
⇒「企業会計原則(2)正規の簿記の原則とは
⇒「企業会計原則(3)資本取引・損益取引区分の原則とは - 会計実務ではないがしろにされているけれど
⇒「企業会計原則(4)明瞭性の原則とは(前編)- 財務諸表によるディスクロージャー制度の包括的な基本原則
⇒「企業会計原則(5)明瞭性の原則とは(中編)- 読めばわかる財務諸表のための 区分表示の原則、総額主義の原則
⇒「企業会計原則(6)明瞭性の原則とは(後編)読めばわかる財務諸表のために記載する注記 会計方針、後発事象
⇒「企業会計原則(7)継続性の原則とは(前編)相対的真実を守りつつ、比較可能性と信頼性のある財務諸表にするために
⇒「企業会計原則(8)継続性の原則とは(後編)変更できる正当な理由とは? 過年度遡及修正と誤謬の訂正の関係まで説明する
⇒「企業会計原則(9)保守主義の原則とは - 期間損益計算と予見計算におけるキャッシュアウトを最小限に抑えて企業体力を温存するために
⇒「企業会計原則(10)単一性の原則とは - 形式多元は認めるけど実質一元を求める。二重帳簿はダメ!
⇒「企業会計原則(11)重要性の原則 - 会計処理と財務諸表での表示を簡便化するための伝家の宝刀!
⇒「企業会計原則」(原文のまま読めます)
⇒「企業会計原則 注解」(原文のまま読めます)

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